辻堂ゆめ『いなくなった私へ』は自分を認識してもらえない恐ろしさがわかるミステリー小説

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誰からも「私」を認識してもらえなくなったらどうしますか?

私は妻や子供たちが大好きなので、生きる意味を見失ってしまいそうですが、

辻堂ゆめさんの小説『いなくなった私へ』の主人公は違いました。

誰からも認識されなくなっても、仲間たちと一緒に、新たな一歩を踏み出すんですよね。

おすすめ度:4.5

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こんな人におすすめ

  • 誰からも認識してもらえない恐怖を味わってみたい人
  • 謎解きが楽しめるミステリーが好きな人
  • 苦難を乗り越えていく主人公の物語が好きな人
  • 最後に驚きと感動が味わえる物語が好きな人
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あらすじ:誰からも認識されなくなった有名人の物語

物語の主人公は、超有名シンガーソングライターの上条梨乃。

彼女はある日、目が覚めると裏通りのゴミ捨て場に寝転がっていましたが、

昨日の夜にマネージャーの車で家まで送ってもらった後の記憶がなく、なぜここにいるのかわかりませんでした。

とにかく、絡んできた酔っ払いたちを振り切り、急いで表通りに移動したところ、

電光掲示板に「上条梨乃自殺」という文字が流れてくるのを目にします。

「どうして?」と思った彼女でしたが、街で歩いている何人かに声をかけても、誰からも上条梨乃だと認識してもらえませんでした。

そんななか、街中で出会った佐伯優斗という男子大学生だけが上条梨乃だと認識してくれます。

そこで梨乃は優斗に事情を説明したところ、優斗の姉である佐伯なつみの家に泊めてもらえることになりました。

生活できる場所を確保した梨乃は、次にかつて所属していた事務所で、事務のアルバイトをすることにします。

生計を立てるためと、自分が誰からも認識されなくなった理由がつかめるかもしれないと思ったからです。

こうして梨乃は新たな生活への第一歩を踏み出しましたが…。という物語が楽しめます。

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感想①:他人から認識されなくなるという設定が面白い

私はこれまで多くのミステリーやSFを読んできましたが、

「私」が突然、誰からも認識されなくなるという設定は、あまりなかったように思います。

この設定に近い物語を思いつくままに挙げてみると、

たとえば、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、主人公のマーティが過去に戻ることで、親にも親友にも認識されなくなるという状況に陥りましたが、

それは過去に戻ったからであって、原因がはっきりしています。

それほど悩まずに現状を受け入れることができますよね。

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また、映画『君の名は。』のように、他人と入れ替わることで、まったく別人として認識されるケースもありますが、

入れ替わった相手がこれまで築いてきた関係を受け継ぐことができるので、驚きはあるものの、普通に生活することができます。

そもそも、『君の名は。』では、入れ替わった二人が「奇妙な夢をみた」くらいの感覚なので、切迫感はありません。

漫画『進撃の巨人』もある意味ではそうかもしれません。

主人公のエレンが巨人に喰われた後、突然、自ら巨人化し、まわりにいる巨人たちを倒していきますが、

巨人化した記憶がないエレンは、元の姿に戻ったときに周りの反応に驚きました。

なぜ自分に銃が向けられているのか、化け物扱いされているのかを認識できなかったんですよね。

とはいえ、エレンは自分に向かって銃弾が発砲されると、一部の記憶を取り戻し、巨人になったことを思い出しました。

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もちろん、私が知らないだけで、他にもよく似た設定の物語はあるのかもしれませんが、

突然目が覚めると、親や友達、仕事仲間からも自分が認識されなくなり、お金もないので、これからどうしよう…

という切迫した状況に陥る主人公の物語が珍しく、一気に惹きつけられました。

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感想②:優斗という男子大学生の正体が気になる

先ほども紹介したように、誰からも認識されなくなった梨乃を優斗という男子大学生だけが認識します。

優斗は大学でバンドをしており、そのバンド仲間と一緒に梨乃を目撃したのですが、

本人を前にして彼女の話題をしても、彼女が梨乃だとは誰も気づきませんでした。

つまり、他の人には別人に映っているのに、なぜか優斗だけが、これまでとは変わらない梨乃の姿を捉えていたんですよね。

漫画『100万の命の上に俺は立っている』と同じように、梨乃と優斗がパラレルワールドに入り込んだのか…。

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とはいえ、梨乃が亡くなったと世間が認識しているだけで、それ以外はこれまでと同じ世界が続いているので、パラレルワールドと現実世界が入り混じった世界に入り込んだのか…。

などなど、なぜ優斗だけが彼女を認識できるのか?という謎が気になって仕方ありません。

また、物語としては、梨乃が自宅マンションから飛び降りたときに、道路に飛び出て車に轢き殺されたと報道されていた小学生の「いっくん」が加わります。

いっくんも梨乃と似たような状況に陥っており、しかもいっくんには梨乃が認識できるので、謎が一気に深まります。

この謎が気になってページをめくる手が止まらなくなるんですよね。

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感想③:苦難を乗り越えて新たな一歩を踏み出す主人公たちに感動

こうして誰からも認識されなくなった梨乃といっくん、そして彼らを唯一認識できる優斗が、

  • なぜ自分が認識されなくなったのか?
  • なぜ自分だけが認識できるようになったのか?

という謎と向き合い、その理由を追い求めていくのですが、数々の困難を乗り越えて彼らが手にした結末に感動できる物語でした。

この物語を読み終わった今、改めて振り返ってみると、自分という存在は、他人に認識されてはじめて存在することに気づけます。

どれだけ「私はここに存在するよ!」と叫んだところで、認識してもらえなければ、存在しないのと同じなんですよね。

どれだけブログを書いても、誰にも読んでもらえなければ、存在していないの同じ…という感覚に似ているのかもしれません。

もっと言えば、私たちは誰かに存在を認めてもらいたくて行動しているのかもしれませんね。

私がブログを書き続けているのも、心のどこかで「私の存在」を認めて欲しいと思っているからかもしれません。

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まとめ

今回は、辻堂ゆめさんの小説『いなくなった私へ』のあらすじと感想を紹介してきました。

2014年の『このミステリーがすごい!』大賞で優秀賞を取った作品だけあって、ページをめくる手がとまらなくなる物語です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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