webstation plus

(※『サブマリン』表紙より)


 伊坂幸太郎さんの小説『サブマリン』。

 以前、紹介した『チルドレン』の続編で、家裁調査官の陣内と武藤が無免許運転で人を轢き殺した少年の謎に迫る物語です。読めば、少年犯罪についてあれこれ考えたくなること間違いなし!?

 今回は『サブマリン』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『サブマリン』のあらすじ

 無免許運転で人を轢き殺した棚岡佑真。彼は家裁調査官の武藤と面談しますが、何を質問されても「はい」としか答えませんでした。

 そんな棚岡に悩まされていた武藤に、さらなる悩みが押し寄せます。保護観察中の小山田俊から、あるネットの殺人予告が実現する可能性が高いことを告げられたのです。

 破天荒な上司・陣内と共に、武藤はこの2つの難事件にどう挑むのか!?

 『サブマリン』のおすすめポイント

1. 陣内と武藤のやり取りが面白い

 前作『チルドレン』同様に、陣内のセリフが心に突き刺さります。たとえば、

「麻雀は四人でやる。でな、俺たちはな、見えない相手にずっと麻雀の勝負をしているようなもんだ。最初に十三枚の牌を配られて、それがどんなに悪くても、そいつで上がりを目指すしかない。運がいい奴はどんどんいい牌が来るだろうし、悪けりゃ、クズみたいなツモばっかりだ。ついてない、だとか、やってられるか、だとか言ってもな、途中でやめるわけにはいかねえんだ。どう考えても高得点にならない場合もある。けどな、できるかぎり悪くない手を目指すほかないんだよ」

 そんな陣内と武藤のやりとりが面白いんですよね。

「ええと、名前何だったか。棚ボタ君か」
「陣内さん、棚岡ですよ」
(中略)
「武藤、おまえ、奥さんから怒られないのか、細かすぎるって」
「名前を茶化すのは絶対やっちゃだめだ、ってよく言ってたじゃないですか」
「そういうことを言うのはどうせ、ろくでもない」
「昔の陣内さんですよ」

 などなど、ニヤけてしまうやり取りが満載です。

 前作では武藤の他に鴨居も陣内とやり取りしていましたが、本作では不参加。とはいえ、陣内と武藤のやり取りで十分ニヤけられます。

2. 少年犯罪との向き合い方を考えたくなる

 棚岡は無免許運転で人を轢き殺しましたが、そうなったのは彼の小学生時代の友人が関係していました。彼の友人も未成年者に車で轢き殺されていたのです。

「人を車で撥ねた奴を、撥ねたらどうして駄目なんだよ。おかしいだろ」

 この物語のテーマはこれにつきます。やられたことをやり返してはダメなのか。

 ここでもう一つの事実が語られます。棚岡の友人を撥ねた若林の話です。

 未成年で免許を取ったばかりの若林は、夜通し走るほど車にハマっていました。

 しかし、ある日。朝方、注意力が鈍ったところでよそ見運転。小学生だった棚岡の友人を撥ねてしまいます。

 この事故がきっかけで、彼は凶悪事件の加害者になりました。怪物出現の如くニュースで取り上げられ、今すぐ業火に焼かれるべきだと罵られました。

 しかし、彼は今でも事故を起こしたことを悩み続けるごく普通の青年だったのです。

 では、彼は許されるべきなのでしょうか。

 そうとも言えません。人が亡くなったのは事実です。さらに言えば、本当に反省しているかどうか見極めるのは困難です。

 そもそも、わざと事故を起こした少年もいれば、偶然が重なって事故を起こした少年もいます。その明確な線引きは誰ができるのでしょうか。

 セクハラや痴漢の冤罪問題と同じくらい難しいですよね。

 このように、『サブマリン』には少年犯罪について考えたくなる内容が満載です。ぜひ、実際に読んで少年犯罪との向き合い方について考えてみてください。

3. 物語の終盤には感動が

 そんな重苦しいテーマの『サブマリン』ですが、最後に陣内がやってくれます。そのおかげで、笑顔で読み終えることができるんですよね。

 重苦しいテーマを軽いタッチで描けるのは、さすが伊坂幸太郎さん!?

