アメリカに対してどのようなイメージを抱いていますか?
私は日本よりも自由で、平等で、誰にでもチャンスがある国だと勝手なイメージを抱いていましたが、
『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』を読んで、日本と似たような問題を、場合によってはそれ以上に深刻な問題を抱えている国だと気づかされました。
そのため、アメリカについてもっと知りたくなったんですよね。
今回は、『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』の中から、気になったベストセラー本17冊を紹介していきます。
1. ヒルビリー・エレジー
2016年に大統領になったトランプは、経験も実績もない政治の素人で、党のリーダーをおおっぴらに非難し、
長年の慣習である納税申告書の開示を拒み、発言の7割が偽りという評価を受けたにも関わらず、大統領選に勝利しました。
その理由は、イベント会場でも見てとれたと言います。
他の候補者のイベントとは異なり、駐車場の空きスペースをメールで教えてくれたり、係員が停める場所をナビゲートしてくれたり、
そこから無料のシャトルバスで会場まで連れて行ってくれるなど、まるでロックコンサートに来たかのような手厚い「おもてなし」がありました。
さらに、演説も国家予算や税金の使い方と言った難しそうな話は一切せず、
「とてもひどい」というような小学校で学ぶ程度の単純な語彙だけを使ってオバマ大統領や他候補者を貶したのです。
そんなトランプをあざ笑っていた政治のプロたちが、彼が予選を勝ちそうになって読み始めたのが『ヒルビリー・エレジー』です。
著者であるJ・D・ヴァンスは、幼少の頃から貧しい環境で育ちました。
その後、イエール大学に行き、全米のトップ1%にたどり着いたのですが、トランプの支持者は彼の両親たちのようなアメリカの繁栄から取り残された白人だと言います。
アメリカ人の中で労働者階級の白人ほど悲観的なグループはいないそうです。
知識人は彼らを「白いゴミ」と言い、リベラルの民主党は、黒人や移民ばかりを優遇しているからだと言います。
ヴァンスの父は、イエール大学に行った息子に「願書で黒人かリベラルのふりをしたのか?」と尋ねるほど、政治的に優遇されていなかったそうです。
そんな彼らに、プライドを与えたのがトランプです。
トランプは誰にでもわかる言葉で、「悪いのは君たちではない。イスラム教徒、移民、黒人、不正なシステムを作ったプロの政治家やメディアが悪い」というメッセージを出したので、彼らの支持を得たのです。
とはいえ、労働者階級の白人には、困難に直面したときに、怒る、大声で怒鳴る、他人のせいにする、困難から逃避するというクセがありました。
だからこそ、オバマやブッシュや企業を非難するトランプのやり方に乗せられたんですよね。
しかし残念ながら、トランプは大統領就任後2週間で彼ら労働者たちを裏切りました。
トランプは、「オバマケア」と呼ばれる医療保険制度改革をもっと素晴らしいものに取り替えると言いましたが、実際に廃止すると、多くの国民が健康保険を失うことになります。
また、メキシコと国境を作り、その費用をメキシコ人に払わせると言いましたが、実際はメキシコに対して20%の関税をかけることにしました。
これにより、メキシコからの輸入に頼っていた冬場の野菜や果物が20%高くなり、無職や低所得者層の生活がますます苦しくなったのです。
それでも、白人労働者たちは、トランプの裏切りに今でも気づいていません。
このように、トランプが当選した理由とトランプを支持する人たちの背景がわかる一冊です。
2. ダーク・マネー
2016年の世界長者番付の9位には、あまり知られていないチャールズ・コークとデイビット・コークという名があります。
彼らは石油、天然ガスなどのエネルギー、肥料、穀物、化学物質などを広く手掛ける「コーク・インダストリーズ」のCEOと副社長ですが、
大金を使って贔屓の候補を当選させるだけでなく、長年にわたって自分たちに有利になるように大金をバラまいてきました。
地方自治体から連邦政府まで、全米の行政機関を自分たちの理念に沿う政治家で牛耳るようにしたのです。
