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(※『盤上の向日葵』表紙より)


 最近、将棋をテーマにした物語が増えていますよね。

 柚月裕子さんの小説『盤上の向日葵』もそのひとつですが、物語のメインはあくまでも人間ドラマ。人物描写が秀逸なミステリー小説です。

 なかでも「因果は巡る糸車」という仏教用語がテーマになっているので、なぜ因果は巡るのか?と考えたくなるんですよね。

 そこで今回は、『盤上の向日葵』のあらすじとおすすめポイントを紹介しながら、なぜ因果は巡るのか?について考えてみたいと思います。

 『盤上の向日葵』のあらすじ

 埼玉県天木山の山中から白骨死体が発見されます。その死体は、600万円もの価値ある名駒・初代菊水月を握っていました。

 叩き上げの刑事・石破と新米刑事の佐野は、事件解決に向けて、菊水月の出所を探し求めます。

 当初、捜査は難航を極めましたが、徐々にある人物へと近づいていきました。その人物とは、実業界の寵児で天才プロ棋士の上条佳介。

 本当に上条が犯人なのか。なぜ、死体に高価な名駒を握らせたのか。そもそも死体は何者なのか――。

 これらの謎に石破と佐野が迫る!?

 『盤上の向日葵』のおすすめポイント

1. 幼少期の上条の姿に心が痛む

 物語は、石破と佐野が上条を連行しようと、天才棋士・壬生との対局場に乗り込むところから始まります。

 つまり、山中で発見された白骨死体に上条が何らかの形で関わっていることを示した上で物語がはじまるんですよね。

 そこから、過去に遡り、上条の幼い頃から現在に至るまでの過程と、石破と佐野がどのように上条に辿り着いたのか、という大きく2つの物語が交互に描かれていきます。

 このとき、上条の過去が壮絶すぎて心が痛むんですよね。

 上条は、母が自殺し、父と二人で暮らしていました。しかし、母が死んでからというもの、父は酒とギャンブルに溺れ、上条の面倒をみようとしません。

 そればかりか、食べ物も与えず、手を出す始末。まわりから非難されても「家族の問題に口を出すな!」の一点張り。

 そんな環境で育った上条でしたが、元教師の唐沢と出会い将棋の世界にのめり込んでいきます。そして、プロになれるほどの実力を発揮します。

 そこで唐沢は、上条をプロにしようとお金を援助することを提案しますが、父が原因でプロの道が閉ざされることに…。それでも上条は父を庇おうとするんですよね。

 素直で優しい上条の姿に心が痛む物語です。

2. 人物描写が上手すぎる

 『盤上の向日葵』に出て来る登場人物はとても魅力的です。なかでも「おっさん」の人物描写は秀逸。

 石破や上条の父親、元教師の唐沢、勝負師の東明重慶など、キーマンとなるおっさんがとても魅力的なんですよね。

 プロとして仕事はきっちりするけれど、どこか人格が破綻している人たち。わがままだったり、お節介焼きだったり、酒とギャンブルに依存していたり、金のためなら何でもするような人物だったり。

 そんな嫌われ者のおっさんたちを読んでいるうちに好きにさせるのは、さすがは柚木裕子さんというところでしょうか。

 なかでも、上条が再びプロを目指すきっかけになった東明重慶の人物描写が凄すぎます。

 ぜひ、実際に読んで、彼らの魅力を味わってください。

3. 「因果は巡る糸車」がテーマの物語

 この物語は、「因果は巡る糸車」という仏教用語がテーマになっています。

 これは、因果応報とよく似た言葉で、やったことは自分や子どもに返ってくるという意味を持っています。

 『盤上の向日葵』で言えば、上条が父や母から受け継いだもの、世話をしてもらった唐沢から受け継いだもの、そして勝負師の東明重慶から受け継いだものが上条の身の上に糸車のように再び起こる――そんなテーマを描いた作品です。

 では、なぜ因果は糸車のように巡るのでしょうか。

 それは、私たちが周囲の人たちの影響を色濃く受けているからだと思います。上条も父や母、唐沢や東明の生き方に影響を受けた行動をとり続けます。

 なかでもラストは、上条がまるで糸車のように彼らの動きを再現するんですよね。彼らと似たような思考・行動をするからこそ、因果は糸車のように巡るのかもしれません。

 また、ラストではタイトルに込められた意味も明らかになり、衝撃の結末が待ち受けています。ミステリー小説としても楽しめる物語です。

 ぜひ、実際に読んで物語に込められた意味と衝撃の結末を味わってください。

 最後に

 柚月裕子さんの小説『盤上の向日葵』。読めば「因果は巡る糸車」という仏教用語が描かれた世界観に切なくなること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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