『100円のコーラを1000円で売る方法』という本をご存知ですか?
100円のコーラでも、ザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルで提供すると、1000円でも納得して購入する人たちがいるという驚きの内容が書かれている本です。
私はこの本を読んだとき、中身が同じでも、雰囲気を変えるだけで、価値が10倍以上も跳ね上がる現実に衝撃を受けました。
雰囲気に影響されるなんてバカみたいと思ったからですが、よくよく考えてみると、私も人を内面ではなく、ステータスや外見で判断してきたことに気づいたんですよね。
ブサイクというだけで見下される主人公の物語
西加奈子さんの小説『きりこについて』を読みました。
この小説では、あり得ないほどブサイクな顔で生まれてきた主人公のきりこが、他人から見下されても、自分らしく生きていく姿が描かれています。
とはいえ、きりこは、生まれたときから他人から見下されていたわけではありませんでした。
ある出来事に遭遇するまでは、自分が特別可愛い人間だと思って、わがまま放題に振る舞っていたのです。
なぜなら、両親から「可愛い!」と言われ続けて育ってきたからです。
また、自分が可愛いと信じて疑わないきりこの姿を見て、周りの子どもたちも、彼女の言うことに従っていたからです。
ところが、小学五年生のときに、好きになった男の子に「ぶす」と言われたことで世界が一変します。
この日を境に、これまできりこに従ってきた子どもたちは、彼女を見下した目で見るようなりました。
こうして、きりこは引きこもりになるほど傷つきましたが…という物語が描かれている小説です。
私はこの物語を読みながら、冒頭で紹介した『100円のコーラを1000円で売る方法』を思い出しました。
きりこは何ひとつ変わっていないのに、ブサイクというレッテルが貼られただけで、他人から見下される姿が描かれていたからです。
本のタイトルとは逆に、1000円の価値があると思われていたきりこが、ブサイクというだけで100円の価値に落とされてしまうんですよね。
子どもなので容赦ないということもあるのでしょうが、これは大人になっても同じです。
自分らしく生きるにはどうすればいいのか?
きりこはブサイクというだけで、突然評価が大幅に下がりました。
こういうことを書くと、フェミニストの人達から、「女性を容姿で判断するなんてありえない!」とお叱りを受けるかもしれませんが、残念ながら男性も女性から似たような評価をされています。
中学生や高校生までは、足が速い、ハンサム、喧嘩が強い男の子に人気が集まりますが、結婚を考える時期がくると、多くの女性はブサイクでも、お金がある男性に群がります。
ある意味では男性の方が素直なのかもしれません。年をとっても「可愛い」の一点張りで女性を見ているのですから…。
このように、誰もが外見やステータスで評価される世の中にあって、他人の目を気にせず、自分らしく生きるのは、難しいことのように思えます。
では、きりこはどうしたのでしょうか。
彼女は、自分と同じように傷ついている人たちのために、悪口を言われても自分らしく生きると決めて、引きこもっていた家から一歩を踏み出しました。
ブサイクとバカにされても、大好きなレースの服を着て、外の世界へと繰り出したのです。
こうして、きりこは外見ではなく、内面を見てくれる人たちに囲まれて暮らすようになりました。
つまり、外見やステータスに捉われない、精神的に成熟した人たちに囲まれることで、自分らしく生きる道を見出したんですよね。
『三国志』で超天才と言われている諸葛孔明の妻も、醜女だったと言われています。
しかし、孔明は、見た目のことは気にせず、彼女の聡明さに惹かれて結婚しました。誰に何を言われても仲睦まじく暮らしたと言われています。
このように、外見やステータスにとらわれない人たち、すなわち精神的に成熟した人たちに囲まれれば、ありのままの自分の姿をさらけだせるように思えます。
そして、そんな人たちと出会えるかどうかは、きりこのように、まずは自分から他人の目を気にせず、自分らしく振る舞うことが、はじめの一歩だと思います。
「自分らしく生きるにはどうすればいいのだろう?」と悩んでいる方は、西加奈子さんの小説『きりこについて』を読んでみてはどうでしょうか。
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