さらに、学問の看板を掲げたシンクタンクや非営利団体を作り、メディアや大学機関に入り込んで理念を深めていきました。
研究所という名で、石油、天然ガス、石炭等の企業による環境破壊を正当化し、彼らの企業の減税のために働く団体を立ち上げたのです。
一方で、彼らの政策に反対する政治家や科学者たちに汚名を着せる活動もしました。
ビル・クリントンとヒラリーはその標的でした。複数の私立探偵を雇い、汚点を見つけ出し、嘘を交えて雑誌に流しました。
クリントン大統領の次席法律顧問ビンス・フォスターの死が自殺だと判明しても、それを殺人だと仄めかしてメディアに流させたのです。
しかし、トランプの登場は彼らにとっても予想外でした。彼らでさえコントロールできないモンスターだったのです。
カネで政治を動かす億万長者の正体を明かした一冊です。
3. ドナルド・トランプの危険な兆候
トランプ大統領はビデオやTwitterで揺るぎない証拠があるのに平然と嘘を突き通し、それを指摘されたり、批判されたりすると逆上します。
そして、こともあろうことにTwitterで個人を執拗に攻撃するのです。
こういったトランプの性格に対してある専門家は、「病的な自己愛」、つまり自分が特別だという感覚に依存的になり、ドラッグと同様に、ハイになるために嘘をつき、盗み、騙し、裏切り、身近な人まで傷つけようとする状態に陥っていると言います。
さらに、別の専門家は、他人への共感、感情移入が欠落している「ソシオパス」だと指摘しています。
また、こうした自己愛が強い、ソシオパスは、他人を攻撃する傾向が強いため、大きな戦争のリスクが高まると言います。
実際、トランプ大統領は、
- 使わない核兵器を持っていることになんの意味があるのかと発言
- 戦争の捕虜に対して拷問を使うことを推奨
- スターならなんでもやらせてくれると女性に対する性暴力を自慢
- ヒラリー・クリントンの暗殺をフォロワーに呼びかける
- 5番街の真ん中に立って誰かを拳銃で撃っても支持者を失わないと公言
など、暴力による威嚇、自慢が絶え間なく続いています。つまり、トランプ大統領は独裁者になりたがっているとわかる一冊です。
4. FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実
トランプ大統領の暴露本である本書を書いたジャーナリストは、「現場にいた者や目撃者を直接何百時間も取材して得た情報から導き出した」と冒頭に書いています。
このように、真実味のある情報源をもとに裏付けられたトランプ大統領の実態は、
- トランプは「恐怖」こそが最もパワフルな力であると信じている
- トランプは証拠があっても自分の嘘を認めないこと、決して謝らないことが「強さ」だと信じている
- トランプの経済知識は小学生並み。だが、それを認めず、学ぶ意思はない
- トランプは専門家であるアドバイザーの意見は聞かず、根拠がない持論だけを信じる
など、まるで小学5、6年生のような振舞いだと言います。
また、本書では、至るところで韓国や中国が非常に重要な役割を担っていると側近がトランプ大統領に散々聞かせてきたと書かれていますが、日本についてはまったく書かれていません。
日本と安倍首相が話題にする必要もないほど軽い存在だったから…だそうです。
5. 戦場記者が、現地に暮らした20年
ISISをはじめ、イスラム過激派テロリストのニュースに触れたことがある人は多いと思いますが、歴史的背景を踏まえた上で現状を理解できている人は少ないでしょう。
イスラム教は、かつて富もパワーも世界の最高峰にありましたが、没落してきたオスマン帝国が政権を握り、ドイツと組んで第一次世界大戦に参戦したことで、運命が大きく変わります。
オスマン帝国は敗退し、戦勝したイギリスとフランスで大半の領土を分割することになったからです。
ところが、第二次世界大戦が終わると、イギリスとフランスは、お金もエネルギーもなくなり、中東を手放しました。そこで、代わりにアメリカが支配することになったのです。
このとき、中東の国は、「外見は華麗で印象的だが、内部はシロアリに喰われ、カビだらけで、腐りかけている豪邸」のようなもので、強そうに見えましたが、ひと押しすれば倒れる状態だったと言います。
