自分とは違う生き方をしている人を「普通じゃない」って思っていませんか?
たとえば、大学卒業後も就職もせず、コンビニでアルバイトをしている人を見たら、普通じゃないって思いますよね。
しかし、村田沙耶香さんの小説『コンビニ人間』を読んで、あえてそうした生き方を選んでいるのであれば、
会社員として働くよりも、自分らしく生きられているのではないかと思うようになりました。
自分らしく生きるには、ステータスよりも、自分にとって望ましい毎日を過ごすことが大切なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 普通とはなにか?を考えさせられる物語を読んでみたい人
- 新しい視点を与えてくれる物語が好きな人
- 自分らしく生きたいと思っている人
- 村田沙耶香さんの小説が好きな人
あらすじ:大学卒業後もコンビニバイトを続ける女性の物語
物語の主人公は、36歳の未婚の女性・古倉恵子。
彼女は、大学卒業後も就職しないで、コンビニでアルバイトをしていました。
彼女自身はその生活に満足していましたが、家族やまわりの人たちからは冷たい視線が向けられます。
「就職したほうがいいよ」「結婚したほうがいいよ」など、余計なお世話ばかり。
そんな彼女の前に、婚活目的でコンビニバイトを始めた男性が現れます。
彼は恵子に「そんな生活は恥ずかしい」と言うのですが…。
一味違う世界の見方を教えてくれる
そもそも、恵子は子どもの頃から他の子どもとは違う視点を持っていました。
たとえば、公園で死んだ小鳥を見つけたとき、他の子どもたちは泣いていましたが、恵子は「お父さん、焼き鳥好きだから、これ食べよう」と言い出します。
彼女の母はその言葉を聞いて絶句し、諭しましたが、恵子には理解できませんでした。
なぜ、焼き鳥が好きなのに食べないのだろう。死んだ小鳥が可哀想だと言っておきながら、なぜ綺麗なお花の茎を引きちぎって殺し、お供えしているのだろう…と疑問に思っていたのです。
本書では他にもこういった物語が多数語られますが、私たちは「常識」にとらわれて、物事を決まった視点でしか見ていないことに気づきます。
少し視点を変えるだけで、これまでとは違う世界が広がるんですね。
自分の考えを押し付ける傲慢さに気づける
さて、他人の言動が理解できず、周りから困惑されることが多かった恵子は、他人とはできるだけ話さないようにして、皆の真似をするか、誰かの指示に従うようにして生きてきました。
そうして大学生になった彼女は、偶然見つけたコンビニバイトを始めたことがキッカケで生活が変わります。
コンビニのアルバイトは、挨拶から接客、掃除の仕方までマニュアル化されていますよね。
それに従って行動すればお店の役に立ち、人間として扱ってもらえ、世界の部品になれる…。
つまり、マニュアル外の世界ではどうすることもできなかった彼女に居場所ができたのです。
ところが、彼女のまわりにいる人たちは、「アルバイトよりも就職したほうがいいよ」とか、「就職が難しくても結婚くらいしたほうがいいよ」などと言って、自分の価値観を押し付けてきます。
それだけでなく、彼女が「なぜ今のままじゃダメなの?」と聞き返すと、ヤバイ奴だと認定し、排除しようとする人まで現れるんですよね。
こういった視点で世界を眺めてみると、私たちはものすごく閉鎖的な世界で生きていることに気づきます。
他人を自分の価値観で判断することの傲慢さがよくわかる物語です。
誰もが自分らしく生きていない!?
ここまで見てきたように、多くの人たちは「みんなが正しい」と思うこと…
就職して、結婚して、子供を産むべきだと言う大勢の人たちの意見に従って生きているように思います。
言い方を変えれば、自分の頭で考えることをやめて、多数の意見に従っているだけです。
作中でも、恵子が男性と同居を始めると、まわりの人たちは警戒心をとき、彼女を自分の仲間だと認め、フレンドリーな接し方をしてきました。
つまり、誰もが自分らしく生きることをやめて、他人と似たような生活を自分にも他人にも強制しているんですよね。
こうして考えると、コンビニ人間である恵子の方が、よほど自分らしく生きているように思えてきます。
まとめ
今回は、2016年に芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの小説『コンビニ人間』を紹介してきました。
短い物語ですが、常識とかけ離れた世界が描かれているので、何か心に響くものに出会えるはずです。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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