丸山正樹『ワンダフル・ライフ』は誰もが障害者を異物として扱っていることがわかる物語

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障害者を異物として扱っていませんか?

私はそんなことはないと思っていましたが、

丸山正樹さんの小説『ワンダフル・ライフ』を読んで、誰もが知らず知らずのうちに障害者を異物として扱っていることに気づきました。

どれだけ良い言葉を並べても、異物として扱っていれば、悪い言葉を並べているのと大差ないんですよね。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 頸髄損傷者である妻の介護をする主人公の物語に興味がある人
  • 障害者をテーマにした4つの男女の物語を読んでみたい人
  • 誰もが障害者を異物として扱っている理由を知りたい人
  • 丸山正樹さんの小説が好きな人
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あらすじ:頸髄損傷者である妻の介護をする主人公の物語

物語の主人公は、頸髄損傷者である妻の介護をする「わたし」。

わたしの妻は、全身麻痺の他に、体温調整ができない、起立性低血圧を起こしやすい、排便機能に障害があるなど、さまざまな問題を抱えていましたが、

排便などの処理を全てわたしにさせていました。

障害者福祉制度における「重度訪問介護」の支援を受けていたので、ヘルパーさんが来ていたのにも関わらずです。

しかも、そうして妻の介護に励んでいたわたしに、妻はありがとうの一言もいいませんでした。

こうして、何のために生きているのかわからなくなったわたしは、妻が寝てからあることをするようになり…。

という物語が楽しめる小説です。

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感想①:障害者をテーマにした4つの男女の物語が楽しめる

この小説では、先ほどあらすじで紹介した物語を含めて、4つの男女の物語が楽しめます。

あらすじで紹介した物語を除いて簡単に紹介していくと、

  • 設計士の一志が子供を欲しがるも、なぜか妻の摂が子供を作ることを拒否する物語
  • 職場の上司である橋詰洋治と不倫をしていた岩子が、空間デザイナーの国枝からデートに誘われる物語
  • 脳性麻痺の照本俊治が、GANCOというハンドルネームの女子大生と意気投合し、介護に来ていた裕太を自分だと偽って彼女に会わせる物語

どの物語も障害者をテーマに描かれているんですよね。

伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』では、目が見えない人とも対等に付き合っているか?と問いかけてくる物語が描かれていましたが、

誰とでも対等に付き合ってる?/伊坂幸太郎『チルドレン』感想
誰とでも対等に付き合っていますか? 私は誰とでも対等に付き合っているつもりでしたが…。伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』を読んで反省しました。 自分より能力が劣っていると思っている人たちに対して、上から目線で接していることに気づ...

この小説では、障害者をテーマにした最後につながっていく4つの物語が楽しめました。

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感想②:偏った意見の人たちは異なる意見を徹底的に叩く

先ほど紹介した脳性麻痺の照本俊治が、GANCOというハンドルネームの女子大生と意気投合する物語では、

偏った意見を発言する人たちが、自分たちの意見と異なる人を寄ってたかって叩く姿が描かれています。

GANCOは、障害者のボランティアたちが、普段は口に出せない介助対象者への不満を吐き出す掲示板で、

「見返りを求めるのはボランティアの趣旨に反するのではありませんか?」

と書き込み、偽善者だと叩かれていました。

その一方で、障害者ボランティアたちが、障害者が描いた絵や詩を絶賛しあう掲示板では、

「この絵の良さがわかりません。子どものいたずら描きと、この絵の違いは何なのか。誰か私に教えてください」

と書き込んだので、言いがかりみたいな書き込みはやめてくださいなどと、こちらでも叩かれていました。

つまり、障害者をけなす人たちも、褒めたたえる人たちも、自分たちとは異なる意見を排除しようとしていたんですよね。

村田沙耶香さんの小説『地球星人』では、異なる考えを受け入れる心の余裕を持ちたいと思える物語が楽しめましたが、

村田沙耶香『地球星人』は異なる考えを受け入れる心の余裕を持ちたいと思える物語
自分とは異なる考えを受け入れようとしていますか? 私は出来るだけ受け入れようとしていますが、 村田沙耶香さんの小説『地球星人』を読んで、今後もその努力が必要だということが改めてわかりました。 そうしないと、生きていくのがツ...

この小説では、偏った意見を持つ人たちが、自分たちの意見と異なる人を徹底的に叩こうとする姿が描かれていたので、悲しくなりました。

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感想③:誰もが障害者を異物として扱っている

さて、この小説では、意図する、しないに関わらず、誰もが障害者を異物として扱う姿が描かれています。

先ほどのGANCOを叩く人たちもそうですが、誰もが知らず知らずのうちにそうした行動をとっているんですよね。

たとえば、設計士である一志は、先輩社員が設計したレストランに行って、座り心地の悪い椅子に違和感を覚えました。

その設計をした先輩に尋ねたところ、回転率を上げるために、わざと座り心地を悪くしていることがわかります。

さらに、その話を元会社の同僚にしたところ、排除アートだと言われました。

公園のベンチに仕切りがあったり、背もたれが直角になっているのは、ホームレスがベンチで寝そべれなくするためであり、

駅前や公共施設の周辺にある小洒落たオブジェクトは、ホームレスだけでなく、子供がスケボーなどで遊べないようにするためだと言います。

そのせいで、車椅子の人やお年寄りが歩きにくくなっていますが、こうした対応に反対する人はほとんどいません。

つまり、私たちは誰かの意図した排除を知らず知らずのうちに受け入れているのです。

もちろん、これは間接的ですが、この小説に書かれているように、

  • 脳性麻痺者に恋心を抱けるか?
  • 生まれる子供がダウン症だとわかったので養子に出すのは許される行為なのか?
  • ダウン症の子供を養子として受け入れられるか?
  • セクハラをしても障害者なら受け入れるべきなのか?

という直接的な疑問に対する答えを考えると、誰もが障害者を異物として扱っていることに気づきます。

ソン・ウォンピョンさんの小説『アーモンド』では、自分とは違う振る舞いをする人を排除したがる人たちの姿が描かれていましたが、

ソン・ウォンピョン『アーモンド』は愛情を注げばどんな人でも変わっていけることがわかる物語
他人に共感していますか? 私は共感力がある方だと思っていましたが、 ソン・ウォンピョンさんの小説『アーモンド』を読んで、本物の共感力を持っている人はほとんどいないことに気づきました。 それだけでなく、愛情を持って接すれば、...

この小説では、誰もが知らず知らずのうちに障害者を排除しようとするか、無理に受け入れようとしている姿が描かれていたので、心が痛みました。

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まとめ

今回は、丸山正樹さんの小説『ワンダフル・ライフ』のあらすじと感想を紹介してきました。

誰もが障害者を異物として扱っていることに気づける物語が描かれているので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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