それでも国を倒してしまうと、国民は住む場所がなくなって混乱するため、生かさず殺さずにいるのが、アメリカの方針でした。
ところが、ジョージ・W・ブッシュ大統領がそれを変えました。ブッシュ政権がイラクとオサマ・ビンラディンが同盟関係にあると嘘をついて戦争を始めたのです。
理由は大きく二つあります。
- フセイン政府を民主主義に代えられると信じ込み、政治的悪への唯一の解毒剤だと考えた
- 同時テロへの復讐に飢えており、軍隊は戦争準備万端だった
こうしてイラク戦争が始まり、ブッシュ政権はイスラム国民をフセインから救ったとアピールしました。
確かにフセインは残忍な暴君でしたが、アルカイダ的なイスラム過激派がイラクに来たのは、アメリカが侵略したからです。
つまり、ブッシュが腐っていた豪邸を倒したために、ISISが誕生したんですよね。
さらに、ソーシャルメディアで盛り上がったエジプトの革命で、オバマは長年アメリカの友人だったムバラクを見捨てて革命を支援し、リビアでは反政府グループを軍事支援する一方で、
シリアの反政府グループには手を差し伸べないなど、優柔不断な決断をしたため、政府と反政府の両方から裏切られたと思われ、恨みを買いました。
その結果、革命後のエジプト、リビア、シリアは内戦が続く地獄のような無法地帯になり、現実維持で続いてきた中東とアメリカの脆弱な信頼関係は失われたのです。
6. ファンタジーランド
アメリカは、500年前からある問題を抱えていると言います。
それは、ヨーロッパの白人が移住し始めたときから一貫して、空想的でマジカルな考え方をしてきた国だというのです。
アメリカには先住民がいましたが、ヨーロッパの白人にとっては、「新世界」であり、「想像上の場所」でしかなく、「熱に浮かされた夢」であり、「伝説」であり、「夢見心地の妄想」でした。
1600年前後にアメリカに渡ってきたイギリス人は、まったく根拠のない夢のために、家族、友人、祖国、そして分別を捨てました。
つまり、アメリカにやってきた人たちは空想力と冒険心が強かったのです。そのため、ゴールドなしのゴールドラッシュが起こります。
その後、ゴールドがない現実を受け入れたヴァージニアのアメリカ人たちは、たばこ栽培を始めましたが、マサチューセッツに魔女狩りをした先祖の流れを受ける清教徒たちがやってきました。
こうしてアメリカは、いかれた宗教カルトによって創造されたのです。
とはいえ、このマジカルな発想があるからこそ、ハリウッド映画やディズニーが誕生して栄えました。
その一方で、現実よりフィクションが多い番組が大人気になり、これが選挙に大きく影響を与えていると言います。
「自分が信じるものが正しい」と考えている人たちが多いのです。
ブッシュ政権がその下地を作り、トランプがその上でファンタジー世界を見せたのです。
そのため、トランプがどれだけ嘘をついても、候補者は彼を応援し続けると言います。
7. 世界と僕のあいだに
本書は黒人作家が14歳の甥に向けて書いたエッセイですが、「アメリカは誰にでも機会を与える素晴らしい国」だから、「大きな夢を持て」という読者の予想通りの内容は書かれていません。
祖国アメリカは、黒人を犠牲にして出来上がった国なので、黒人にはそれは不可能だというのです。
アメリカの初期の富は、黒人奴隷を消費することで生み出され、今でもオモチャの銃を持っていた12歳の少年や、武器を持っていなかった18歳の少年、路上でタバコをバラ売りしていた43歳の男性が、黒人というだけで簡単に警察官に殺されています。
しかも黒人を殺害した警察官は無罪になりました。
つまり、黒人は少しでも疑いのある行動をしたり、言い返したりしたら、肉体が破壊される可能性があるのです。
そのため、「オモチャの銃を撃ってはいけない。フード付きのジャケットを着てはいけない。警官にどんなに侮辱されても言い返してはいけない」といった内容が、黒人の間で不文律になっているのです。
今でも多くの黒人が差別を受けている現実がわかる一冊です。
8. IQ
物語の主人公であるアイゼイア・クィンターベィは、IQが並外れて高い黒人で、シャーロック・ホームズのように謎を解き、難問を解決していきます。
この小説の魅力は、アイゼイアの複雑なキャラクターにあります。
