心が張り裂けそうになっていませんか?
私は仕事やプライベートで追い込まれたときにそうなりますが、窪美澄さんの小説『夜空に浮かぶ欠けた月たち』を読んで、誰もが心の病になる可能性があることがわかりました。
だからこそ、「心の病」=「心が弱い」というレッテルを貼るのはやめて、自分にも他人にも優しくありたいと思える、心が癒される物語でした。
『夜空に浮かぶ欠けた月たち』のおすすめポイントとあらすじ
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『夜空に浮かぶ欠けた月たち』の感想
心が張り裂けそうな悩みを抱えている主人公たちが、人の優しさに触れて、心の傷を癒していく連作短編集です。
「心の病」と聞くと、どうしても「心が弱い人」だと思ってしまいがちですが、『夜空に浮かぶ欠けた月たち』を読んで、そうしたレッテルを貼るのは間違いだと気づきました。
そもそも、人はなぜ心に深い傷を受けるのでしょうか。
『夜空に浮かぶ欠けた月たち』に登場する主人公たちのように、そのきっかけはいろいろあります。
キラキラしている同級生に馴染めずに負い目を感じたり、約束や締め切りを守れずにダメ社員だと言われたり、重たい恋愛をして相手からいいように利用されたり、不妊治療を経てようやく生まれた娘が可愛いと思えなかったりと、本当にきっかけはいろいろです。
しかし、彼らに共通しているのは、一人で悩みを抱え込むところです。
「こんなことで悩むのは心が弱いからだ」「弱音を吐くのは恥ずかしいことだ」「これくらいは自分でなんとかしなければ…」などと、一人で悩みを抱え込み、自分を追い込んで、心に深い傷を受けてしまうのです。
もちろん、真面目で一生懸命という性格も関係しているのでしょうが、もう少し肩の力を抜いて、人に頼るようにすれば、悩みは軽減するはずです。
特に、『夜空に浮かぶ欠けた月たち』に登場する椎木メンタルクリニックの夫婦のように、心の病で苦しんだ経験のある、心優しい人たちと出会えれば、心の病になることは恥ずかしいことではないと確信がもてるだけでなく、いつかきっと良くなるはずだと前向きな気持ちになれます。
さらに、心の病になったからこそ、同じ悩みで苦しむ人たちに寄り添えることがわかり、心の病で悩んでいることは決して無駄ではないことに気づけます。
このように、心の病になるのは、心が弱いからではなく、むしろ真面目だったり、優しかったりしているからで、しかもそうした経験は決して無駄にはならないと思える、張り裂けそうな心が癒される物語に興味がある方におすすめの小説です。
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