小川糸『つるかめ助産院』感想/愛とは一番の悲しみを伝えられること

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 誰かを愛していますか?

 私は結婚して子供がいるので、毎日妻や子供たちを愛していますが、小川糸さんの小説『つるかめ助産院』を読んで、結婚しても相手を愛せない人がいることに気づきました。

 本当にその人のことを愛していれば、人生でいちばん悲しい出来事を話せるはずですよね。




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 突然夫に出ていかれた主人公の物語

 では、あらすじから。

 物語の主人公は小野寺まりあ。彼女の夫・小野寺くんは1ヶ月前に突然姿を消しました。

 彼は姿を消す直前に働いていたデザイン事務所に辞表を出しており、しかも携帯電話を自宅に置きっぱなしにしていたので連絡をとることができませんでした。

 そこでまりあは、彼と一緒に婚前旅行でやってきたハートのカタチをした南の島を訪れます。もしかすると小野寺くんに会えるかもしれないと期待したからです。

 しかし、その島で出会ったのは、鶴田亀子という50歳前後の女性でした。彼女はまりあに一緒にご飯でも食べていかないかと声をかけてくれます。

 そこは、つるかめ助産院という赤ちゃんを産むための施設でしたが、出産とは関係がない人たちで賑わっていました。

 長老やエミリーと呼ばれる老人たちや、パクチー嬢やサミーと呼ばれるまりあと同年代の人たち、子供たちまでもが一緒になって食事をしていたのです。

 まりあは他人と関わるのが苦手だったので断ろうとしますが、船酔いで気持ちが悪かったこともあり、胃薬でも貰おうと一緒について行ったところ…。

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 誰もが心に傷を負いながら生きている

 あまりの食事の美味しさにどんどん食べてしまうんですよね。

 海老のココナツカレー炒めや海藻オムレツ、オクラのステーキなど、どれもスーパーやコンビニで口にしてきたものとは別物だったからです。

 それだけでなく、つるかめ先生に呼ばれて診察してもらったところ、お腹の中に小野寺くんの子供が宿っていることがわかります。

 まりあは産むかどうか迷いましたが、それからしばらく助産院の手伝いをするようになって産むことを決意しました。つるかめ先生たちの優しさに触れて子供を産みたいと心から思えるようになったからです。

 ところが、彼女の心の奥底には不安が渦巻いていました。自分は誰からも愛されていない不幸な人間だと思っていたからです。

 まりあは産まれてすぐに教会に捨てられました。それからしばらくは児童養護施設で暮らしましたが、小学四年生のときに安西夫婦に引き取られます。

 そこでの暮らしは贅沢なものでしたが、安西夫婦の娘が海の事故で亡くなっていたこともあり、その身代わりとしての生活に嫌気がさしていたのです。

 私を見てほしい、愛してほしいと心の中で悲鳴をあげていたんですよね。

 そこで彼女が高校生の時に家庭教師だった小野寺くんと結婚して今に至るのですが…。彼女は自分がゴミなので、2回も捨てられたのだと心に深い傷を負っていたのです。

 この話を心を許すようになったつるかめ先生やパクチー嬢、サミーにしたところ…。

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 愛とは一番の悲しみを伝えられること

 彼らも心の奥底につらくて悲しい思いを秘めていることがわかるんですよね。

 それだけでなく、ある人から「人生で一番悲しいことってあるでしょう?それを話せるってことが、その人を愛している証拠なの」と教えられ、まりあは反省しました。

 小野寺くんに自分のことを何ひとつ話してこなかったからです。そこでまりあは…。

 この続きは実際に本書を読んでもらうとして、小川糸さんの小説『つるかめ助産院』は、愛とは一番の悲しみを相手に伝えられるほど心を開くことだとわかる物語ですが、

 それだけでなく南の島で暮らしてみたくなる物語としても、美味しいごはんが食べたくなる物語としても、生死について考えたくなる物語としても楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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