常に冷静で感情を表に出さず、他人と心理的な距離を持つアイゼイアですが、コミュニティの隣人から助けを求められると、厄介な仕事でも応じます。
報酬目当てではなく、過去の自分の罪を償うために行動していました。
また、この小説では、アメリカ人もほとんど知らないロサンゼルス南部の黒人とヒスパニック系ギャングの抗争について光を当てています。
白人によるマイノリティへの人種差別はよく知られていますが、マイノリティ同士の人種差別を描いているところが、この小説の魅力です。
9. ミズーラ
モンタナ大学がある地方都市ミズーラでは、大学のアメフトチーム「グリーズリーズ」の選手が神のように崇められています。
しかし、グリーズリーズのクォーターバックがレイプで訴えられた2013年の裁判をきっかけに、アメフト選手からレイプあるいは輪姦されたと訴えていた女子大生がほかにも数多くいたことが明らかになりました。
このとき、全米から非難されたのは、大学の対応ではなく、被害者よりも加害者をかばう住人の態度にでした。
この町ではアメフト選手は住民全員の自慢の息子です。彼らにレイプされたと訴える女子学生は嘘つきと見做されたのです。
たとえ動かぬ証拠があっても、「誤解があったのだろう」「若さゆえの、男ゆえの、ちょっとしたミスだ」と言って男子学生を庇い、
被害者の女性を「デートした後でふられた仕返しをしているに違いない」と犯罪者扱いしました。警察も同様です。
今でも女性が虐げられている現実がわかる一冊です。
10. パワー
トランプ大統領はヒラリー・クリントンを破りましたが、投票数では280万票以上ヒラリーの方が多いことをご存じですか。
これは、アメリカ独自の「選挙人制度」というシステムによるものです。
トランプ大統領は、自分に対して厳しい質問をするジャーナリストたちにセクハラ的な嫌がらせをし、ビデオで「スターなら、プッシー(女性器をつかむ)とか、なんでもやらせてくれる」と自慢し、
妻の妊娠中に「プレイボーイ」のモデルと不倫し、別のポルノ女優に不倫の口止め料を払い、ツイッターでも露骨な女性蔑視の発言をしてきたので、多くのアメリカ人女性はトランプの勝利に衝撃を受けたと言います。
そこで多くの女性が抗議活動を始めました。代表的なものが、「ウィンズ・マーチ」で、女性の人権と生殖に関する権利、LGBTQの人権などを求めたデモです。
また、これまでセクハラや性暴力に耐えてきた被害者が「私もだ」と手をつないで立ち上がり、権力を持っていた加害者を追及する「#MeToo」ムーブメントも盛り上がりました。
こうした流れを予期するような小説が「パワー」です。
この小説では、女性が支配層であり、男性は力が弱くて知的にも劣っているとみなされている世界が描かれます。ある時から女性が特殊なパワーを持つようになり、立場が逆転するという物語です。
現代社会では肉体的に男性が女性を圧倒することができます。この小説では、新しく得たパワーをもとに女性が男性を圧倒することができるようになります。
たとえば、女性は男性を虐待することもできるし、殺すこともできます。性交を拒否する男性に電気刺激を与えてレイプすることもできるし、性奴隷にすることもできます。
男の性奴隷の命は安いので、虐待して殺しても、利用する側には罪の意識はありません。
男性は女性の保護者なしには外出も買い物も許されなくなります。単独で行動すると、食べることができなくなり、女性集団から襲われ、性的に凌辱されたり、殺されたりします。
「子孫を残すためには男は必要だが、数が多い必要はない」と男性を間引きする案も女性から出るようになります。
…というように、男性にとっては目をそむけたくなるような未来が描かれていますが、実はこれらはすべて女性に実際に起こったことであり、現在でも起こっていることです。
この小説で問われているのは、「レイプされるのは、襲われて抵抗しない女性が悪い」とか「女性が独り歩きをしていたら、襲われても当然」、「嫌だといいながら、本当は楽しんでいたのだろう」という男性に対する返答なのです。
そういう男性に対してパワーが逆転したら、「あなたはレイプされても殺されてもOKなのでしょうね?」と問い返している物語です。
11. 仕事と家庭は両立できない?
