村田沙耶香『地球星人』は異なる考えを受け入れる心の余裕を持ちたいと思える物語

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自分とは異なる考えを受け入れようとしていますか?

私は出来るだけ受け入れようとしていますが、

村田沙耶香さんの小説『地球星人』を読んで、今後もその努力が必要だということが改めてわかりました。

そうしないと、生きていくのがツライ人たちを追い詰めることになるんですよね。

おすすめ度:3.0

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こんな人におすすめ

  • 常識外れな物語が好きな人
  • 異なる考えを受け入れる心の余裕を持ちたいと思っている人
  • 残酷な世界が描かれている物語が好きな人
  • 村田沙耶香さんの小説が好きな人

あらすじ:誰からも認めてもらえない少女が幻想の世界で生きる物語

主人公の奈月は、小学五年生の女の子。

しかし、彼女は普通の小学生とは異なる環境で暮らしていました。

いつも父や母、姉からサンドバックのようにキツイ言葉を浴びせられたり、叩かれたりしていたのです。

それだけでなく、塾の先生からは性的な対象で見られ、弄ばれていましたが、母に相談しても奈月がおかしいと責められました。

そんなツライ環境で育った奈月の唯一の救いは、小学校に入った時に出会ったぬいぐるみ。

奈月はぬいぐるみと出会ったことで、魔法少女に変身できるようになったのです。

魔法少女になった奈月は少しでも世界の役に立ちたいと願いますが…。

現実と幻想が入り混じった世界観に釘付けになる物語です。

私たちは人間工場で生産するために生きている?

この物語では、私たち人間の一生を工場にたとえています。

ずらりと整列した四角い巣の中に、つがいになった人間のオスとメスと、その子供がいる。つがいは巣の中で子供を育てている。

私たち子供はいつかこの工場をでて、出荷されていく。出荷された人間は、オスもメスも、まずはエサを自分の巣に持って帰れるように訓練される。世界の道具になって、他の人間から貨幣をもらい、エサを買う。やがてその若い人間もつがいになり、巣に籠って子作りをする。

つまり、エサを自分の巣に持って帰り、子供を製造することができなければ「不良品」扱いされる世界で生きているのです。

少し前にSNS上で、LGBTや人間の生産性についての議論が活発に行われていましたが、その背景には、

「人間工場の一部として振舞うべきだ」
「人間工場の不良品でも自由に生きたい」

という対立があったように思います。

人間工場として子供という「製品」を出荷するために、LGBTではダメだ、結婚して出産しろという意見を展開した人たちと、

その意見に反発した人たちの議論が繰り広げられていました。

この議論では、人間工場の一部として振る舞うことが正解であるかのように意見を展開した人たちに問題があるように思います。

さまざまな考えがあることを知り、お互いを認めて、共存していこうという考えが持てない、

つまり、自分とは異なる考えの人たちを排除しようとする、争いを引き起こす考えをしているからです。

実際、工場の一部として機能しない人たちを不良品として扱うと…。

自分とは違う人を認める心の余裕が必要

先ほども紹介したように、奈月は父や母、姉からサンドバックのようにキツイ言葉を浴びせられたり、叩かれたりしていました。

勉強ができない、人間工場の不良品だったからです。

そこで彼女は、魔法少女という幻想の世界に入り込み、魔法を使えばツライことも乗り越えられる、

人間工場の不良品でも、魔法をたくさん覚えれば世界の役に立てるかもしれない…そう一途に思って行動していきます。

そんな彼女の支えになっていたのが、いとこの由宇です。

彼の家庭も複雑な事情を抱えており、由宇は自分が宇宙人だと信じて生きていました。

こうして誰からも認めてもらえなかった二人は、互いを必要とし、小学五年生にも関わらず結婚。

そしてセックスをしてしまうのです。

このことを知った大人たちは激怒しましたが、奈月はそんな大人たちを冷ややかな目で見ていました。

自分たちも好き勝手にセックスをしているじゃないか、そもそも人間工場の一部として機能しろと言ったのは自分たちじゃないかと思っていたんですよね。

さらに、大人になった奈月と由宇に、人間工場の一部になれなかったもう一人の智臣が加わって、

一緒に暮らしていくのですが、ここには書ききれないほどの衝撃的な出来事が描かれていきます。

強盗・殺人・共食いなど信じられない行動を次々と起こしていくんですよね。

そんな主人公たちの行動をみていると、自分とは異なる考えをもった人たちを排除し続けていると、

追い詰められた人たちは、すべての常識を取っ払って必要以上に異常な行動に走るのではないか?と思えてきました。

自分と異なる考えを受け入れる心の余裕がない社会では、誰かを犠牲にしているという残酷な事実に気づかせてくれる物語でした。

まとめ

今回は異なる考えを受け入れる心の余裕を持ちたいと思える村田沙耶香さんの小説『地球星人』を紹介してきました。

私たちはどうしても常識を正しいものだと信じて行動していますが、

あまりにもそれが行き過ぎると、不幸な人たちを生み出すことがわかる物語です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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