出来ることに目を向けていますか?
私はついつい出来ることよりも、やりたいことに目を向けて不満を抱えてしまいがちですが、
瀬尾まいこさんの小説『夜明けのすべて』を読んで、どのような状況でも、出来ることに目を向ければ人生は楽しくなることがわかりました。
それだけでなく、病気のつらさを理解してもらうのは難しいことだとわかる物語だったんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- つらい病気を抱えた主人公たちの物語を読んでみたい人
- 病気のつらさを理解してもらうのは難しいことだとわかる物語に興味がある人
- 出来ることに目を向けると人生は楽しくなる理由を知りたい人
- 瀬尾まいこさんの小説が好きな人
あらすじ:つらい病気を抱えた主人公たちの物語
物語の主人公は、月経前症候群(PMS)に苦しむ藤沢美沙。
彼女は、生理の日やその二、三日前から頭に血が上って攻撃的になりました。
周りが見えなくなり、歯止めもきかなくなって、怒りを爆発しきるまで止まらなくなるのです。
だからこそ、彼女は大学を卒業してすぐに入社した化学製品を扱う企業を辞めて、3年前にのどかな職場の栗田金属に転職してきたのですが、
1ヶ月前から同じ会社で働くようになった山添くんに「炭酸飲むのやめてほしいんだけど」と言って怒りをぶちまけました。
しかし、その次の日。会社でしゃがみ込んで汗をかいている山添くんを見た美沙は、あることに気づき…。
という物語が楽しめる小説です。
感想①:病気のつらさを理解してもらうのは難しい
先ほどあらすじで、美沙はPMSだと紹介しましたが、周りの人たちに理解してもらうのは、とても難しいことでした。
大学を卒業してすぐに入社した化学製品を扱う企業でも、頭に血が上って係長に頼まれたコピーを断固拒否しました。
次の日に謝って表面上は許してもらえましたが、もう失敗は許されないと思い、病院で出してもらった薬を飲んだところ、
今度は副作用で眠気がひどくなり、会議室で寝てしまうんですよね。
すると、「ヒステリーの次は、熟睡?怖いよね」「新入社員なのに、すごいな」と先輩たちから言われたので退職したのです。
山添くんもそうです。
彼は、彼女とラーメン屋に行った直後、突然気分が悪くなって、タクシーで病院に行きました。
過呼吸が原因で心因性のものだと言われましたが、仕事もプライベートも充実していて、深刻な悩みは何ひとつありませんでした。
しかし、その日から電車に乗れなくなり、会社にも行けなくなったので、心療内科で診察してもらったところ、パニック障害だと告げられます。
出してもらった薬を飲んでも、特に効果がなかったので、会社を辞めましたが、一年も経たないうちに彼女も友達も去って行きました。
病気といってもどこも悪く見えず、仕事もせずに家に引きこもっているだけのように見えたからです。
伊吹有喜さんの小説『雲を紡ぐ』では、いじめられている主人公の気持ちを両親が理解してくれないつらさが描かれていましたが、

この小説でも、病気を抱える主人公たちの苦しみを理解してくれる人がいないつらさが描かれていたので、心が痛みました。
感想②:自然体で付き合える人がいるのはありがたい
そんな美沙と山添くんは、栗田金属に転職して出会ったわけですが、互いに苦手なタイプだと思っていました。
美沙は、PMSで頭に血が上らなければ、他人の目を気にして、必要以上に気を使う性格でした。
そのため、人数分のシュークリームを買って配ったりしていたのですが、山添くんはクリームが多い食べ物は苦手だといって返してくるような無神経な人間だったからです。
一方の山添くんも、突然ヒステリックになる美沙のことを苦手だと思っていました。
だからこそ、彼らは互いに相手に好かれようとはせずに、自然体で接していくんですよね。
特に病気のことを知ってからは、美沙は彼の家に乗り込んで伸び切った髪の毛を切ったり、
カロリーメイトばかり食べていた彼に、おにぎりや和菓子を持って行ったり、
映画を観て興奮したので、その勢いのまま感想を聞かせたりと、気を使わずに接していきます。
一方の山添くんも、はじめはそんな美沙を迷惑に思っていましたが、病気になってから初めて笑うなど、気持ちが晴れていくんですよね。
ソン・ウォンピョンさんの小説『アーモンド』では、愛情を注げばどんな人でも変わっていけることがわかる物語が楽しめましたが、

この小説では、たとえ愛情はなくても、自然体で付き合える人がいれば、悩みは吹き飛んでいくことがわかる物語が楽しめました。
感想③:出来ることに目を向けると人生は楽しくなる
さて、この小説では、「出来ることに目を向けると人生は楽しくなる」をテーマに描かれているように思います。
美沙と出会うまで、家に引きこもりっきりで、パニック障害の人生なんて何ひとつ楽しいことはないと思っていた山添くんでしたが、
引きこもりになった彼のために髪の毛を切ったり、コンビニのおにぎりを用意したり、お守りを郵便受けに突っ込んだりと、あの手この手を使って励ましてくる美沙と接して考えが変わりました。
美容院に行けなければ家で切ればいいし、映画館に入れなければポップコーンを食べながらサントラを聞けばいい。
電車が無理でも自転車がある。そして、その方が楽しいことも多いと気づくんですよね。
だからこそ、山添くんは、仕事が好きだったことを思い出して…。
青山美智子さんの小説『お探し物は図書室まで』では、悩みを抱えている人に一歩踏み出す勇気を与えてくれる物語が楽しめましたが、
この小説では、どのような状況になっても、出来ることに目を向ければ、人生は楽しくなると思える物語が描かれていたので、心が動かされました。
まとめ
今回は、瀬尾まいこさんの小説『夜明けのすべて』のあらすじと感想を紹介してきました。
どのような状況になっても、出来ることに目を向ければ、人生は楽しくなると思える物語が楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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