前に進むことだけが正解だと考えていませんか?
私はこれまで前に進むことが正解だと考えて行動してきましたが、
夏川草介さんの小説『神様のカルテ』を読んで、前に進むことだけが正解ではないと思えました。
それだけでなく、心優しい人たちの物語が描かれていたので、温かい気持ちになれたんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 地方病院で休みなく働く主人公の物語に興味がある人
- 優しい人たちとのやり取りに心温まる物語が好きな人
- 前に進むことだけが正解ではない理由を知りたい人
- 夏川草介さんの小説が好きな人
あらすじ:地方病院で休みなく働く主人公の物語
物語の主人公は、本庄病院に勤めて5年になる内科医の栗原一止(いっと)。
彼は、大切な妻との結婚記念日を忘れるほど、仕事に追われていました。
腹を痛がるおじさんや、めまいで床に座り込んでいるおばあさん、喘息でひゅーひゅーいってるお嬢さんに、足を骨折して歩けないお兄さんなど、
通勤時間のバスターミナルよりも大勢の病人たちで溢れていたからです。
そのため、一止は2日間寝ずに患者と向き合っていましたが、この日が特別なわけではなく、これが彼の日常でした。
だからこそ、一止は大学病院からの誘いを受けようか迷っていたわけですが…。
という物語が楽しめる小説です。
感想①:地方病院の忙しさに驚愕する
先ほどあらすじで、一止は地方病院に勤めていると紹介しましたが、その忙しさは尋常ではありませんでした。
彼は5年目の内科医でしたが、医者不足のため、研修医二人と一緒に救急病棟に訪れる患者の山に対処する必要がありました。
また、骨折やら打撲といった外科の診察でも、内科でも耳鼻科でも皮膚科でも、ひとりの救急医が診療を行う必要がありました。
これが地方病院の現状です。
そのため、3日で睡眠時間が2時間なんて日がザラにありましたが、それでも一止は患者のために奮闘するんですよね。
南杏子さんの小説『いのちの停車場』では、在宅医療の難しさがわかる物語が描かれていましたが、
この小説では、地方病院で働く医師たちの忙しさに衝撃を受けました。
感想②:優しい人たちとのやり取りに心温まる
先ほども紹介したように、一止の忙しさは尋常ではありませんでしたが、それでも彼は患者と真摯に向き合っていました。
そんな一止だからこそ、周りにいる人たちも心優しい人ばかりでした。
彼が住んでいたのは、「御嶽荘(おんたけそう)」という今にも潰れそうな元旅館の建物でしたが、
この幽霊屋敷のような建物に住む変わり者たち…絵描きの男爵と、大学院生の学士殿、そして妻の榛名(はるな)は心優しい人たちだったんですよね。
たとえば、ある出来事があって学士殿が救急車で運ばれるのですが、意気消沈していた彼を、一止と榛名、そして男爵が全力で励まします。
ネタバレになるので、詳しくは書けませんが、全力で学士殿を励まそうとする彼らの姿に感動すること間違いなしです。
藤岡陽子さんの小説『きのうのオレンジ』では、癌になった主人公の目立たない優しさに心が動かされる物語が楽しめましたが、

この小説でも、一止とその周りの人たちの優しさに心温まる物語が楽しめました。
感想③:前に進むことだけが正解ではない
さて、この小説では、「前に進むことだけが正解ではない」をテーマに描かれているように思います。
忙しい毎日を過ごしていた一止は、大学病院から誘われ、最先端の医療に関わることに興味を持っていたので、どうすべきか迷っていましたが、
安曇さんという癌患者と出会って、心が決まりました。
人生なるものは、特別な技術やら才能やらをもって魔法のように作り出すものではない。人が生まれおちたその足下の土くれの下に、最初から埋もれているものではなかろうか。
私にとって、それは最先端の医療を学ぶことではなく、安曇さんのような人々と時間を過ごすことであり、ひいては、細君とともにこの歩みを続けることだ。
と、前に進むことだけが正解ではなく、幸せは足下に転がっていると気づくんですよね。
町田その子さんの小説『うつくしが丘の不幸の家』では、幸せは自分で作り上げるものだとわかる物語が楽しめましたが、
この小説では、前に進むことだけが正解ではなく、幸せは足下に転がっていることがわかる物語が楽しめました。
まとめ
今回は、夏川草介さんの小説『神様のカルテ』のあらすじと感想を紹介してきました。
前に進むことだけが正解ではないと思える物語が楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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