垣谷美雨『姑の遺品整理は、迷惑です』感想/距離感よりも大切なもの

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 人との距離感を大切にしていますか?

 私はどちらかというと、お節介焼きなので、どうしても人との距離感が近くなりすぎることがあります。それで嫌な思いもしてきたので…。

 そんな性格を嫌っていたのですが、垣谷美雨さんの小説『姑の遺品整理は、迷惑です』を読んで、お節介な性格もアリかなと思えるようになりました。なぜなら…。




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 姑の遺品整理を押し付けられたオバさんが主人公

 物語の主人公は50歳を過ぎた望登子。彼女は夫の母親、つまり姑が亡くなったので、遺品整理をするために、姑が住んでいたアパートに行きました。

 ところが、3DKの広さしかないのに想像以上に多くの荷物があるんですよね。

 布団や鍋、傘などが複数あるのはもちろんのこと、先に亡くなった舅のスーツだけでも9袋のゴミ袋が満杯になるほどあります。

 とはいえ、業者にお願いすると100万円近い費用がかかります。

 そこで望登子は、エレベーターのない4階の部屋から荷物を運び出そうとしますが、すぐに嫌になりました。

 どれだけ捨てても、まったく減った気がしないからです。

 亡くなった姑に向かって「遺品整理っていうのはね、想像しているのよりずっと重労働なんだからね!」と愚痴ってしまうほど、気が滅入りました。

 そこで、望登子は夫に手伝わそうとしますが…。

 助けになったのは夫よりも近所の人たち

 夫は役に立たないばかりか、片付けの邪魔になりました。

 なぜなら、どれも思い出の品だから捨てたくないと言い出したからです。

 これまで見向きもしなかった人形ケースやタンス、アルバムなどをすべて家に持って帰ると言うんですよね。

 そんな片付けの邪魔になる夫よりも助けになったのは、姑のご近所に住む人たちでした。

 望登子は、これまで人に頼ったことがあまりありませんでした。隣に誰が住んでいるかわからないような暮らしがあっていると思っていました。

 ものを頼めるのは身内だけだし、たとえ身内でも相手の都合や気持ちを考えて、親しき仲にも礼儀ありとするのが正しいとしてきました。

 しかし、近所の人たちは、掛け値無しの親切心で助けてくれます。その理由は…。

 遺品整理を通して姑との思い出が変わる

 姑がご近所さんを助けてきたからでした。色々とお節介を焼いてきたんですよね。

 望登子は、そんなお節介な姑が大嫌いだったのですが、遺品整理を通して姑を愛おしく思うようになります。

 つまり、人との距離感がどうであれ、相手のことを想う気持ちがあれば、巡りめぐってその想いは通じるんですよね。

 お節介で嫌われても、自分らしく相手のことを想っていこうと思える物語でした。

 ◆

 垣谷美雨さんの小説『姑の遺品整理は、迷惑です』。遺品整理の大変さがわかるだけでなく、自分らしく人と付き合っていこうと思える物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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