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 「恐怖管理理論」をご存知だろうか。人は恐怖や不安を感じると、無意識に安心できて楽しいものを求めてしまう――という心理学の理論である。たとえば、中学生が殺害されたニュースを見たあとに、高級車や高級腕時計のCMをみると、多くの人が身につけたい、購入したいと感じるそうだ。

 だから、テレビ局は視聴者に恐怖を与えるようなニュースを流した後、楽しそうなCMを流すのである。そして、私たちはまんまとこの罠にまってしまう。

 肩書きや羽振りの良さをアピールしてくる人にも注意が必要だ。「起業家」と名乗ったり、必要以上に高級ブランド品を身につけていたり、外食や旅行に行ったことをアピールしてくる人たちは、「権威付け」を利用している可能性が高いからだ。

 「権威付け」とは、自分をよく見せることで、自分のいうこと、やろうとしていることを信用させようとすること。詐欺師の多くがブランド品を身につけているのもそのためである。

 カジノのチップが安っぽいプラスチック製なのにも理由がある。もし、チップではなく現金であれば大金を賭けることができるだろうか。おそらく「このお金で○○できるのでは?」と考えてしまい、賭けられないだろう。だから、カジノでは安っぽいチップで賭ける。そうすれば、見た目の違いから賭けることに抵抗がなくなるからだ。

 「マーケティングの本質は現状に不満を持たせることだ(そうすることで、商品を買わせるのだ)」と言った人がいるそうだが、これまで説明してきたように、私たちをとりまく環境は善意であれ、悪意であれ、絶えず私たちを騙そうとしている。

 しかし――。私たちが最も騙されてはいけない相手は他人ではない。自分自身である。

 たとえば、私たちは何も楽しいことがなくても、つくり笑いをすれば楽しい気分になれる。フランスの哲学者・アランは「幸福だから笑うのではない。笑うから幸福なのだ」と言ったそうだが、まさにその通り。

 では、なぜ「つくり笑い」をするだけで、楽しい気分になれるのだろうか。それは、笑顔をつくることで顔の筋肉が刺激され、脳の記憶に働きかけるからだ。脳が「この筋肉が動いたときには楽しかった」という記憶を思い出し、ストレスを低下させるホルモンを分泌するよう指令するからである。

 このように、私たちはほんの少しの刺激でも自分を騙すことができる。それなら、強く思い込めば自分を騙すなんて簡単なことだ。たとえば、転職したことで成果が出なくなったときには:

「この仕事にはどうせたいした価値なんてない」
「転職してすぐに成果を出すなんて無理に決まっている」
「みんなそうじゃないか」

――と考えるかもしれない。もちろん、これらはすべて思い込み。本来、感じるべき「悔しさ」や「敗北感」を紛らわせるためにそう思い込んでいるに過ぎない。ちなみに、 心理学ではそれぞれ次のような言葉で呼ばれている。

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「すっぱい葡萄」:手に入らないものをけなす
「セルフ・ハンディキャッピング」:自分は不利な状況にあると言い訳する
「確証バイアス」:自分の思い込みと一致した情報ばかりを集める

 しかし、このような心理メカニズムで自分を騙し、自分を守ろうとすればするほど、現状以上の未来は望めなくなる。ほとほどで大丈夫だと自分に言い聞かせ、成長の機会を放棄してしまうからだ。だけど――、そんなことをしていてはリストラなどの突然の外的要因を乗り越えることができなくなってしまう。

 では、どうすれば自分を騙さずにいられるのだろうか。その方法は次の2つ。

  • 意識的に第三者に意見を求める
  • 強制的に外圧を受ける

 ビジネスの世界で「反対してくれる人の意見が大切だ」といわれているのは、自覚がないまま「すっぱい葡萄」や「確証バイアス」などの罠にはまったとき、そこから抜け出すキッカケになるからだ。だから、論理的な批判はどんどん聞き入れるようにしていくべきである。

 とはいえ、「批判的な意見など聞き入れたくない」という人もいるだろう。そんな人は強制的に外圧を受けるしかない。リストラなどの辛い現実に直面してはじめて自分を騙していたのだと気づくしかない。

 さて、私たちは他人に騙されないように警戒していても、自分に対しては無頓着でいることが多い。その結果、「すっぱい葡萄」や「確証バイアス」などの罠にはまり、「自分が正しい」と思い込んでしまう。これでは現実をありのままに受け入れることなどできない。

 だからこそ、私たちは「他人の意見」を聞く必要がある。もちろん、論理的な意見以外は聞く必要などないが、論理的な意見も無視しているようなら――、いつか痛い目をみることになるだろう。

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