瀧羽麻子『女神のサラダ』は農業を舞台に描かれる人の優しさに心温まる物語

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農業に興味はありますか?

私はエンジニアなので、新しい技術に興味があり、農業にはまったく関心がありませんでしたが、

瀧羽麻子さんの小説『女神のサラダ』を読んで、農業もやりがいのある仕事なんだと気づきました。

それだけでなく、人の温かさが描かれている物語なので、優しい気持ちになれたんですよね。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 農業をテーマにした物語に興味がある人
  • 古き良きものを大切にしたくなる物語を読んでみたい人
  • 優しい気持ちになれる物語が好きな人
  • 瀧羽麻子さんの小説が好きな人

あらすじ:システムエンジニアから農家に転職した女性の物語

物語の主人公は、高樹農場で働くようになった沙帆。

彼女は東京で7年間、システムエンジンニアとして働いていましたが、徹夜が当たり前の仕事に体調を崩して辞めてしまいました。

ところが、どれだけ面接を受けても再就職先が見つかりません。

どの会社からも、システムエンジニアとしての仕事が続かないと判断されたからです。

そんなとき、ハローワーク先で紹介されたのが、高樹農場でした。

高樹農場は会社組織として運営されており、男女とりまぜて7人程度の社員がいます。

他にもパートや臨時のアルバイトもいました。

そんな高樹農場に、彼女は見学に行き、社長の温かい人柄に触れて、ここで働くことに決めましたが、母には転職したことを言えずにいました。

母が一流企業の孫会社で働くことを喜んでいたからです。

父が漁師をしていることもあり、村を出ていって、安定した仕事に就いたことを喜んでいたんですよね。

そのことを知った社長は、沙帆にある言葉を伝えます。

その言葉とは…。という物語が楽しめる小説です。

感想①:農業をテーマにした8つの短編が楽しめる

『女神のサラダ』は、あらすじで紹介した物語も含めて8つの短編で構成されています。

どれも農業をテーマにした物語ですが、主人公も設定も違うので、まったく異なる物語が楽しめるんですよね。

先ほどあらすじで紹介した物語は、垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』と同じように、農業に縁のない女性が農家になる姿が描かれていますが、

厳しい現実に立ち向かうには人とのつながりを大切に/垣谷美雨『農ガール、農ライフ』感想
 「今の仕事がキツイから農業でも始めようかなぁ」「退職後に農業でも始められたらいいなぁ」…なんて考えていませんか。  もし、そんな甘い考えをしているようなら、垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』を読むことをおすすめします。  き...

他の7つの短編を簡単に紹介していくと、

  • 古めかしい喫茶店でバイトをしていた学生が人気のカフェで働くことになった物語
  • 農場を経営している女性が東京の総合商社で本部長として働いていた男性を受け入れる物語
  • ウマが合わない同級生たちと過ごすことになった農業大学校生の物語
  • 結婚を機に農家になった女性がマルシェなどの新しい挑戦をしたいと願う物語
  • 10歳の子供が父のいる都会か母のいる牧場のどちらで暮らすのか選択に迫られる物語
  • 歳上のギリシャ人と恋に落ちた女性の物語
  • 幼い頃に知り合った男女が農家と料理人になって再会する物語

と、どれもまったく異なる設定なので、読んでいて飽きません。

それだけでなく、伊坂幸太郎さんの小説『アイネクライネナハトムジーク』のように、

異なる物語にも関わらず、テーマが同じなので、つながっているかのような雰囲気が楽しめるんですよね。

伊坂幸太郎『アイネクライネナハトムジーク』は今すぐ誰かに恋したくなる物語
最近、恋していますか? 私は結婚して子供がいるので、毎日のように妻や子供たちに恋していますが、 伊坂幸太郎さんの小説『アイネクライネナハトムジーク』を読んで、恋っていいなぁ…と素直に思えました。 気がつけば好きな人のことを思い浮かべて...

最後まで一気に読んでしまう物語です。

感想②:古くても良いものは残したくなる

この物語を読むと、古くても良いものがあることに気づき、後世まで残したくなります。

先ほど紹介した「古めかしい喫茶店でバイトをしていた学生が人気のカフェで働くことになった物語」もそのひとつです。

のんびりしている主人公の真理亜は、喫茶店の店員として、暇を持て余している年配の常連客たちの「とりとめもない話」に耳を傾けてきましたが、

彼女にとっては、大学のクライスメイトたちの早口でかしましいお喋りよりも、その方があっていました。

ところが、バイトをしていたカフェが時代の流れもあり、閉店することになります。

真理亜は、店長の計らいで人気のカフェで働けることになりましたが、

雰囲気が合わず、喫茶店を継ぐ勇気がなかったことを後悔していました。

だからこそ、久しぶりに会った大叔父から、地元の美味しいナスを作る農家が残り二、三軒になったことを聞かされた真理亜は、

どうにかしてそのナスを残していきたいと考えるんですよね。

三上延さんの小説『ビブリア古書堂の事件手帖』も、シリーズを読み進めるほど古書を大切にしたくなる物語ですが、

それと同じように、古くても味わい深い喫茶店や美味しい野菜を後世まで残していきたいと思える物語です。

感想③:穏やかで優しい気持ちになれる物語

ここまで紹介してきたように、『女神のサラダ』は、穏やかで優しい気持ちになれる物語で構成されています。

「ウマが合わない同級生たちと過ごすことになった農業大学校生の物語」もそのひとつ。

ウマが合わない同級生に嫌気がさしていた主人公でしたが、驚きの事実が明かされ、心にジワッと温かい気持ちが広がっていきます。

東野圭吾さんの小説『新参者』も、加賀恭一郎の優しさにグッとくる物語ですが、

この物語では、些細な日常が描かれていることもあり、人の優しさがダイレクトに伝わってきて、あったかい気持ちになれたんですよね。

私の日常もそうありたいと思える物語でした。

まとめ

今回は、瀧羽麻子さんの小説『女神のサラダ』のあらすじと感想を紹介してきました。

どの短編も女性が主人公の物語ですが、心温まる物語ばかりなので、男性にもおすすめの小説です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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