極悪人が出てくる物語はお好きですか?
私は読んでいて心が痛む物語は、あまり好きではありませんが、伊坂幸太郎さんの小説『フーガはユーガ』は楽しめました。
「これでもか!」というほど人間がもつ残虐な姿が描かれていますが、極悪人に立ち向かう双子の姿に心が震えたんですよね。
あらすじと内容紹介
「支配欲で他人を押さえつける人間は許さない!」
誕生日にだけ瞬間移動が使える双子の優我と風我が、支配欲で他人を押さえつける極悪人に、その能力を駆使して立ち向かっていく物語です。
ネグレクトやいじめ、少年法を悪用した殺人、性的虐待など、人間がもつ残虐な姿が「これでもか!」というほど詰め込まれていますが、そんな極悪人に立ち向かう双子の姿に胸が熱くなります。
それだけでなく、ラストに向かうにつれて、伏線が次々と回収されていくので気持ち良さも味わえました。
ハッピーエンドを迎えない展開に心が痛む物語ですが、一気読みしてしまう小説です。
ちなみに、物語の途中で『オーデュボンの祈り』や『砂漠』の登場人物が顔を出したり、表紙にもオシャレな仕掛けが用意されているので、ぜひチェックしてください。
『フーガはユーガ』の感想(ネタバレあり)
ここからは多少のネタバレありで感想を書いていきます。
物語の核心を突くようなネタバレは避けていますが、それでも気になる方は、本を読み終わった後に再び訪れてください。
特殊能力をもつ双子の主人公に惹きつけられる
特殊能力をもつ双子の優我と風我は、幼い頃から父親に痛めつけられて育ちました。
少しでも気に入らないところがあると、気絶するまで殴られます。
そんな彼らが5歳になった誕生日に、驚きの出来事が起こりました。
父親に殴られていた風我を助けたいと念じていた優我にピリピリとした感覚が走り、次の瞬間には風我と入れ替わっていたのです。
それから彼らは、2時間ごとに互いの場所が入れ替わりましたが、この特殊能力が発動するのは誕生日だけでした。
そして彼らが大人になった現在。
兄の優我は、テレビディレクターを名乗る高杉という男とファミレスで向き合っていました。
高杉は優我たちが瞬間移動したシーンを盗撮しており、その真偽を問いただしてきたのです。
優我は、「言っておきますけど、僕がしゃべることには嘘や省略がたくさんあります」と前置きをした上で、高杉に過去を語り始めるのですが、
その内容があまりにも悲惨だったのと、双子の彼らが使える特殊能力が、意図したタイミングでは使えない瞬間移動という設定が面白くて、物語に一気に惹き込まれたんですよね。
他の伊坂幸太郎作品と同様に、使えてもそれほど嬉しくない特殊能力をもつ双子の魅力に惹き込まれます。
※ちなみに、『魔王』では心の中で念じた言葉を他人の口から発せられる能力(腹話術)をもつ主人公の物語が描かれています。
人間がもつ残虐な姿が詰め込まれているので心が痛む
先ほど優我が高杉に語った過去は悲惨なものだったと書きましたが、
人間がもつ残虐性が「これでもか!」というほど詰め込まれていたので、読んでいて心が痛みました。
幼い頃から優我と風我は父親に気絶するまで殴られていましたが、母は父親のいいなりになっていたので、見て見ぬふりをしていました。
優我と風我が小学生になると、ワタヤという同級生が同じく同級生の広尾から「ワタボコリ」と呼ばれ、埃を食べろと命じられたり、女子トイレに閉じ込められるなどのいじめを受けていました。
中学生になったときには、優我と風我がアルバイトをしていたリサイクルショップのおばさんから、「処分してほしい」と頼まれた気持ちの悪いぬいぐるみを無理やり押し付けた小学生の女の子が、未成年の男に轢き殺されます。
その未成年の男は、その少女を木に縛り付けて、何度も何度もクルマで轢きました。
そして、優我たちが中学校を卒業し、風我に彼女ができると、その彼女が叔父から虐待を受けていることがわかります。
裸にさせられ、水槽に入れられて、電気ショックを与えられたり、溺れて苦しむ姿を見せ物にされていたのです。
このように、ネグレクトやいじめ、少年法を悪用した殺人、性的虐待など、人間がもつ残虐性が「これでもか!」というほど詰め込まれていたので、心が痛みました。
極悪人に立ち向かっていく双子の姿に心が震える
さて、そんな極悪人の姿を目の当たりにした優我と風我は、瞬間移動の能力を駆使して彼らに立ち向かっていきます。
もちろん、上手くいかないこともありましたが、優我たちは、失敗しても、負けても、叩きのめされても、何度も何度も極悪人に立ち向かっていきました。
そんな優我たちの信条は、
「父のように支配欲で他人を押さえつける人間は許さない」
というものです。
そのため、少女を轢き殺した極悪人さえも懲らしめようとします。
これ以上は物語の核心をつくネタバレになるので、書くのを控えますが、
どんな極悪人を前にしても、自分たちの持っている能力を最大限に駆使して立ち向かっていく二人の姿に、心が震える物語でした。
まとめ
今回は、伊坂幸太郎さんの小説『フーガはユーガ』のあらすじと感想を紹介してきました。
以上、3つの魅力がある物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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