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(※『ホワイトラビット』表紙より)


 ワクワクしていますか。

 私は最近ワクワクしていないなぁ…と思っていたのですが、伊坂幸太郎さんの小説『ホワイトラビット』を読んでワクワクと驚きがとまらなくなりました。想像を上回る展開にページをめくる手も止まらなくなったんですよね。もしかすると、伊坂さんの作品の中で一番好きな物語かも。

 そこで今回はワクワクと驚きを味わいたい人にぜひ読んでほしい小説『ホワイトラビット』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『ホワイトラビット』のあらすじ

 誘拐をビジネスとして成立させた極悪非道の天才・稲葉。そんな・稲葉の下で働いている兎田は、まさか自分の妻・綿子ちゃんが誘拐されるとは思ってもいませんでした。

 一方、別の場所では、泥棒の黒澤が間抜けな同業者・中村と今村から盗みをして欲しいと依頼されていました。老人をカモにする詐欺師から名簿を盗み出し、被害者のおばあちゃんを安心させたいと言うのです。

 兎田は綿子ちゃんを救うために、黒澤は同業者の頼みを断りきれずに仕方なく立ち上がりますが、この一見関わりのない二つの出来事が、後に誰もその名で呼ばない籠城事件――ホワイトラビット事件へと発展していきます。

 次々と登場する怪しい人物、そして次々と起こる意外な出来事にワクワクと驚きがとまらなくなる物語です。

 『ホワイトラビット』のおすすめポイント

1. 作者が絶妙なタイミングで割り込んでくる

 『レ・ミゼラブル』をご存知ですか。映画化もされている有名な物語なので、なんとなくストーリーをご存知の方も多いでしょう。

 しかし、この物語。小説版では、急に作者が「これは作者の特権だから、ここで話を戻そう」とか、「ずっとあとに出てくるはずの頁のために、ひとつ断っておかねばならない」などと、妙にしゃしゃり出てくるそうです。

 そして、『ホワイトラビット』は、この手法を踏襲して書かれているんですよね。

 はじめは戸惑うかもしれませんが、慣れてくるとこの割り込みが物語をより一層面白くしてくれます。ユーモア溢れる物語なのに、作者が真面目な言葉を使ってしゃしゃり出てくるからでしょうか。

 とにかく、あまりの面白さに『レ・ミゼラブル』まで読んでみたくなります。

2. 個性あふれる登場人物たちが魅力的

 綿子ちゃんを誘拐された兎田は、普段は誘拐する側の人間で、多くの人たちを恐怖に陥れていました。しかし、家に帰ると、綿子ちゃんに赤ちゃん言葉で話しかけ、イチャイチャするのが楽しみで仕方ありません。

 コンサルタントをしている折尾豊は、いつもオリオン座の話ばかりしている小太りの男性。どんな話にもオリオン座をこじつけるので、みなから嫌われていましたが、なぜかやばいグループの経理の女性を唆して大金を奪うことに成功。今は行方不明になっています。

 宮城県警本部の特殊捜査班SITで課長をしている夏之目は、妻と娘を交通事故で亡くし、心の中が空っぽになっていました。それでも表面上は、これまで通り課長としての任務に励んでいます。

 籠城事件の人質になった佐藤親子は、父親(夫)から虐待を受けており、さらにある悲劇に見舞われ、人生を諦めようとしていました。ところが、籠城事件の人質になったことで、何か行動を起こそうとします。

 そして、他の伊坂作品でも活躍してきた泥棒の黒澤とその仲間たち。彼らの活躍なくして、ホワイトラビット事件は語れません。

 ――と、これほど個性豊かな登場人物たちが織りなす物語が面白くない…なんてことありえませんよね。

 ぜひ実際に読んで彼らの魅力にハマってください。

3. 強引な辻褄合わせが面白い

 この物語の最大の魅力は、不可能と思えることが可能になること。

 たとえば、ホワイトラビット事件で籠城した犯人たちは、警察とマスコミに取り囲まれ、どこにも逃げ道がありませんでした。

 しかし、それでも逃げ道を見つけ出すのが伊坂さんのすごいところ。しかも、籠城事件だけでなく、誘拐事件も、泥棒問題も、人殺し問題も、心空っぽ問題も、まとめて解決してしまうのはさすがとしか言いようがありません。多少の強引さなんて吹き飛んで、爽やかな気持ちになれるんですよね。

 物語の中盤で驚かされ、さらに終盤でもっと驚かされるので、読んでいてワクワク感がとまらなくなる物語です。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『ホワイトラビット』。読めばワクワクと驚きがとまらなくなる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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