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『サブマリン』。読めば、少年犯罪についてあれこれ考えたくなる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 あわせてこちらもどうぞ。

 関連記事

理不尽な目にあったときは流れに身を任せよう/伊坂幸太郎『グラスホッパー』

(※『グラスホッパー』表紙より)  ひどくてツライ、重くてしんどい。そんな状況に追い込まれたことありませんか? ・必死になって仕事をしても上司から怒られる ・家族から理不尽に責められる ・義理の両親からいろいろ口出しされ …

東野圭吾『探偵ガリレオ』は科学的な視点で事件を解決するミステリー小説

(※『探偵ガリレオ』表紙より)  東野圭吾さんの小説『探偵ガリレオ』。  警視庁捜査一課の草薙俊平が、帝都大学理工学部の准教授・湯川学とともに科学的な視点で事件を解決していくミステリー小説です。読めば、湯川准教授に挑戦し …

若だんなに勇気づけられる!?畠中恵『うそうそ』は他人を犠牲にしても利益を得ようとする人たちを描いた小説

(※『うそうそ』表紙より)  畠中恵さんの小説『うそうそ』。  しゃばけシリーズ第5弾の本作は、相変わらず病弱な若だんなが箱根で誘拐事件、天狗の襲撃、止まらない地震などの厄介ごとに巻き込まれる物語です。  読めば、若だん …

本当の恋をしていますか?知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』は心揺さぶられる恋愛ミステリー小説

(※『崩れる脳を抱きしめて』表紙より)  知念実希人さんの小説『崩れる脳を抱きしめて』。  研修医の碓氷蒼馬(うすい そうま)が、脳に爆弾を抱える弓狩環(ゆがり たまき)と出会い、恋に落ち、そして彼女の死の謎に迫る恋愛ミ …

男性の欲望が丸裸に!?東野圭吾『恋のゴンドラ』はミステリー要素が強い恋愛小説

(※『恋のゴンドラ』表紙より)  男性の欲望とは何でしょうか。  もちろん、複数の女性と関係を持つことです。江戸城に大奥があったのも、一夫多妻制を認めている国があるのも、星の数ほど風俗店があるのも、多くの男性が複数の女性 …

病弱でも強くなれる!?畠中恵『しゃばけ』は妖怪が活躍するミステリー小説

(※『しゃばけ』表紙より)  10年ほど前に買った畠中恵さんの小説『しゃばけ』。  久しぶりに読みましたが、病弱なのに難題に立ち向かう若だんなの姿に感動しました。読めば自分も頑張ろうと思えること間違いなし!?  今回は『 …

どんなことでも逆転できる!?阿部和重&伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』は一発逆転の物語

(※『キャプテンサンダーボルト 上』表紙より)  一発逆転したいと思ったことありませんか。  私は、仕事が予定通りに進まなかったときに思っています。特に最近は一発逆転したいことばかり…。  阿部和重さんと伊坂幸太郎さんの …

犯人は誰!?米澤穂信『愚者のエンドロール』は探偵がいないミステリー小説

(※『愚者のエンドロール』表紙より)  米澤穂信さんの小説『愚者のエンドロール』。  前作『氷菓』に続く古典部シリーズ第2弾の本作は、2年F組の先輩たちが自主制作したミステリー映画の謎に迫る物語です。読めば驚きの結末が! …

伊坂幸太郎『ジャイロスコープ』はこれまでの伊坂作品とはひと味違う短編小説

(※『ジャイロスコープ』表紙より)  伊坂作品の特徴といえば、至るところに散りばめられた伏線がすべて回収されていくところですよね。  これは短編でも長編でも同じです。読了後には必ずスッキリ感が味わえます。  しかし、『ジ …

自分らしく生きるとは?柚木麻子『BUTTER』は首都圏連続不審死事件をテーマにした小説

(※『BUTTER』表紙より)  柚木麻子さんの小説『BUTTER』。  首都圏連続不審死事件をテーマに、なぜ木嶋早苗(作品内では梶井真奈子として登場)に多くの人たちが注目したのかを、その背景と共に描いた小説です。  読 …