伊吹有喜『雲を紡ぐ』は家族とは自分の好きを大切にできる場所だとわかる物語

おすすめ小説

自分の好きなことを大切にできていますか?

私は大切にできる環境で暮らしていますが、伊吹有喜さんの小説『雲を紡ぐ』を読んで、家族とは自分の好きを大切にできる場所だと改めて実感できました。

家族の再生物語としても、自分の好きを大切にしたくなる物語としても楽しめる小説なんですよね。

おすすめ度:5.0

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こんな人におすすめ

  • 家族の再生物語が好きな人
  • 今いる場所がすべてではないと思える物語を読んでみたい人
  • 自分の好きを大切にしたくなる物語に興味がある人
  • 伊吹有喜さんの小説が好きな人
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あらすじ:高校に行けなくなった主人公が祖父に会いに行く物語

物語の主人公は、高校に行けなくなって1ヶ月が経った山崎美緒。

彼女は、所属していた合唱部の打ち合わせに参加するために同じクラスの部員の家に行きましたが、

母に言われたとおりに靴下を履いていくと、足が超クサいんだよとからかわれて、脂足を指すアビーというあだ名をつけられました。

その日から、朝が来ても起きられなくなり、無理に起きると目眩がするようになります。

それでも通学しようとすると、電車の中で腹痛が起き、トイレに行きたくて仕方がなくなったので電車が怖くなりました。

こうして学校に行けなくなった美緒でしたが、母が私立中学校の教師ということもあり、学校に行けと言われます。

さらに、母方の祖母からは、強くなろう、学校に行こう、お母さんの力になってあげてね、と要求されました。

そのため、頑張って学校に行こうとした美緒でしたが、修学旅行のグループわけをすると聞いてすぐに帰ってしまいます。

ところが、家に帰ると父方の祖父からもらった大切にしていた赤いショールが母に捨てられていました。

そこで美緒は、一人で新幹線に乗って、岩手にある祖父の家に向かったところ…。

という物語が楽しめる小説です。

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感想①:子供と向き合うには強いメンタルが必要だとわかる

あらすじでも紹介したように、美緒の母・真紀と祖母は彼女に自分たちの想いをぶつけてばかりいました。

というのも、真紀自身も中学校で抱えきれないほどの問題が起こっていたからです。

家のポストに「教師失格」「タヒね」と書かれた紙が大量に入っていたり、

ネットにも「実の娘が引きこもっているのに、どの面下げて親に教育を語るのか」と書かれていました。

そこで、真紀は自分の母親を家に入れて、家事や手伝いをしてもらい、甘えていたんですよね。

一方で、父の広志も、引きこもりの娘と険しい形相の妻と会いたくないので、定時で仕事が終わってからドトールで暇つぶしをしていました。

もちろん、義母が家に入り込んでいるのも帰りたくない要因の一つでした。

このように、美緒の両親は娘のことよりも自分のことを優先していたわけですが、

辻村深月さんの小説『かがみの孤城』の感想にも書いたように、親の心が弱いと子供まで傷つけてしまうんですよね。

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親として子供と向き合えるだけの強いメンタルを持ちたいと思える物語です。

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感想②:今いる場所が人生の全てではない

こうして両親にまともに向き合ってもらえなかった美緒は、巻くと安心できる赤いショールを作ってくれた祖父がいる岩手に向かいます。

岩手について祖父と会うと、美緒はしばらくここで暮らしたいと言い、ホームスパンに興味があると言い出しました。

もちろん、職人になるほどの決意はありませんでしたが、綺麗な糸を前にして興味を持ったのです。

そこで祖父は、美緒を父の従姉である裕子に弟子入りさせます。

祖父は体調が良くなかったのと、裕子に跡を譲っていたので、週に二、三度通って勉強させることに決めたのです。

とはいえ、職人の世界は学校とは違い、甘いものではありませんでした。

授業とは違って言われなくても忘れないようにメモを取るのが当たり前で、10時と言われたら9時半には来て準備をするのが当たり前でした。

それでも美緒はホームスパンに興味を持って、前向きに取り組んでいくんですよね。

瀧羽麻子さんの小説『女神のサラダ』では、SEとして働いていた主人公が、これまで関わりのなかった農家の道を歩みだす物語が描かれていましたが、

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この小説でも、今所属している場所が全てではなく、他にいくらでも道があることを教えてくれます。

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感想③:自分の「好き」を大切にしようがテーマの物語

さて、この物語では、自分の好きを大切にしようをテーマに描かれているように思います。

美緒は、祖父の家に来たとき、自分の好きがまったくわかっていませんでした。

小学生の頃から人目が怖くなり、不機嫌な人が怖くなり、嫌われないように、いつも笑顔でいたからです。

すると、美緒には何を言っても大丈夫、怒らないと思われるようになり、きつい冗談を言われるようになりました。

この話を聞いた祖父は、

「学校へ行こうとすると腹を壊す。それほどの繊細さがある。良いも悪いもない。駄目でもない。そういう性分が自分のなかにある。ただ、それだけだ。それが許せないと責めるより、一度、丁寧に自分の全体を洗ってみて、その性分を活かす方向に考えたらどうだ?」

と言うんですよね。

繊細な性分は、人の気持ちのあやをすくいとれます。

ものごとを注意深く見ることができ、集中すれば思わぬ力を発揮することもあります。

『努力不要論』の感想にも書いたように、長所も短所もどちらも自分の才能だからです。

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この小説は、そんな長所と短所をもった自分を好きになれる、大切にできる場所こそが家族なんだと思える物語でした。

最後は間違いなく感動します。

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まとめ

今回は、伊吹有喜さんの小説『雲を紡ぐ』のあらすじと感想を紹介してきました。

家族の再生物語としても、自分の好きを大切にしたくなる物語としても楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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