誰かに認められたいと思って仕事をしていませんか?
私も周りから認められたいと思って仕事をしていた時期がありますが、
額賀澪さんの小説『転職の魔王様』を読んで、そうした働き方をしていると、いいようにこき使われて捨てられてしまうことがわかりました。
仕事は誰かに認めてもらうためではなく、自分らしく生きるためにやるべきなんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 今の仕事を続けていくべきか悩んでいる人
- 仕事をするのがつらくて仕方がない人
- どうすれば自分らしく仕事ができるのか知りたい人
- 額賀澪さんの小説が好きな人
作品の簡単な紹介
今回は、額賀澪さんの小説『転職の魔王様』を紹介します。
ブラック企業に勤めていた女性が、登録した転職エージェントで魔王様と呼ばれる男性と出会い、これからどうしたいのかを真剣に考えていく物語です。
読む前は、タイトルと装丁から少女漫画のような物語なのかな?と思っていましたが、まったくそんなことはなく、
転職というテーマを真面目に掘り下げている物語なので、読了後には「これからどうしよう」と真剣に考えていました。
とはいえ、堅苦しい物語ではなく、主人公と魔王様のやりとりが楽しめたり、魔王様の過去が気になったりと気軽に読める物語です。
仕事で悩んでいるときに読めば、魔王様のセリフが心に突き刺さること間違いなしです。
あらすじ:ブラック企業で働いていた女性の物語
物語の主人公は、社会人になって3年が経った末谷千晴(ひつじたにちはる)。
彼女は業界最大手の広告代理店に入社して営業企画部で働いていましたが、
あまりの激務に体調不良になって会社を辞めました。
そこで、叔母が社長を務めるシェパード・キャリアという転職エージェントに登録したところ、
転職の魔王様と呼ばれる来栖嵐(くるすあらし)が彼女のキャリアアドバイザーになります。
ところが、魔王様は他のキャリアアドバイザーとは違い、千晴が「高望みはしない、どんな会社でもいいので働きたい」と言うと…。
という物語が楽しめる小説です。
感想①:仕事に不安を抱える5人の主人公に共感
この小説では、あらすじで紹介した千晴の物語を含めて5人の物語が描かれています。
あらすじで紹介した物語を除いてそれぞれ簡単に紹介していくと、
- 派遣社員として働く宇佐美由夏が、同じ会社で派遣社員として働く七恵から転職活動をしていると聞かされて焦る物語
- 広告代理店の営業マンとして働く笹川直哉が、どれだけ頑張っても評価されないので転職活動に踏み切る物語
- 魔王様の元カノが、現在同棲している漫画家の男性を養うために給料の良い会社に転職しようと考える物語
- 会社に楯ついて3回も会社を辞めている戸松卓郎が自暴自棄になる物語
どの物語も将来に不安を感じている主人公が、これからどうしようかと悩む姿が描かれていたので共感できたんですよね。
坂木司さんの小説『アンと青春』では、主人公の杏子がアルバイトから正社員になりたいのか?と自問自答する物語が描かれていましたが、

この小説では、目の前にある仕事を続けていくべきか、そもそもどんな仕事がしたいのかと真剣に悩む主人公たちに共感できる物語が楽しめました。
感想②:転職の魔王様の言葉が胸に突き刺さる
そんな将来を悩む主人公たちにキャリアアドバイザーとして接する魔王様の言葉が胸に突き刺さります。
たとえば、あらすじで紹介した千晴が、「必要とされるところで働きたい」と言うと、魔王様は、
「自分の価値を他人の価値観に委ねるから、ブラック企業で扱き使われて壊れたら捨てられるんですよ。自分の価値くらい、自分の価値観で測ったらどうです?」
と言います。さらに、
「今の貴方はどこに行ったって、遅かれ早かれ前と同じ目に遭います。誰かから必要とされれば末谷さんは家畜のように従順に働き、その人が与えてくれる価値観を丸呑みにして、壊れるまで働きます。運良く壊れないで定年を迎えられたら幸せじゃないですかね」
と言うんですよね。
もちろん、こき使う側にも問題はありますが、誰かに認められたいと思って他人の価値観を丸呑みにしている限り、いいように利用されてしまうということです。
他にも、各物語のタイトルにもなっていますが、
- 周りが転職するから焦って自分も、ですか
- 転職はレビューサイトで店を選ぶのとは違うんです
- 貴方の人生の前ではどうだっていいものなんですよ
- 仕事に夢を見ないのはご自由です
など、魔王様のセリフが胸に突き刺さります。
漫画『サラリーマン金太郎』では、仕事とは何か?と考えさせられるセリフが満載の物語が楽しめましたが、

この小説でも、自分にとって仕事とは何か?と改めて考えたくなるセリフが満載だったので、いろいろ考えさせられました。
感想③:自分らしく生きるために仕事がしたくなる
さて、この小説では、「仕事は誰かに認めてもらうためではなく、自分らしく生きるためにやるべき」をテーマに描かれているように思います。
魔王様は、「私はどうすればいいのでしょうか」と聞く主人公たちに、
「そんなこと自分で決めてください。大人なんですから」
と言って、切り捨てました。
それは、自分の人生は自分でしか責任が取れないからですが、実は、魔王様もある出来事があって一生治らない足の怪我をし、それまで働いていた会社を辞めていました。
そのとき、魔王様は、
一人の人間ができることなんて、一人の人間の仕事なんて、意外と対したことはない。どんな人間にだって代わりはいる。
ということを知り、他人から必要とされるために偽ったキャラを演じたり、頑張ったり、無理をしたりする必要がないことに気づきます。
つまり、自分らしく生きるために仕事をするべきで、誰かに認めてもらうために仕事をする必要はないということに気づいたんですよね。
太田忠司さんの小説『和菓子迷宮をぐるぐると』では、自分の人生は自分で決めるしかないことがわかる物語が楽しめましたが、

この小説では、仕事は誰かに認めてもらうためではなく、自分らしく生きるためにやるべきだとわかる物語が楽しめました。
まとめ
今回は、額賀澪さんの小説『転職の魔王様』のあらすじと感想を紹介してきました。
仕事は誰かに認めてもらうためではなく、自分らしく生きるためにやるべきだとわかる物語が楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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