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 本を読んでいると、たまに自分の好みとあわない物語に出会うことがあります。

 そんなとき、私は出来るだけ批判めいた内容を書かないように気をつけていますが、それでも相手を傷つけてしまうことがあるんですよね。

 もちろん、悪意ある批判なら、その効果は絶大です。

 有川浩さんの小説『シアター!2』を読めば、悪意ある批判には作品を殺す力があることがわかります。

 悪意ある批判をする人たちの根底にあるのは驕りと嫉妬

 物語の舞台は、前作に引き続き、そこそこ人気のある小劇団「シアターフラッグ」。2年間で300万円の借金を返済するために、メンバーたちが必死の頑張りを見せます。

 しかし、悪意ある批判をする人たちに邪魔されるんですよね。

 まず一人目は、劇場の支配人である望田。彼は劇場を貸して欲しければ面談する必要があると言い出し、シアターフラッグの悪口を次々と並べていきます。

 「面白いだけでは評価できない」なんて客や演者よりも自分の方が芝居に詳しいと思い込み、上から目線で評価します。

 そんな驕り高ぶった望田にブチ切れたせいで、劇場を貸してもらえなくなりますが…。

 実は、望田はまだマシな方で、もう一人の批判者は徹底した悪意をぶつけてきました。嫉妬に任せて批判を繰り返します。

 匿名の悪意ある批判は粘着的で救いようがない

 その人物は、匿名でブログのコメントに批判を書き込みました。

 たとえば、声優である羽田千歳がシアターフラッグに参加したことについて、

有名な声優が入団したと聞いたので観ましたが、しょせん…(苦笑)という感じでした。

素直にアニメの世界にこもってればちやほやされたんでしょうに、何を勘違いして演劇の世界に入って来たんだか。

物販でも羽田千歳に売り子をさせたり、下品な商業主義にがっかりです。羽田千歳が出るならもうシアターフラッグはみません。

 なんて悪意のある批判を書き込みます。しかも、消しても消しても何度も何度も…。

 こうした批判の裏にはドロドロした嫉妬が渦巻いているので、春川司も「頭のおかしい奴が騒いでいるだけだから、傷つく必要はない」と言いますが、実際には傷ついてしまいますよね。

 現実でも、作品について多くの批判を浴びせられた作者の有川浩さんが…。

 『シアター!3』は書かないと宣言

私は心無い言い方で求められることが多かった『シアター!』を完結させることを現状で断念しました。
読者さんの声は、一つの作品を殺すことができるのです。
クリエイターの心を殺すことができるのです。

 と以下のブログで書かれているように、続編を書くことはないと宣言されています。

 本当に面白い作品だけに続編が読めないのが残念で仕方ありませんが、悪意ある批判をすれば必ず痛い目を見るというのも道理のように思えて仕方ありません。

 ◆

 有川浩さんの小説『シアター!2』。本作では、登場人物のひとりひとりにスポットが当てられ、彼らの魅力が浮き彫りになります。

 本当に面白い物語なので続編が出ないのが残念ですが、それでも読む価値はあるので、気になった方はぜひ。

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