フェミニズムの第1波は19世紀末から20世紀はじめにかけての「女性の参政権運動」です。
投獄を覚悟で戦った女性たちのおかげで、現在のように女性は参政権を得ることができました。
第2波は、中絶の合法化や社会的な男女平等を憲法のレベルで求める運動で、黒人の公民権運動と反戦運動が高まった1960年代に起こりました。
この運動後の知的階級のアメリカ人は、フランスの女性哲学者シモーヌ・ド・ボーヴァワールの「女は女に生まれるのではない。女になるのだ」という言葉どおり、「女も努力すれば、男と同じことができるはず」と信じて育ちました。
しかし、男女同権が進んでいると思われているアメリカでも、今でも女性が男性と同様に働くのは難しく、同じ仕事をしていても賃金に格差があり、組織で要職につく女性は多くありません。
そこで本書は、理想と現実のバランスを重視した第3波を提唱しています。
現実を見れば、妻のほうが高収入で高い地位についている男性や、専業主夫になった男性は、男性からも女性からも差別されています。
だからこそ、今でも男性は女性と同格になる選択ができないと言い、女性も男性も仕事と家庭の両立ができるように、考え方を変えていこうと提案している一冊です。
12. ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち
2013年12月、ある女性が書いたツイートが世界的に大炎上しました。
「アフリカに向かっているところ。エイズにはかからないといいけど。冗談よ〜。私、白人だもん」
このツイートを書いたジャスティンは、アメリカのスタンドアップコメディアンが使う自嘲のテクニックで「愚かな白人の発想」を嘲笑うつもりでしたが、大炎上しました。
エイズは黒人やゲイがかかる病気だと思い込んでいる差別的な白人はまだまだ多かったので、それを揶揄したのですが、そうとは受け止めてもらえませんでした。
もちろん、彼女に非はありましたが、批判のツイートが広まり、次にその炎上を娯楽として喜ぶ人たちが現れます。
「ジャスティンが解雇される瞬間をリアルタイムで見られるぞ」といった悪意に満ちたツイートが溢れたのです。
とはいえ、ネットで正義の味方になるのは簡単です。叩きやすい人を見つけて、正義の名の下に制裁を加えればいいのですから。
匿名のままでいれば、自分が公で処刑されるリスクを冒さずに攻撃できます。これほど鬱憤晴らしになる娯楽はないでしょう。
そもそも、他人を救う力がなくても、他人の人生を破壊するパワーは誰もが持てます。それを使う「スーパーヒーロー」たちが蔓延しているのが、ネットの世界です。
もちちん、この悪意のパワーは誰の中にも潜んでいます。気をつけないと、自分自身も正義感を振りかざして他人を破壊するスーパーヒーローになってしまうでしょう。
13. ザ・ヘイト・ユー・ギヴ
物語の主人公は16歳の少女・スター。
彼女は、低所得層が多い黒人街に住んでいましたが、裕福な白人が多い私立学校に通っていました。バスケットボールの選手で、仲が良い友達も多く、白人のボーイフレンドもいます。
しかし、近所の人と接しているときと学校とでは態度も言葉遣いも異なっていました。本当の自分を押さえ込む必要があるというプレッシャーがあったからです。
スターは12歳の時に両親から、
「警察が何を言っても、そのとおりにしなければいけないよ。両手は常に警官から見えるところに置いておかなければならない。いきなり動いてはいけない。あちらが質問してきたときに答える以外には話しかけてはいけない」
と言われていました。黒人というだけで差別されていたのです。
実際、同級生で黒人のカリルに車で家に送ってもらう途中、警官に呼び止められ、カリルが「僕がいったい何をしたんだい?」と反論しただけで銃で撃ち殺されました。
