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 メールやSNS、ブログなどの登場によって文章を書く機会が劇的に増えていますが、そのほとんどは誰の記憶にも残らず忘れ去られてしまう運命にあります。未来にまで語り継がれる文章はほんの一握り。0.00001%もないかもしれません。では、未来にまで残る文章とはどのような文章なのでしょうか。

 明治・大正・昭和の半世紀にわたり、膨大な数の作品を書き上げ、『刺青・秘密』『春琴抄』『細雪』といった未来にまで語り継がれる代表作をもつ谷崎純一郎氏は、「文章を書く目的」について次のように述べています。

 「口で話す方は、その場で感動させることを主眼としますが、文章の方はなるたけその感銘が長く記憶されるように書くべき」

 つまり、「読者に考えさせる文章」こそが名文であり、後世まで語り継がれる文章だというのです。では、どうすればそのような文章が書けるのでしょうか。

 名文を書くために最も大切なもの

 それにはまず、どんな文章が名文で、どんな文章が悪文なのかを見分けられる必要があります。どうすればドローンが飛ばせるのかという原理を知らずに、ドローンを作ろうとしても不可能なように、どういった文章が名文なのかを知らずに名文を書くことなど不可能だからです。

 そのためには、「正しい文法を覚える」よりも、「感覚を磨け」と谷崎氏は言います。そもそも、私たちが学校で習ってきた国語というのは、非科学的な国語の構造をできるだけ科学的に、西洋流に偽装して、強いて「こうでなければダメ」という法則を作ったものだからです。

 そうしたほうが教えやすく、覚えやすいからなのですが、名文と呼ばれる文章のほとんどが文法を守っていません。なぜなら、文法に囚われてしまうと、書き手特有のリズムが崩れてしまうからです。

 私たちは文章を読むときに、眼で追いかけるだけでなく、心の中で音読していますよね。それは、眼と耳からくる感覚的な心地よさが文章の理解を助けるからです。つまり、名文には書き手特有の「心地よいリズム」が必要不可欠なんですね。

 だからこそ、私たちは「文法に囚われずに感覚を磨く必要がある」のですが、では、どうすれば「感覚を磨く」ことができるのでしょうか。

 感覚を磨くための2つのステップ

 まずは、できるだけ多くのものを繰り返し読むこと。次に、実際に自分で文章を書いてみることです。

 繰り返しになりますが、名文には書き手特有のリズムがあります。そのリズムに気づくまで繰り返し読むわけですね。そうしなければ、文章の良し悪しがわからないからです。

 たとえば、ピカソの絵をみて「私にも描けそう」という人は、複数の異なる視点から物体を捉え、ひとつのキャンパスに描画するというピカソの才能に気づいていません。だからこそ、「私にも描けそう」と思ってしまうわけですね。つまり、一定の訓練が必要になるわけです。

 そうはいっても、「文章の良し悪し」は人によって異なるのではないか、と疑問をもつ人もいるでしょう。そんな人に向けて谷崎氏は、感覚の研ぎ澄まされていない人たちでは「うまい」「まずい」は一致しないが、洗練された感覚を持っている人たちでは、みな同じような判断を下すといわれています。

 つまり、感覚というのは一定の錬磨を得た後では、同様に感じるものだということ。だからこそ、名文を繰り返し読み、書き手特有の独特のリズムを体に刻み込む必要があるのです。

 そうして、名文を体に刻み込んだあとは、実際に自分でも書いてみる。自分の文章のなかで名文のリズムを再現していくのです。もちろん、どれだけ忠実に再現しようと思ってもできないでしょう。それこそが、個性であり、自分がもっている独特のリズム。そうした文章が書けるようになれば、今よりも「読者に感銘を与える文章」が書けるようになるでしょう。

 最後に

 文章には数学のように正解がないと思いがちですが、ある程度感覚を研ぎ澄ました人たちからみれば、名文と悪文の差は一目瞭然のようです。もちろん、私の文章は悪文なのでしょうが、これから少しずつでも名文を体に刻み込み、少しでも読者に感銘が与えられる文章を書いていきたいと思います。

 そのためにも、新刊ばかり追い求めず、古典文学や小説など過去から語り継がれてきた文章にも挑戦しようと思います。そうすれば、名文に出会える確率が高まり、少しでも独特のリズムが体に刻み込めそうですからね。まずは、『戦争と平和』あたりから読んでみたいと思います。

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