絲山秋子『沖で待つ』は一味違う視点が楽しめる仕事をテーマにした物語

おすすめ小説

仕事をテーマにした物語はお好きですか?

私は大好きなので、小説だけでなく漫画もよく読んでいますが、

絲山秋子さんの小説『沖で待つ』は、仕事をテーマにした他の物語とは一味違う面白さが味わえました。

これまで読んできたものとは違う視点で描かれていたので、最後まで惹きつけられたんですよね。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 仕事をテーマにした物語に興味がある人
  • 他とは一味違う視点で描かれた物語を読んでみたい人
  • 詩のような物語が好きな人
  • 絲山秋子さんの小説が好きな人
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あらすじ:住宅設備機器メーカーで働く男女の物語

物語の主人公は、住宅設備機器メーカーに就職した私。

彼女は、共に福岡配属になった牧原太こと「太っちゃん」と一緒に飲みに行ったり、仕事をしたりと、楽しい日々を過ごしていました。

とはいえ、配属当初は二人とも福岡に行くのを嫌がっていたのですが、

実際に配属されてみると、食べ物は美味しく、周りの人たちも優しい人ばかりだったので、すぐに馴染みました。

だからこそ、太っちゃんは福岡に来てからますます太り、井口さんというキビキビした女性と結婚して子供をもちます。

それでも彼らは、同期として居酒屋が閉まる時間まで働き、一緒に会社で缶ビールを口にするなど、仲良く過ごしていました。

ところが、バブル崩壊とともに働き方が変わります。

さらに、二人とも福岡から離れて、私は埼玉で、太っちゃんは東京で働くことになりました。

そうして、しばらく経ったある日。

久しぶりに再会した太っちゃんから、私はあるお願いをされます。そのお願いとは…。

という物語が楽しめる小説です。

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感想①:仕事をテーマに描かれた短編集

あらすじで紹介したのは、『沖で待つ』という短編ですが、この小説は他にも2つの短編が収録されています。

それは、『勤労感謝の日』と『みなみのしまのぶんたろう』の2つですが、

これらは、どれも仕事をテーマに描かれている物語なんですよね。

仕事をテーマにした物語といえば、

漫画『課長 島耕作』のように、主人公の島耕作が出世していく姿が描かれている物語や、

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この物語は、それらとは一味違う視点で描かれています。

先ほど紹介した『沖で待つ』は、同期の男女が仕事を通じて築き上げてきた絆のようなものが描かれており、

一方の『勤労感謝』では、大企業で働く偉そうな男性に辟易する主人公の姿が描かれています。

どちらの短編も、他の物語とは一味違う切り口で描かれているので、最後まで楽しめました。

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感想②:バブル崩壊を機に働き方が大きく変わった事実がわかる

あらすじでも紹介しましたが、この物語ではバブル崩壊を機に、働き方が大きく変わった事実が描かれています。

住宅設備機器メーカーに就職した私は、バブル崩壊前まで特約店に営業を任せていましたが、

バブル崩壊後は、自分たちで新しい工務店や増改店を開拓して受注活動をする必要に迫られました。

今まで意識する必要がなかったライバル会社と、少ない受注を奪い合うようになったからです。

このように、本格的に仕事内容がチェンジしたことを、「バブル崩壊後から本当の営業という仕事を覚えた」と表現されていますが、

今を生きる私たちも、まさに新しい働き方に直面しているように思います。

コロナ禍もそのひとつですが、『スマートマシン 機械が考える時代』の感想にも書いたように、

AIやロボティクスの活躍により、私たちの仕事が奪われ、新たな仕事に就くことを余儀なくされるかもしれないからです。

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一方で、『勤労感謝』に描かれているように、バブル崩壊後も、そして今でも、「自分は凄い!」と勘違いしている大企業に勤める男性もいます。

こういった男性とお見合いすることになった主人公は、

大企業のぬるま湯に浸かって鼻くそほじっている奴に言われたかないわ。

と心の中で切り捨てますが、この男性のような「時代遅れな人間」にはなりたくないと心から思える物語です。

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感想③:大きな変化が起こらない物語

この物語は最初から最後まで驚くような出来事が起こりません。

『沖で待つ』には、ほんの少し山場はありますが、

それを除けば、特にこれといった謎も用意されておらず、淡々と日常が描かれていきます。

岸政彦さんの小説『ビニール傘』と同じように、

詩を読んでいるような雰囲気が味わえる物語と言えば、伝わるでしょうか。

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私はどちらかと言えば、オチも驚きもないこのような物語があまり好きではありませんが、この物語はなぜか最後まで惹きつけられました。

仕事をテーマにした物語だからかもしれません。

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まとめ

今回は、絲山秋子さんの小説『沖で待つ』のあらすじと感想を紹介してきました。

第134回の芥川賞を受賞した魅力的な作品なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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