子供を大切にしていますか?
もちろん、子供が産まれない方や産まない方がいるのは知っていますが、
東野圭吾さんの小説『希望の糸』を読んで、私たちの人生における子供が占める割合の大きさに衝撃を受けました。
私にも二人の子供がいますが、彼らがいない人生なんて考えたくもないんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 加賀恭一郎シリーズが好きな人
- 子供の存在の大きさに衝撃を受ける物語を読んでみたい人
- タイトルに込められた意味を考えてみたい人
- 東野圭吾さんの小説が好きな人
あらすじ:二人の子供を地震で亡くした夫婦の物語
汐見行伸は、妻と二人の子供と楽しく過ごしていましたが、
来年の春から中学生になる娘と小学四年生になる息子が、二人で新潟にある妻の実家に帰ると言い出しました。
行伸は「まさか」と思いましたが、妻の「少しは冒険させようよ」という一言で、許すことにします。
ところが、新潟で地震が起こり、二人の子供が帰らぬ人になりました。
汐見夫妻は、その日から何のために生きているのかわからなくなります。
このままでは夫婦揃ってダメになると考えた行伸は、妻に新たな子供を作ろうと提案します。
妻も賛成しましたが、どれだけ不妊治療に励んでも効果は現れませんでした。
ところが、彼らの努力の甲斐あってか子供が生まれます。
彼女は萌奈と名づけられ大切に育てられましたが、
中学生になった今では、父と会話しないばかりか、食事も一緒にとらなくなりました。
なぜなら…。という物語が楽しめるミステリーです。
感想①:3つの異なる物語がひとつにつながっていく
実は、あらすじで紹介したのは、『希望の糸』で語られる物語のひとつでしかなく、
他に2つの物語が描かれていきます。残り2つの物語とは…。
料亭旅館「たつ芳」の女将・芳原亜矢子は、医師から父の命が残り少ないことを告げられました。
末期癌に侵され、いつ亡くなってもおかしくない状況です。
そんな亜矢子を、祖父母の代から付き合いのある弁護士が呼び出します。
彼は、亜矢子に父の遺言書を渡し、亡くなる前にお父さんの気持ちを知っておくのもいいだろうと言いました。
ところが、遺言状をみた亜矢子は想像もしていなかった事実を知ることになります。
松宮脩平というまったく知らない人物の名前が書かれていたからです。
ちょうどその頃、松宮脩平は、加賀恭一郎のもとで殺人事件の捜査にあたっていました。
目黒区自由が丘の喫茶店で、花塚弥生という51歳の女性がナイフで刺し殺された事件です。
しかし、まったく手掛かりが掴めません。
どれだけ聞き込みをしても、「あんな良い人はいない」と誰もが口を揃えて言うからです。
ところが、彼女は殺害される一週間前に元夫に連絡していたことがわかります。
そこで松宮は…。
という3つの物語が少しずつ進行していき、ある結末へと辿り着くんですよね。
伊坂幸太郎さんの小説『グラスホッパー』でも、3人の視点で物語が語られ、ある結末へとたどり着きましたが、

この物語でも、複数の関係なさそうな物語がひとつにつながっていく面白さが味わえます。
感想②:子供の存在の大きさが改めてわかる
あらすじでも紹介しましたが、汐見夫妻は、子供を亡くした日から、何のために生きているのかわからなくなりました。
殺された花塚弥生が元夫と別れたのも、子供ができなかったことが原因でした。
このように、『希望の糸』では、子供を失ったり、子供ができない夫婦の悲哀が描かれていますが、
他にも、生きていくうえで、子供がどれだけ大切なのかを描いた物語は多々あります。
たとえば、伊坂幸太郎さんの小説『オー!ファーザー』では、ひとりの子供に4人の父親がいるという少し変わった設定ですが、
4人の父親たちは、自分の子供かもしれない息子を助けるために命がけで行動していきます。

瀬尾まいこさんの小説『そして、バトンは渡された』では、血のつながりはなくても、娘を大切に育てる父親の姿が描かれています。

このように、多くの物語で、人生における子供の占める割合がとても大きいという事実が描かれていますが、
この物語では、松宮脩平の父も数度しか会ったことのない息子のことを思っていました。
もちろん、私も子供たちがいない人生なんて考えられません。
感想③:タイトルに込められた意味に感動
さて、この物語のタイトル『希望の糸』には、どのような意味が込められているのでしょうか。
実際に読んで確かめて欲しいと思いますが、
「たとえ会えなくても、自分にとって大切な人間と見えない糸で繋がっていると思えたら、それだけで幸せだって。その糸がどんなに長くても希望を持てるって。だから死ぬまで、その糸は離さない」
というセリフにすべての意味が込められているように思います。
最近、東野圭吾さんの小説の感想には、タイトルに込められた意味についてばかり書いているように思います。
たとえば、『新参者』や『祈りの幕が下りる時』がそうですが、


それだけ感動する物語が多く、読み終わった後に、もう一度その感動を味わいたくてタイトルの意味を考えてしまうんですよね。
また、個人的には、昔の東野圭吾さんの物語よりも、最近の物語の方が、温かさがあって惹きつけられるので、
ついついタイトルに込められた意味を考えてしまうのかもしれません。
まとめ
今回は、東野圭吾さんの小説『希望の糸』のあらすじと感想を紹介してきました。
加賀恭一郎シリーズの番外編とでも言うべき物語ですが、感動すること間違いなしのミステリーです。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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