寺地はるな『ガラスの海を渡る舟』感想/才能やセンスがなくても一歩踏み出そうと励まされる物語

おすすめ小説

自分には才能やセンスがないと思って、色々なことを諦めていませんか?

私もそうやって諦めているところがありましたが、寺地はるなさんの小説『ガラスの海を渡る舟』を読んで、たとえ才能やセンスがなくても一歩踏み出そうという気持ちが湧いてきました。

自分は特別ではないと焦る主人公が、嫌っていた兄の才能を認め、努力が少しだけ報われる姿が描かれていたので、励まされたからです。

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『ガラスの海を渡る舟』の情報

タイトル ガラスの海を渡る舟 
著者 寺地はるな
おすすめ度 4.5
ジャンル ヒューマンドラマ
出版 PHP研究所 (2021/9/10)
ページ数 256ページ (単行本)

おすすめ度の理由

  • ないものねだりをする兄妹に共感できる
  • センスや才能なんてものに頼らずに努力を信じようと思える
  • ラストは感動で涙がこぼれおちそうになる
  • ストーリー展開が読めてしまう

『ガラスの海を渡る舟』のあらすじ

祖父の後を継いで、「ソノガラス工房」を営んでいた里中羽衣子ういこは、一緒に工房を経営している兄・みちのことを嫌っていました。

道は、転んで泥まみれになっても平気で電車に乗るなど、発達障害のような行動ばかりとっていたので、幼い頃から母が道の世話ばかりしていたからです。

羽衣子が8歳の誕生日のときも、道が同級生に迷惑をかけたからと言って、相手の家に謝りに行ったので、まったく相手をしてもらえませんでした。

また、大人になり、一緒に店を経営するようになってからは、お店にやってくる人たちが、羽衣子がつくったものではなく、道がつくったものばかりを欲しがったからです。

だからこそ、羽衣子は道のことを嫌っていたわけですが、一方の道も、感情がころころ変わる羽衣子のことを、理解できない人間だと苦手に思っていました。

それだけでなく、母から「羽衣子になら簡単にできることも、道にはできへんねんで」と言われて育ってきたため、自分には勝っているところなど何一つないと思っていました。

そんな二人が祖父の後を継いで工房を経営するようになったわけですが、祖父が作品を生み出すために工房を営んでいたときとは異なり、ガラスの骨壺を扱うようになります。

では、なぜガラスの骨壷を扱うようになったかというと…。という物語が楽しめる小説です。

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『ガラスの海を渡る舟』の感想

この小説では、お互いに相手のことが理解できないけれど、羨ましく思う兄妹の姿が描かれていきます。

とはいえ、兄の道は発達障害のようなところがあり、幼い頃から妹の方が優れていると言われて育ってきたため、割り切っているところがありました。

一方、妹の羽衣子は、兄のせいであまり母に甘えることができず、周りからも兄の行動を見てバカにされたり、同情の目で見られたりしたので、恥ずかしい思いをしてきました。

また、自分は出来て当たり前で、兄は少しでも出来ると褒められる姿を見て、ずるいという思いで溢れていました。

それにも関わらず、大人になってガラス工房を二人で始めると、なぜか兄の作品ばかりが売れていきます。

そのため、羽衣子は兄とは差がつきっぱなしだと自分を追い込み、焦りますが、祖父の友人である繁實わたぬきさんに、そんなことはないと励まされました。

「才能とかセンスは目に見えへんから、そんなふわっとしたものに頼っていくのは、苦しいことや」
「昨日も、一昨日も、羽衣ちゃんはガラスに向き合った。その事実があるやないか」

と温かい言葉をかけられるんですよね。

さらに、さまざまな出来事を通して、嫌っていた道のことを少しずつ認めていくことで、羽衣子の努力もほんの少し報われていく姿が描かれていたので、感動しました。

私にとって、羽衣子の焦る姿が、まるで自分を見ているようだったので、この物語は心に突き刺さりました。

たとえ才能やセンスがなかったとしても、努力を信じて一歩踏み出そうと励まされる物語です。

まとめ

今回は、寺地はるなさんの小説『ガラスの海を渡る舟』のあらすじと感想を紹介してきました。

たとえ才能やセンスがなかったとしても、努力を信じて一歩踏み出そうと励まされる、感動の物語が楽しめます。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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