おすすめ度:
あらすじ
5歳のときに母に捨てられてから、1人で生きてきた邑楽風子は、先祖を探す探偵事務所を開いていました。自分のルーツを知りたいと思っていましたが、母との記憶しか頼れるものがなく、探偵をすれば手がかりが得られるかもしれないと考えたからです。そんな風子が今回依頼されたのは、111歳のひいじいさんを探して欲しいというものでした。「町おこしのために表彰したい」と市役所から連絡があったので、生きているなら会いたいと言われますが…。
さまざまな理由で自分の先祖を知りたい人たちが、先祖探偵の主人公に調査を依頼する物語です。
夏休みの課題で家族史を調べて発表するので手伝ってほしいという可愛い依頼や、先祖の霊の祟りで発作が起きるようになった甥を救って欲しいというオカルト的な依頼など、幅広い依頼内容に引き込まれました。
また、戸籍調査を通して、明かされていく意外な真相に、ちょっとした驚きも味わえました。
とはいえ、特に驚いたのは、戸籍をめぐる問題です。
戸籍を悪用すれば他人になりすませることにも驚きましたが、戸籍がはっきりしない、存在しない人たちが直面している問題(無戸籍問題)の悲惨さに衝撃を受けました。
戸籍がなければ健康保険証が持てないので、病気になっても簡単に病院に行くことができません。
また、身分証がないため、就職も難しく、結婚や出産をすることも簡単ではありません。
ラストの物語では、こうした実情を知ることができるだけでなく、子どもを想う母の姿に感動で涙がこぼれ落ちそうになりました。
先祖をめぐるミステリと、無戸籍問題に興味がある方におすすめの小説です。
コメント