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 あなたの時間は限られている。だから他人の人生を生きたりして無駄に過ごしてはいけない。

 とは、スティーブ・ジョブズの言葉ですが、この言葉どおり私たちの人生には限りがあります。そこで、本を読む必要に迫られている人たちや多くの本が読みたいと願っている人たちは、速読に挑戦しますが、高い確率で失敗します。なぜでしょうか。

 それは、「基礎知識」が身についていないから。

 たとえば、偏微分や重積分を理解していないのに、少し複雑な経済学や金融工学の本を読んでも、わかった気になるだけで得られるものは少ないですよね。ゆっくりと読んでもそうなのに、そんな状態で速読をすればどうでしょうか。さらに得られるものが少なくなると思いませんか。

 もちろん、このような難しい本であれば速読をしても意味がないことはすぐにわかりますが、出版されている多くの本は読みやすいですよね。だから、速読できてしまう。その結果、どれだけ速読をしても、得られるものが何もなかった――ということが実際に起こってしまうわけです。

 では、速読をする意味があったかどうかは、どこで判断すればいいのでしょうか。

 それは、読書で得た知識で現実が説明できるようになっているかどうか。たとえば、コミュニケーションが苦手な人がコミュニケーション関連の本を読んだとしたら、

「なぜ、これまでコミュニケーションがうまく取れなかったのか?」
「では、これからどうすればいいのか?」

 という質問に答えられるかどうかで判断できます。もし、この質問に答えられないようなら、速読するよりも熟読することで基礎知識を身に付けたほうがいい。

 元外務省主任分析官で、作家でもある佐藤優さんは、月に300冊以上の本を読まれているそうですが、そんな佐藤さんが考える基礎知識を身につける方法が次の手順です。

  1. 本を買う:基本書を3冊、または5冊選ぶ
  2. 熟読する本を選ぶ:本の真ん中のページを読んでみる
  3. 本を読む(1回目):重要な個所に線を引きながら読む
  4. 本を読む(2回目):さらに重要だと思うところに囲みをつける
  5. 読書記録をつくる:囲みの部分をノートに写す
  6. 本を読む(3回目):結論を3回読み、もう一度通読する
  7. 2冊目以降の本を読む

 それぞれ簡単に説明していくと、3冊または5冊本を買うのは、1冊の基本書だけに頼っていると、学説が偏っていた場合に、後でそれに気づいて知識を強制するのに時間と手間がかかるから。奇数の理由は、定義や見解が異なる場合に多数決をとるためです。もちろん、多数決で出した答えが正解とは限りませんが。

 本の真ん中のページを読んでみるのは、その本のいちばん弱い部分だから。本の構成として、はじめの部分は「つかみ」として、どのように読者を引き込むかという工夫がされており、最終部分の結論は、著者が最も述べたいことを書いているので、読みやすい。そこで、いちばん弱い部分である真ん中をつまみ読みすることで、その本のレベルを知ることができるからです。

 本をくりかえし読むのは知識を定着させるため。線を引いたり、囲みをつけたり、結論を3回読むのも、あくまでも知識を定着させるためです。他に好きな方法があるなら、それでもかまいません。たとえば、ブログに感想を書くのもひとつの方法ですよね。

 こうして、1冊の本を読み終えることができれば、2冊目以降を読む速度は劇的に速くなります。既知の箇所を流し読みできるからです。これこそが「速読」なんですよね。

 というわけで、土台工事をしなければ家が建たないのと同じように、基礎知識がなければ速読をしても意味がありません。ぜひ、初心に返って基本書(たとえば高校の教科書など)を熟読してみてはどうでしょうか。

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