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 お金と時間って反比例の関係にありますよね。

 ある商品を作ろうとすると、お金をかければ短い時間で作れますが、少ないお金では時間をかけるしかありません。

 しかし、お金も時間もたっぷりかけてモノを作り上げる職業があるんですよね。

 そんな浮世離れした人たちを描いた小説が有川浩さんの『シアター!』です。

 芝居はお金と時間をたっぷりかけて作り上げるもの?

 物語の舞台はそこそこ人気のある小劇団「シアターフラッグ」。しかし、なぜか利益がまったく出ておらず、借金が膨れ上がっていました。

 その理由は、劇団の主宰者である春川巧にありました。彼は時間もお金も管理できない性格だったからです。

 それにもかかわらず、夢中になってシアターフラッグを運営し続けたので、借金が膨れ上がってしまったんですよね。

 とはいえ、彼がシアターフラッグにこだわるのには理由がありました。

 いじめられっ子だった巧は、小学校に通うことができず、友達もいませんでした。人形ごっこが大好きで、兄の司とばかり遊んでいました。

 そんな巧を変えてくれたのが劇団です。売れない役者だった父に連れられてやってきた劇団のワークショップで、脚本作家としての才能を発揮し、人とコミュニケーションをとる楽しさを覚えたからです。

 だからこそ、彼は借金を重ねながらもシアターフラッグを運営していたのですが…。

 お金と時間をきっちり管理する兄の登場

 巧が借金をしていた相手・兄の春川司がとうとう怒り出しました。そして、

「2年間で、劇団の収益から300万円を返せ。できない場合は劇団を潰せ」

 という厳しい条件を突きつけます。

 とはいえ、巧が時間とお金を管理できるはずがありません。シアターフラッグのメンバーも似たようなものです。

 そこで貸し出し人である司が自ら乗り出してシアターフラッグを再建しようとするんですよね。

 もちろん、課題は山積みです。しかし、お金だけでなく、人間関係でも多くの課題が浮かび上がってきました。

 プロの声優である羽田千歳がシアターフラッグに加わったことで、春川兄弟と三角関係になったり、そのせいで巧に恋をしていた劇団員が嫉妬したりと、次々と問題が発生します。

 と、この物語の結末は実際に読んでもらうとして…。

 ひとりの人間には世界を変える力がある

 ことがわかる物語です。

 もちろん、巧や劇団員たちに能力がないわけではありません。彼らにはシアターを作り上げる創造力がありました。

 しかし、お金と時間を運営する能力はありませんでした。そこに、お金と時間の法則を正しく理解している司が乗り出してきたことで、シアターフラッグは大きく変わるんですよね。

 つまり、適切な能力をもった人間が一人いるだけで、ピンチもチャンスに変えられるということです。

 ◆

 有川浩さんの小説『シアター!』。お金と時間の関係、そして色恋沙汰が面白おかしく描かれているので、気になった方はぜひ読んでみてください。

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