子どもに「勉強しなさい!」といって、ドリル学習を押し付けていませんか?
私はドリル学習だけを繰り返す勉強にはあまり意味がないと思っていますが、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んで、確信に変わりました。
ドリル学習の先にあるマニュアル化しやすい、決められたルールに従う仕事は、AIが得意とする作業なんですよね。
AIには不得意な能力がある
以前、一部の人たちが、「十数年後には、ほとんどの仕事がAIに置き換わる!」といって騒いでいましたが、
AIやAIを搭載したロボットが、人間の仕事をすべて肩代わりする…という未来は、しばらくやってきそうにありません。
なぜなら、AIがコンピュータ上で実現されるソフトウェアである限り、人間の活動のすべてが数式で表現できなければ、人間に取って代わることができないからです。
私もAIを活用した開発をしているので実感していますが、数学には限界があります。
数学で出来ることは、大きく「論理」「確率」「統計」の3つで、私たちの知能の中でこれらに置き換えられるものしかAIは計算することができません。
たとえば、「私はあなたが好きだ」と「私はカレーが好きだ」の本質的な意味の違いを数式で表すのは非常にハードルが高い問題です。
そこで、多くの研究者はAIが意味がわかっているかのように振る舞う方法を模索してきました。
文章の意味はわからなくても、その文章に出てくる既知の単語とその組み合わせから統計的に推測して、正しそうな回答を導き出す方法を生み出したんですよね。
つまり、AIには意味を理解する能力がないということです。
その一方で、マニュアル化しやすい、決められたルールに従って作業すればいい仕事は、数式に落としやすいので得意です。
実際、オックスフォード大学の研究チームよると、事務系の仕事の多くはAIに取って代わられると予測しています。
その規模は、全職業の約半数であり、全雇用者の約47%もの人が職を奪われるといいます。
このように、効率化できることは、どんどんAIに置き換わっていくので、私たち人間は、効率的に働いて、非効率なことに時間や情熱を注ぐ必要があります。
人間も非効率なこと(効率化できないこと)が苦手
とはいえ、私たち人間もAIと同じように非効率なこと(効率化できないこと)が苦手です。
たとえば、読解力。
学力中位の高校でも、半数以上の生徒が教科書や新聞に書かれている内容を正しく理解できていないことがわかりました。
次の問題を解いてみてください。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性のAlexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
以下の空欄に当てはまる最も適当なものを選択肢から1つ選びなさい。
Alexandraの愛称は( )である。
①Alex ②Alexander ③男性 ④女性
正解は「①」です。
それほど難しい問題ではありませんが、半数近い中高生がこの問題を間違えました。
そして、読解力と進学できる学校の偏差値との相関が極めて高いこともわかりました。
もちろん、偏差値が全てだとは言いませんが、読解力がなければ、進学できる学校の選択肢が狭まることは明らかです。
また、仕事に置き換えても、非効率な仕事ほど読解力が求められます。
私がやっている先行開発の仕事でも、多くの専門書や論文を読んで、そこに自分の工夫を加えて、プログラムに落とし込む必要があります。
このとき、文章を読み間違えて実装すれば、思うような結果には決して辿り着けません。
オックスフォード大学の研究チームの結果でも、心理学者や栄養士、セールスエンジニアなど、コミュニケーション能力や理解力が求められる仕事は、AIに取って代わられないと予測しています。
これはAIが苦手としている読解力と常識、加えて人間らしい柔軟な判断が要求される分野です。
このように、私たち人間は、AIが苦手とする非効率なことに挑戦する必要があるにも関わらず、非効率なことが苦手という矛盾を抱えているのです。
読解力を鍛えて非効率なことに挑戦できる下地をつくろう
ここまで紹介してきたように、AIが労働市場に参入してきたとき、私たちはAIが苦手とする非効率なことに挑戦する必要に迫られます。
読解力を身につけ、新しい知識を吸収し、自分のアタマで考えて、それを現実世界で仕事としてアウトプットする必要があるのですが、
子どもにとっては、その取っ掛かりともいえる読解力を鍛えることが大切です。
では、読解力はどうやって鍛えればいいのでしょうか。
実は、「読書量」や「学習習慣」と、「読解力」との間に相関が見出せないことが研究結果で明らかになっています。
その一方で、読解力がない人には次のような傾向があることもわかりました。
- ドリルに頼りすぎの勉強をしている
- わからない単語があると読み飛ばしてしまう
- 記述に矛盾があっても活字になっていると信じてしまう
つまり、読書量が大切なのではなく、精読、深読することが大切なんですよね。
私も実践していますが、本を読んで理解した内容を、感想文としてアウトプットすることが読解力を鍛えるのに役立つように思います。
ぜひ、本を読んだら自分のアタマで考えるクセをつけましょう。
まとめ
今回は、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を参考に、AIに仕事を奪われない子どもに育てる方法について考えてきました。
「子どもが勉強が苦手で…」「非効率なことができなくて…」と悩んでいる方は、まずは読解力を鍛えるように促してみてはどうでしょうか。
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