瀧羽麻子『あなたのご希望の条件は』は自分のキャリアを見直したくなる物語

おすすめ小説

自分のキャリアについて真剣に考えていますか?

私は時間があればどうしようかと考えていますが、瀧羽麻子さんの小説『あなたのご希望の条件は』を読んで、改めて考える時間をつくろうと思いました。

それだけでなく、キャリアアドバイザーという職業にも興味が持てる物語だったんですよね。

おすすめ度:4.5

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こんな人におすすめ

  • 自分のキャリアを見直したくなる物語を読んでみたい人
  • キャリアアドバイザーという職業に興味がある人
  • ラストに感動できる物語が好きな人
  • 瀧羽麻子さんの小説が好きな人

あらすじ:転職エージェント会社で働く主人公の物語

物語の主人公は、ピタキャリアという転職エージェント会社で働く千葉香澄。

彼女は、もともとは会員制の結婚相談所であるピタマリーという系列会社で働いていましたが、

ある出来事がキッカケで夫と離婚することになり、今の会社に転職しました。

ここでの香澄の仕事はキャリアアドバイザー、つまり、求人の紹介や面接での受け答えに助言をしたりする仕事です。

今回、香澄が担当することになったのは、一ノ瀬慎という今年で8年目を迎えるシステムエンジニアでした。

しかし、一ノ瀬に転職の動機を尋ねたところ、去年の秋に会社を辞めた先輩に勧められたからだと言うんですよね。

それ以外に特に明確な理由はありませんでした。

それでも転職の話を進めたところ…という物語が楽しめる小説です。

感想①:キャリアアドバイザーという職業に興味が持てる

あらすじでも紹介しましたが、香澄はキャリアアドバイザーの仕事をしていました。

求人の紹介からはじまり、履歴書の内容や面接での受け答えについて助言をしたり、

選考スケジュールを調整したり、待遇や入社日といった条件のすり合わせに至るまで包括的に面倒を見ます。

もちろん、一人ではなく同時に何人もの会員の面倒を見る仕事でした。

しかも、個性的な会員も多く、相手の希望通りに転職先を紹介することが望ましいとも限りません。

一方で、会員の多くは職場で働きながら転職活動をしているため、平日の面談は終業後の時間になることが多く、遅くまで仕事をする必要がありました。

また、社内ではキャリアサポート部と営業部で感覚が微妙にずれており、小さな言い争いが絶えませんでした。

営業部では顧客企業の支払ってくれる報酬が会社を支えているのだと考え、

キャリアサポート部では、その報酬を受け取るのは、転職に成功した会員のおかげだと言う意識が強かったからです。

小野寺史宜さんの小説『タクジョ!』では、タクシー会社で働く主人公の物語を通してタクシードライバーという職業に興味が持てましたが、

小野寺史宜『タクジョ!』はタクシードライバーという職業に興味が持てる物語
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この物語ではキャリアアドバイザーという、これまであまり知らなかった職業に興味が持てました。

感想②:転職先はいくらでもある

先ほど、相手の希望通りに転職先を紹介することが望ましいとも限らないと書きましたが、

それは、私たちが想像している以上に多くの転職先があるからです。

たとえば、九鬼あずさは、正社員にしてもらえるなら、何でもいいと言ってピタキャリアにやってきました。

彼女は高校を卒業してから生活雑貨のお店でアルバイトとして働いていました。

社員と同じか、それ以上の働きをしていたので、いつか社員になれると店長から聞いていましたが、

副店長と付き合うようになって、本社にかけ合ってもらったところ、社員になれるケースはほとんどないことがわかります。

そこで転職エージェントに登録したのですが、香澄が紹介したのは、保育園の事務職でした。

彼女が経験してきた数値管理や顧客対応、人事管理などが活かせると考えたからです。

意外ですよね。

他にも、住宅メーカーで営業をしていた二宮壮太は、ノルマが激しく、激務だったので、二度と営業はやりたくないと事務職を希望していました。

この話を聞いた香澄は、消去法で選んだことを指摘し、激務ではない営業職があることを伝えます。

それでも営業職以外でという二宮でしたが、実際に受けてみると、事務職は受かりませんでした。

しかし、激務ではない営業職に出会えるんですよね。

垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』では、まったく農業に縁がなかった主人公が農家として奮闘する姿が描かれていましたが、

厳しい現実に立ち向かうには人とのつながりを大切に/垣谷美雨『農ガール、農ライフ』感想
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この小説では、転職先はいくらでもあることがわかる物語が描かれていました。

感想③:これからの未来を考えたくなる

さて、この小説では、これからの未来を考えたくなる物語が描かれています。

転職を考える登録者もそうですが、主人公の香澄も、このままキャリアエージェントとして働くべきか悩んでいました。

登録者と一定期間しか関われない転職エージェントよりも、ずっと関わりが持てる人事に魅力を感じていたのです。

そもそも、今のピタキャリアに転職したのも、夫の浮気がきっかけで仕事を辞めようとしたところ、

高性能の対話型AI・ソフィアからピタキャリアがいいと勧められたからでした。

そこで香澄は…。

伊坂幸太郎さんの小説『クジラアタマの王様』では、未来を切り開くのは他の誰でもなく自分だとわかる物語が描かれていましたが、

この小説を読んで、自分の未来をどうしたいのかを改めて考えたくなりました。

まとめ

今回は、瀧羽麻子さんの小説『あなたのご希望の条件は』のあらすじと感想を紹介してきました。

キャリアエージェントという職業について興味がもてるだけでなく、自分の将来についても見直したくなる物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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