苦い現実に直面していませんか?
私は毎日のように苦い現実に直面していますが、古内一絵さんの小説『最高のアフタヌーンティーの作り方』を読んで励まされました。
苦い現実に直面しても、甘いお菓子を食べて前を向いて歩んでいく主人公の姿をみて、今日からもう一度頑張ってみようと思えたんですよね。
あらすじと内容紹介
「アフタヌーンティーに関わる仕事がしたい!」
そう思って老舗・桜山ホテル入社した遠山涼音は、入社7年目にしてようやく希望が叶いました。
しかし、実際にアフタヌーンティーチームに配属されると、心が折れるような毎日を過ごすことになり…という物語です。
涼音と調理班の飛鳥井達也、二人の視点で物語が展開していき、そこで働く人たちの悩みや苦しみが徐々に浮き彫りになっていきます。
そんな悩みを抱えた人たちに怒鳴られたり、裏切られても、前を向いて歩んでいく涼音の姿に励まされました。
今日からもう一度頑張ってみようと思える物語です。
ちなみに、人気シリーズ『マカン・マラン』の登場人物のひとり「クリスタ」が登場します。私は未読だったので、『マカン・マラン』も読んでみたくなりました。
『最高のアフタヌーンティーの作り方』の感想(ネタバレあり)
ここからは多少のネタバレありで感想を書いていきます。
物語の核心を突くようなネタバレは避けていますが、それでも気になる方は、本を読み終わった後に再び訪れてください。
実際にアフタヌーンティーを味わってみたくなる
ホテルでアフタヌーンティーを味わったことがありますか?
私はありませんが、この物語を読んで、実際に味わってみたくなりました。
銀色に輝く三段スタンドのお皿に盛られたマカロンやタルトレットなどの小型菓子、焼き立てのスコーンに、上品なフィンガーサイズのサンドイッチ…。
香り高い紅茶とともに提供される、エレガントで華やかな究極のおやつが魅力的に思えたからです。
また、涼音と飛鳥井達也のやりとりを通して、考え抜かれたお菓子が提供されていることがわかり、さらに食べてみたくなりました。
異動したばかりの涼音は、アフタヌーンティーチームで最高の結果を出そうと、クリスマスの企画を色々考え、分厚い企画書まで作りましたが、
調理班の飛鳥井達也と須藤秀夫にプレゼンすると、ことごとくダメ出しされました。
リキュールをたっぷりかけたプディングに、火を灯して燃え上がらせるクリスマスプディングを提案したのですが、
「そんな手間のかかることをクリスマスの繁忙期にやるわけ?」
「昼間のアフタヌーンティーでクリスマスプディングに火を灯しても綺麗には見えない」
「見かけほど美味しくない」
といった厳しい反論にあいます。
逆にいえば、実際にアフタヌーンティーで提供されるお菓子は、こうした反論を乗り越えてきているものなので、実際に味わってみたくなりました。
「普通とは何か?」と考えさせられる
念願かなってアフタヌーンティーチームに異動した涼音でしたが、現実は厳しいものでした。
分厚い企画書を書いても、まったく相手にしてもらえません。
しかし、実は、まわりの人たちも色々な悩みを抱えて苦しんでいました。
涼音に厳しく当たっていた飛鳥井達也は、英語が話せましたが、識字障害だったので読むことができませんでした。
それでも以前働いていた外資系ホテルでは、努力してパリの国際コンクールに出場できるまでの実力をつけましたが、
同僚からは「あいつは普通じゃないから」と陰口を叩かれ、現地のメディアからも作ったお菓子よりも識字障害ということばかり取り上げられたので、傷ついていたのです。
中国人の呉彗怜(ウースイリン)もそうです。
どれだけ正社員になりたいと手を挙げてもサポーター社員から抜け出すことは出来ず、
子どもが幼稚園で中国語を喋っただけで友達どころか先生から仲間外れにされていると言います。
涼音の前任者で、40歳になるまで数々のヒット作品を手がけてきた優秀なプランナーである園田香織もそうです。
彼女は、結婚して子どもが生まれたので産休を取っていましたが、義母から母乳の出の良し悪しで人格まで否定される毎日を過ごしていました。
どれだけ優秀なプランナーであっても、女性というだけで課せられる日常に心を痛めていました。
そんな人たちの姿を通して、「普通とは一体何なんだろう?」と考えさせられたんですよね。
識字障害は普通じゃない、中国人は普通じゃない、母乳の出が悪いのは普通じゃない(高齢出産なんかせずにもっと早く産め)と、普通を押しつけてくる人たちの気持ち悪さが伝わってくる物語でした。
苦い現実には甘いお菓子を食べて立ち向かおうと思える
さて、ここまで紹介してきたように、この物語では現実は厳しく、苦い思いばかりするものだと描かれていますが、だからこそ甘いお菓子が必要だと思わせてくれます。
涼音自身も、社内の接客コンテストで優勝したときに、
「あれだけ必死になったら当然だよ」
「なんだか知らないけれど、変に頑張っちゃってさ…」
といった陰口を叩かれていました。
しかし涼音は、そうして傷ついた心を甘いお菓子で癒やして、他人にはそうした行動をとらずに笑顔で接していくんですよね。
どれだけ嫌なことがあっても、人から裏切られても、「物事の美しい面を見るように心がけよう」とする涼音の姿に心が動かされました。
傷ついた心を癒してくれる物語なので、甘いお菓子と共に読んでみてはどうでしょうか。
まとめ
今回は、古内一絵さんの小説『最高のアフタヌーンティーの作り方』のあらすじと感想を紹介してきました。
以上、3つの魅力がある物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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