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 私たち人間の三大欲求は、「食欲」と「睡眠欲」、そして「性欲」だと言われています。しかし、この三大欲求を上回る「知識欲」を持っている人たちがいるんですよね。

 三浦しをんさんの小説『愛なき世界』に登場する人たちもそのひとり。想像を絶する知識欲に衝撃を受けます。

 私も知識欲は強い方ですが…。彼らの知識欲には太刀打ちできなさそうです。

 植物に人生を捧げる人たちの物語

 物語の主人公は、「円福亭」という洋食屋で働く藤丸陽太。彼は円福亭の味に惚れ込み、数年越しで従業員になりました。

 だからこそ、藤丸は、大将の円谷に認めてもらえる料理人になろうと必死で働きます。浮いた話など全くありませんでした。

 ところが、T大学に通う本村という女性に出会い、恋心を抱くようになるんですよね。研究熱心な彼女の姿を見て、これまで出会った人たちと違う人種の彼女に興味を持ったからです。

 しかし、大将は、彼女の邪魔をしてはいけないと言います。

 なぜなら、彼女は一部のチャラついた要領のいい研究者ではなかったからです。真面目に研究に取り組み、厳しい世界で戦っていました。

 女性研究者の多くは、結婚や出産、旦那の転勤などで研究を中断せざるを得なくなります。

 だからこそ、大将は彼女の邪魔をしてはいけないと忠告したのですが…。

 愛なき世界に生きる女性

 藤丸は本村が好きで仕方なくなり告白をします。残念ながら断られますが、その理由は彼の想像とはかけ離れたものでした。

 本村は、藤丸に魅力がないから断ったのではなく、誰とも付き合わないというのです。愛のない世界を生きる植物の研究に、すべてを捧げると決めていると言います。

 たしかに、本村はファッションに無頓着でした。化粧をしないのは当たり前で、普段も植物の柄がプリントされたTシャツを着ています。

 それだけでなく、料理や洗濯、インテリアなどにも興味がなく、ひたすら研究に励む毎日を過ごしていました。

 また、交際のどこにわくわくするポイントがあるのかわかりません。それよりも研究の方がわくわくします。徹夜でセミナーの準備をするほど研究に夢中になっていました。

 だからこそ、本村は「自分は愛のない世界に生きる住人だ」と言うのですが…。

 誰もが愛情をもって生きている

 藤丸はそうではないと言います。人間を愛するのと同じように、植物にすべての愛情を注いでいると伝えます。

 そんな彼らの恋の行方は…。

 実際に本書を読んでもらうとして、三浦しをんさんの小説『愛なき世界』は、研究に励む本村たちの姿に、自分も必死に仕事に打ち込もうと思える物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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