この小説を読むと、アメリカに黒人として生まれたときから毎日のように与えられる「憎しみ」が肌感覚として理解できます。
「逆差別だ」と騒ぐ人たちに読んで欲しい一冊です。
14. SHOE DOG
本書が売れたのは、これまでの成功者とは違う書き方をしているからだと言います。
この本では、ビジネスで成功するための道のりはスマートなものではなく、乱雑で、危険で、混乱に満ちた、失敗だらけの旅であり、終わりなき苦闘であり、犠牲でもあると書いているからです。
フィクションだと「やりすぎです。説得力がありません」と言われるほどの失敗物語なのです。
外からは楽そうに生きているように見えても、スムーズに成功し、幸せになっている人なんて、ほとんどいません。
成功者でも、毎日が綱渡りで、「もう駄目かもしれない」という冷や汗の連続だとわかる一冊です。
15. GREAT BOSS
アメリカのIT企業では「企業文化」という言葉が目につくようになりましたが、それは社会的な変化が影響しています。
アメリカでも1960年代から80年代は、大卒のエリートにとって「大企業就職」と「終身雇用」が常識でした。
ところが、最近の大卒エリートは、必ずしも大企業に就職したいと思わなくなり、企業への忠誠心も無くなったと言います。
一箇所に落ち着くつもりもないし、もっといい場所があれば、迷わず転職するように変わったのです。
つまり、採用した後に会社に留まってもらうには、才能を最大限に発揮してもらえるように会社側が努力しないといけない…ということです。
だからこそ、企業文化が重要であり、マネジメントが重要になっているわけですが、超優秀な人材は、従来の上司像では管理できません。
そこで、本書では、優秀な部下に対して、上司はこれまで以上に徹底的な本音で接する必要があると結論づけています。
16. 当世出会い事情
日本ではほぼ無名の存在ですが、アジズ・アンサリというアメリカの若者に大人気のコメディアンがいます。
彼が書いた本書では、インターネットによって男女の恋愛・結婚観や行動が、どれだけ変わったのかを検証しています。
たとえば、2世代前では自宅の周辺で結婚相手を見つけて、最高にハッピーではなくても、まあまあ満足して添い遂げていました。
しかし、今ではスマートフォンひとつで、数え切れないほどの「潜在的デート相手」が見つけられますよね。
そのせいで、相手により多くのものを求めるようになり、なかなか相手を決められなくなった…などと紹介している一冊です。
17. 米国人博士、大阪で主婦になる。
日本人男性とアジア人女性、白人男性と日本人女性の結婚はよく取り上げられますが、本書では、日本人男性と白人女性の結婚を取り上げている珍しい一冊です。
著者は、ボストン郊外の裕福な家庭で育ったトレイシー。
彼女は、男性に頼らずに自立している自分を誇りに思い、大学で教鞭を取るかたわら、囚人相手の文章教室でボランティアを務め、ボストン周辺に作家がファンと触れ合う文芸サークルを立ち上げ、多くの友人に囲まれて充実した毎日を過ごしていました。
ところが、日本人男性と恋に落ちてしまい、大阪で「主婦」になってしまったのです。
相手の言語や文化に興味すらなかった二人が、長距離恋愛や親からの反対を乗り超えて、愛情を育んでいく物語が楽しめます。
まとめ
今回は、『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』の中から、アメリカの今を知りたい人におすすめの本17冊を紹介してきました。
私はどれも読んだことのない本ばかりだったので、この機会に読んでいきたいと思います。
気になった本が見つかった方は、ぜひ読んでみてください。
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