子ども食堂をご存じですか?
私はテレビ番組で知り、大変な子たちがいるんだなぁ…と他人事として見ていましたが、小野寺史宜さんの小説『とにもかくにもごはん』を読んで、少し身近に感じました。
子ども食堂の必要性と、運営する人たちの優しさが伝わってきて、温かい気持ちになれる物語です。
『とにもかくにもごはん』の情報
おすすめ度の理由
『とにもかくにもごはん』のあらすじ
困っている子どもたちのために何か行動していますか?
高校生の息子・航大がいる松井波子は、夫の隆大が交通事故で亡くなったことをきっかけに、近所の閉店したカフェを借りて、子ども食堂を運営するようになりました。
とはいえ、夫の遺志を継いだ…というわけではありません。
生前の夫とは上手くいっておらず、様々なことですれ違い、ぶつかり、話さなくなっていました。
授業参観も別々に行くようになり、夫は家に帰る前に公園でビールを飲むようになりました。
波子が買い物に行ったときに、たまたま夫を見つけ、後をつけてみたところ、公園でビールを飲んでいたのです。
そこで、夫になぜ家で飲まないのか?と尋ねたところ、近所に住む見ず知らずの小学3年生の男の子・エイシンくんの見張り役になればと思って、と言い出します。
エイシンくんのお母さんは仕事をしており、家の電気も止められていたので、晩ごはんを食べるには公園の方が明るいという理由で、エイシンくんが公園のベンチに座ってひとりで菓子パンを食べていたからでした。
この会話をきっかけに、少しだけ夫との関係が改善した波子でしたが、その5日後に夫が交通事故で亡くなったため、子ども食堂をやろうと思い立ったんですよね。
そんな波子が運営する子ども食堂に集まる子どもたちやボランティアの人たちの心温まる物語が楽しめる小説です。
『とにもかくにもごはん』の感想
子どもの6人に1人が貧困状態にあることをご存じですか?
そんな貧困状態の子どもたちの助けになればと思って、波子は子ども食堂を運営するようになったわけですが、「本当に助けが必要な人を呼べているのか?」「その人に上手く情報が届けられているのか?」という課題が残っていました。
貧困といっても、昔のように、住んでいるアパートがボロいわけではなく、服も汚れておらず、あざがあったりするわけでもないため、誰が本当に困っているのかわからなかったからです。
それでも波子は、自己満足で、何の解決にもならないかもしれないけれど、マイナスにはならないだろうという思いをもって、とにもかくにもご飯を提供しようと決めて行動するんですよね。
とはいえ、実際に運営するのは大変でした。
まず、ボランティアの人たちを集めるだけでも大変です。波子もぎりぎりの人数しか集められず、一人でも欠けたら運営できない状況でした。
また、大変な思いをして集めたボランティアの人たちも、大学生であれば就活に役立つから…なんて理由で参加しているので、言われたことしかやりませんでした。
さらに、子ども食堂に参加する人たちへの対応も大変です。
「名前を書いてださい」と言うと、「普通の食堂も、名前なんて書かせないでしょ」と怒り出したり、アレルギーの確認をすると、「個人情報でしょ」と文句を言ってきたり、「大人は300円です」というと、「お金とるんですね」と嫌味をいうなど、相手をしたくない人たちまでやってきます。
私なら怒鳴ってしまいそうですが、そんな人たちを前にしても、心穏やかにご飯を提供する波子の姿に心を動かされました。
では、なぜ波子はそんな人たちに対しても優しい態度がとれるのか?といえば、こんな思いでやっていたからです。
何かしてあげてるとは思わないこと。人の力になりたい。お母さんが人の力になりたいからやってる。それでいい。だから航大、もしお母さんが、やってあげてるみたいな態度を見せたら、そのときはあんたがちゃんと言ってね。
そんな波子のもとに集まる人たちが、波子の優しさに触れて、変わっていく姿が描かれていたので、温かい気持ちになれました。
他人に対して、少しだけ優しくなろうと思える物語です。
まとめ
今回は、小野寺史宜さんの小説『とにもかくにもごはん』のあらすじと感想を紹介してきました。
子ども食堂の必要性と、運営する人たちの優しさが伝わってきて、温かい気持ちになれる物語です。
気になった方はぜひ読んでみてください。
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