伊坂幸太郎『砂漠』感想/他人を批判するのはやめて批判される人になろう

おすすめ小説

人には大きくわけて2種類のタイプが存在します。

目の前のことしか見えない「近視眼型」と、上から全体を見渡す「鳥瞰型」です。

もちろん、どちらのタイプにも一長一短がありますが、「鳥瞰型」の人は「近視眼型」の人を見下す傾向があります。

しかし、伊坂幸太郎さんの小説『砂漠』を読んで、他人を見下しているだけでは、世界も自分も何ひとつ変わらないことが改めてわかりました。

どれだけ正しい批判をしても、行動を起こす人には全く歯が立たないことがわかる物語です。

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『砂漠』の情報

タイトル 伊坂幸太郎 
著者 砂漠 
おすすめ度 4.5 
ジャンル ヒューマンドラマ 
出版 実業之日本社 (2017/10/4) 
ページ数 512ページ (文庫本) 
伊坂幸太郎さんの10作目の小説です。

おすすめポイント

  • 鳥瞰型の主人公が成長していく姿に惹き込まれる
  • 西嶋という何があっても自分を信じるキャラクターが魅力的すぎる
  • 自分を動かすのは他人ではない、主観だと励まされる

『砂漠』のあらすじ

仙台市の大学に進学した北村は、4人のクラスメイトと知り合い、行動を共にするようになりました。

少し軽薄なところがある鳥井、超能力が使える南、驚くほど美人な藤堂、そして極端に熱くてまっすぐな西嶋。

何事にも冷めたところのある北村は、彼らと麻雀をしたり、合コンに参加したり、ボーリング場でからまれたり、犯罪者を追いかけたりすることで、少しずつ変わっていきます。

そんな大学生らしい青春を描いた物語です。

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『砂漠』の感想

鳥瞰型の主人公が成長していく姿に惹き込まれる

『砂漠』では、鳥瞰型の代表ともいうべき主人公・北村の目線で物語が進んでいきます。

彼は入学した大学の飲み会で、初対面のクラスメイトと仲良くなろうとバカ騒ぎをしている人たちをみて、みんな必死だな、バカらしいなと思っていました。

彼らの行動を上から見下ろし、そんなに必死になっても、意味なんてないのにな…とバカにしていました。

しかし、そんな北村の前に、これまでみたこともない型破りな西嶋が現れます。

遅れて飲み会に参加した西嶋は、突然マイクを握って、「アメリカが石油欲しさに中東を攻めているのに、俺たちは何をやっているんですか。だから俺は、世界が少しでも平和になるように、麻雀で平和ピンフを作って上がろうとしているんですよ」と、意味不明なことを言い出しました。

さらに、「俺たちがその気になれば、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」と続けます。

もちろん、飲み会に参加していた学生の多くは西嶋の発言を不快に思い、「気持ち悪い」「馬鹿じゃねぇの」「帰れよ」などと言いましたが、北村は彼から目が離せなくなりました。

上から目線で他人を批判するだけで、何ひとつ行動を起こさない自分とは対照的な人物だったからです。

こうして北村はこの飲み会をきっかけに、西嶋と他3人のクラスメイトと行動を共にするようになります。

そして、西嶋に影響されて、少しずつ批判するだけでなく行動するように変わっていきます。

そんなモラトリアムから抜け出そうとする北村の姿に心動かされる物語ですが、その一方で大人になってからも他人を見下すだけで何ひとつ行動しない人たちのダサさもわかる物語です。

西嶋という何があっても自分を信じるキャラクターが魅力的すぎる

ではなぜ、大人になってからも北村のように他人を上から目線で批判し、優越感を抱く人が多いのでしょうか。

それは、「自分には何かを変える力なんてない」と心のどこかで思っているからです。

自分には何かを変える力があると信じていれば、西嶋のように他人からバカにされても行動できるはずです。

たとえば、西嶋はボーリング大会であまりの下手さに大勢の人たちに笑われましたが、びくともしませんでした。

その翌日からボーリング場に通い、教本を片手に練習しはじめます。

他人からバカにされたことに腹を立てたわけではなく、ボーリングが上手くできなかった自分自身が悔しかったからです。

一方で、多くの人たちは、できない自分と向き合うのが嫌で、他人を批判し、優越感を抱くことで、できない自分から目を背けようとします。

しかし、どれだけ他人を批判して優越感を抱いたとしても、現実は何ひとつ変わりません。

そんな自分を変えたければ、弱い自分と向き合い、受け入れることが、はじめの一歩になるのかもしれません。

とにかく、西嶋という自分を強く信じるキャラクターが魅力的すぎる物語です。

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自分を動かすのは他人ではない、主観だ

とはいえ、頭では西嶋のように行動すべきだとわかっていても、なかなか行動できません。

行動しようと決意しても、自分を信じることができずに、すぐに他人を批判して優越感を抱く悲しい日々に逆戻りしがちです。

それは、他人に批判されることを極端に怖れているからだと思います。

たとえば、手負の鹿がチーターに襲われそうになっている姿を目撃したとき、「助けると野生のルールを破ることになる」などと言って、助けないことを正当化する人がいます。

ところが、自分がチーターに殺されそうになれば、その人は拳銃を使ってでもチーターを殺し、自分を守ろうとするに決まっています。

他人に批判されることを恐れて正論を持ち出すけれど、いざとなればその正論を守ろうともしません。

つまり、批判されない安全な場所から抜け出したくない…という理由で正論を振りかざしているのです。

しかし、大人になるということは、学校というオアシスから抜け出し、社会という砂漠を歩くようなものです。

その砂漠が安全圏だと勘違いして他人を見下し、満足しているのだとしたら、同じような批判者にいつ足元をすくわれるかわかりません。

そうして足元をすくわれるくらいなら、他人からバカにされても、西嶋のように「砂漠に雪を降らせてみせる!」くらいの気概を持って自分らしく行動した方がいいと思いませんか?

繰り返しますが、他人を批判して優越感を抱いたところで、私たちの人生は何ひとつ良くなりません。

それなら他人から批判されても、主観を信じて、自分の人生を少しでも良くするために行動していきたい、そんな熱い想いが湧き上がってくる物語でした。

まとめ

今回は、伊坂幸太郎さんの小説『砂漠』のあらすじと感想を紹介してきました。

異なるタイプの5人が、犯罪者を追いかけたり、超能力対決に参加したりと、学生ならではの無謀な行動を繰り返す姿に手に汗にぎる物語です。

それだけでなく、西嶋の熱い想いに「今すぐ何か行動を起こそう!」と触発される物語でもありました。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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