自分らしく生きていますか?
子育てを始めると、どうしても自分よりも子供が優先になってしまい、それが続くと子供に執着してしまいがちですが、
垣谷美雨さんの小説『子育てはもう卒業します』を読んで、親である私たちが自分らしく生きることが子育ての秘訣だと気づきました。
どれだけ子供に執着しても、親子は別人格で、価値観が違って当たり前なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 子育てをテーマにした物語に興味がある人
- 田舎暮らしの閉塞感を味わってみたい人
- 自分らしく生きることが子育ての秘訣だという理由を知りたい人
- 垣谷美雨さんの小説が好きな人
あらすじ:3人の女性の青春時代から中年までを描いた物語
一人目の主人公・淳子は、教育費を捻出するために、大嫌いな義理の両親と同居していましたが、
中学受験を控えた長男は、週5日の塾通いをしても、まったく賢くなりませんでした。
そんな淳子に耳寄りな話が入ってきます。
舅のコネを使えば受験をしなくても、目的の中学校に入学できると言うのです。
そこで淳子は…。
高校二年生の娘がいる二人目の主人公・明美は、娘には一生続けられる仕事について欲しいと願っていましたが、
娘は英文科に進学することを希望していました。
仏文科を卒業して苦労してきた明美は、「このままでは私の二の舞だ!」と、看護学科や薬学部を勧めますが…。
親の反対を押し切ってフランス人と結婚した三人目の主人公・紫は、結婚当初は優しくて今を生きる夫が自慢でしたが、
娘が女優として活躍するようになると、生活のすべてを娘に頼り、漫画ばかり読んでいる夫に嫌気がさしてきました。
しかし、娘はそんな父親が大好きです。いったいどうすればいいの!?
そんな3人の女性の青春時代から中年までを描いた物語です。
感想①:どのような環境になっても悩みは尽きない
あらすじでも紹介しましたが、3人の女性はまったく違う環境で暮らしていましたが、悩みは尽きませんでした。
夫の実家の離れに豪邸を手に入れた淳子でしたが、その代償は想像以上に大きいものでした。
義理の両親は、何かにつけて口出ししてきます。
長男の名前「龍男」は、夫の母親の名前「龍子」の一字を取ってつけたもの。
そんな義母は、子供には絵本を読み聞かせなさい、ジーパンは履いちゃダメ、パートに出かけるなんてもってのほか!?など自分の考えを押し付けてきます。
義理の母親ですが、『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』に描かれていた毒親でしかありません。

しかも、土日も家に入り浸り。これでは息がつまって仕方ありませんよね。
それでも淳子は、「子供の将来のために」と教育費を捻出してきましたが、長男はまったく賢くなりませんでした。
だからこそ、淳子は他の二人が羨ましくて仕方なかったのですが…。
実は、明美も紫もそれぞれ悩みを抱えていました。
夫の仕事が順調な明美は、他人からは専業主婦を満喫しているように見えていましたが、
どれだけ韓流ドラマを観ても心が満たされることはありませんでした。
むしろ、なぜこんなムダな日々を過ごしているのだろう…と考えていたのです。
しかも、夫はキャバクラにハマり、娘は予想どおり就活で苦戦していたので、悩みは尽きません。
一方の紫は、優しいダンナと自慢の娘に囲まれて幸せな日々を過ごしていましたが、将来が不安で仕方ありませんでした。
「いつまでも娘に頼って生きていくわけにはいかない」と思っていたからです。
そもそも、芸能界はいつまで活躍できるかわからない世界です。
それにも関わらず、夫は漫画ばかり読んで、何も考えずに今を楽しんでいます。
娘も大学に行かずに女優業に専念。芸能界で失敗したらどうなるんだろう…と悩んでいたんですよね。
『悩み抜く力』の感想にも書きましたが、彼女たちのように悩み向き合わずに放置していると、
どのような環境になっても悩みは尽きないことがわかります。

感想②:田舎暮らしの閉塞感よりは都会で悩むほうがマシ!?
そんな悩みを抱える彼女たちが、それでも東京で頑張り抜こうとしたのは、
「田舎の実家には帰りたくない」という強い思いがあったからでした。
淳子は大学生の頃に実家に帰り、「ここでは暮らしたくない」と心から思いました。自由がなかったからです。
実家の近くで同級生の男の子と5分立ち話をしただけで、付き合っているという噂が流れたり、
喫茶店に入っても常連のおじさんたちが話しかけてきて、ゆっくり本も読めません。
そんな息苦しい場所に戻りたいとは、どうしても思えなかったんですよね。
明美も同じ考えでした。田舎は近所の目が窮屈で仕方ありません。
なかでも紫は親からの束縛がきつく、結婚相手まで親が決めてしまうほど、自由を奪われていました。
『毒父家族』に描かれているような毒親に育てられたのです。

そのため、フランス人の男性と結婚したことで勘当されます。
このように、「田舎の不自由な暮らしはもう二度と味わいたくない!」という思いが、彼女たちの原動力になっていました。
『農ガール、農ライフ』にも描かれていましたが、田舎の閉塞感が伝わってくる物語です。

感想③:親も自分らしく生きるのが子育ての秘訣
さて、ここまで紹介してきたように、3人の女性は、ある意味では自分を犠牲にして子育てに励んできました。
「子供たちに自分のような不自由な思いはさせたくない」と考え、頑張ってきたんですよね。
淳子は大嫌いな義理の両親と暮らすことで子供の教育費を捻出し、
明美は嫌われても「英文科には行かないほうがいい!」と伝え、
紫は芸能人として売れなくなった将来のことを考えて、大学進学を勧めてきました。
しかし、誰一人として親の思い通りにはいきませんでした。
なぜなら、『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』の感想にも書いたように、親子でも価値観が違って当然だからです。

むしろ、子供たちは親の束縛から逃れて、自分らしく自由に生きたいと思っていたんですよね。
このことに気づいた彼女たちは、自分を犠牲にしてまで子供に尽くすのはやめよう、もっと自分の人生を楽しもうと考えます。
これが、この小説のタイトル『子育てはもう卒業します』につながっていきます。
子供だけでなく、親も自分らしく生きることが子育ての秘訣だと教えてくれる物語でした。
まとめ
今回は、垣谷美雨さんの小説『子育てはもう卒業します』のあらすじと感想を紹介してきました。
親になると、どうしても子供優先で生きてしまいがちですが、自分らしく生きるのもアリかなと思える物語です。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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