東野圭吾『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』感想/久しぶりの王道ミステリーが面白い

おすすめ小説

「今までの作品で一番つまらないです」「期待外れでした」などとAmazonで酷評されている東野圭吾さんの小説『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』。

私としては、酷評するような作品には思えず、むしろ面白かったとさえ思っているので、「このような評価に惑わされて読むのをやめてしまうのはもったいない!」と思っています。

そこで今回は、どうして評価がわかれるのか?を考えながら感想を書いていきます。

面白い作品だと思うんですけどねぇ…。ほんとに。

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『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』の情報

タイトル ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 
著者 東野圭吾 
おすすめ度 4.0 
ジャンル ミステリー 
出版 光文社 (2020/11/30) 
ページ数 439ページ (単行本) 

おすすめ度の理由

  • マジシャンが技術を駆使して犯人捜しをする設定に惹き込まれる
  • コロナ禍と王道ミステリーの組み合わせが新しい
  • ラストは盛り上がるので読み終った後の印象がいい
  • 犯人が予測できてしまう

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』のあらすじ

名もなき町。 ほとんどの人が訪れたこともなく、 訪れようともしない町。 けれど、 この町は寂れてはいても観光地で、 ふたたび客を呼ぶための華々しい計画が進行中だった。 しかし、 多くの住民の期待を集めていた計画は、 世界中を襲ったコロナウイルスの蔓延により頓挫。 町は望みを絶たれてしまう。 そんなタイミングで殺人事件が発生。 犯人はもちろん、 犯行の流れも謎だらけ。 当然だが、 警察は被害者遺族にも関係者にも捜査過程を教えてくれない。 いったい、 何が起こったのか。 「俺は自分の手で、 警察より先に真相を突き止めたいと思っている」──。 颯爽とあらわれた“黒い魔術師”が人を喰ったような知恵と仕掛けを駆使して、 犯人と警察に挑む!

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『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』の感想

マジシャンが技術を駆使して犯人捜しをする設定に惹き込まれる

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』では、殺害された元中学教師の娘・神尾真世が主人公でワトソン役、叔父が探偵役として犯人捜しをするミステリーが描かれています。

この叔父・神尾武史がマジシャンで、警察から邪魔者扱いされても、まるで『名探偵コナン』のように、「探偵七つ道具」改め「マジックや心理学」を駆使して犯人捜しをしていきます。

警察からこっそりスマホを奪い取って情報をゲットしたり、盗撮をして容疑者たちの行動を監視したり、挙句の果てには証拠を偽装するなど、何でもありな行動をとります。

そのため、『加賀恭一郎シリーズ』や『ガリレオシリーズ』のような恰好いい探偵役をイメージしていると、そのギャップに嫌悪感を抱くかもしれません。

警察や姪にたかって食費を浮かせようとしたり、姪に殺された父の発見直後の写真を見せるなど、あまりのうさん臭さに幻滅します。

とはいえ、ただの嫌な奴ではない…ケチだったり、無神経だったりするだけでなく、優しさや恰好よさも散りばめられているので、このギャップに魅力を感じるかどうかで評価がわかれるように思います。

私はこの魅力に惹き込まれました。

コロナ禍と王道ミステリーの組み合わせが新しい

東野圭吾さんの小説では、よく時事問題が取り上げられています。

たとえば、東日本大震災の2年後に出版された『祈りの幕が下りる時』では、原子力発電所で働く作業員の姿が大きなテーマの一つとして盛り込まれています。

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』でも、時事問題として、コロナ禍の影響を受けた人たちの姿が盛り込まれていました。

たとえば、真世の故郷では、寂れた観光地の町おこし事業として、人気漫画を活用した「幻ラビハウス」を建設しようとしていましたが、コロナ禍のせいで取りやめになり、さらに県境を超えた移動の自粛により観光客が減ったため、困っている…というように、現実でも同じような悩みで困っている人たちの姿が描かれています。

他にも、オンラインでの葬儀や、在宅ワークがきっかけで仲が悪くなった夫婦の姿など、コロナ禍ならではの話題に惹き込まれます。

とはいえ、ミステリーのジャンルとしては、犯人は誰で、動機は何のか?を描いた王道ミステリーなので、大きな驚きを期待して読むと、残念な気持ちになるかもしれません。

私としては、最近少なくなった『シャーロック・ホームズシリーズ』のようなオーソドックスな展開が、コロナ禍ならではの話題と共に楽しめたので、最後まで一気読みしてしまいました。

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ラストは盛り上がるので読み終った後の印象がいい

タイトルにもなっている『ブラック・ショーマン』は、姪からお金を巻き上げるほどのケチで、無神経なマジシャン・武史のことを指しています。

しかし、ラストはそのイメージを覆すほど、格好いい振舞いをするので、心が動かされました。

とはいえ、序盤はまったく魅力的に思えないので、読み進めるのが少し億劫になります。

その一方で、ラストは怒涛の盛り上がりをみせるので、もう少し早めに盛り上がると、批判的な人たちの印象も変わったように思いました。

私としては、後半に盛り上がる物語が大好きなので、読み終った後も、彼らのその後を考えていました。

続編が出ればぜひ読みたいと思います。

まとめ

今回は、東野圭吾さんの小説『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』のあらすじと感想を紹介してきました。

強欲で無神経なマジシャンが探偵役なので、人によって好みが分かれるかもしれませんが、マジックや心理学を駆使して犯人を追い詰めていく姿に惹き込まれます。

また、序盤は緩やかに進んでいきますが、ラストは怒涛の展開が待ち受けているので、一気読み間違いなしのミステリーです。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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