webstation plus

(※『SOSの猿』表紙より)


 常識にとらわれたり、自分の考えに固執したり、思い込みが激しいせいで失敗したことありませんか。

 そんなときは、一度落ち着いて読書に挑戦してみるのもいいかもしれません。物事を多角的に眺められるようになるからです。

 なかでもおすすめなのが、伊坂幸太郎さんの小説『SOSの猿』。「本当に悪いのは誰?」「暴力はいけないことなの?」など、いろいろ考えたくなる物語です。

 そこで今回は、視野が狭くなっているときにおすすめの小説『SOSの猿』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『SOSの猿』のあらすじ

 子供の頃に二郎の憧れの存在だった辺見のお姉さんは、息子の眞人がひきこもっていることを悩んでいました。

 そんな辺見のお姉さんからSOS信号を受け取った二郎は、眞人がひきこもった原因を突き止めようとします。

 ところが、何度目かの家庭訪問で、眞人は自分が孫悟空の分身であると言い出しました。もしかして悪魔が取り付いているの!?

 品質管理の仕事をしている五十嵐は、自社システムを使った株の誤発注事件の原因調査に乗り出しました。

 1株50万円で売るべきところを、50万株1円で売り出してしまい、300億円近い損害が出てしまったのです。

 しかし、調査を進めていくと意外な事実が明らかに。

 これら二つの物語がつながっていく不思議な小説です。

 『SOSの猿』のおすすめポイント

1. 真実を見極めるには複数の視点が必要だとわかる

 眞人がまだひきこもる前。電車に乗っていると、あるおばあさんが「これで秋葉原に行けるのかしら?」とつぶやきました。

 そして、そのおばあさんが近くにいた中学生に訊ねたところ「反対行きの電車じゃないと駄目ですよ」と嘘を教えられます。

 この言葉を信じたおばあさんは電車を降りましたが、嘘を教えた中学生たちは「おまえ、ひでえ奴だな」「暑い中、大変だよなぁ」と反省する様子はありませんでした。

 悪いのはこの中学生たち?

 しかし、物語が進むにつれてある事実が明かされます。

 実は、先ほどのおばあさん。以前、道ですれ違った車椅子の男性に舌打ちをしたことがあったのです。車椅子が邪魔だというそれだけの理由でです。

 それに怒った文殊菩薩が、中学生たちにおばあさんを懲らしめてこいと命令したというお話。

 本当に悪いのは誰?

 『SOSの猿』にはこのような物語が盛りだくさん。ある視点に捉われていると真実が見えてこないことを教えてくれます。

2. 常識を疑え!?というメッセージが散りばめられている

 暴力には悪いイメージがありますよね。しかし、どのような場合でも悪いことなのでしょうか。

 たとえば、女性と子どもが男性から虐待されている場合。誰が見ても男性がDVをしているのは明らかなのに、誰もが見て見ぬ振りをしています。

 そんなとき、女性と子どもを助けるために暴力を振るってはいけないのでしょうか。

 もちろん、大人になった私たちは、「警察に通報すればいい」なんていう教科書的な答えを持っています。しかし、警察が動いてくれないとしたら、どうでしょうか。暴力を振るわずに女性と子どもを助けられるでしょうか。

 『SOSの猿』には、このような「常識を疑え!」というメッセージが散りばめられています。視野が狭くなっているときにぜひ読んで欲しい小説です。

3. 不思議な物語なのに最後はスッキリ!?

 ここまで本筋から外れた物語を紹介してきましたが、実はこれらの物語が本筋へと繋がっていきます。

 あらすじでも紹介したように、『SOSの猿』は、悪魔払いでひきこもりを解決しようとする二郎と、株の誤発注事件を解決しようとする五十嵐の物語。

 なぜか孫悟空が登場したりと不思議なお話なのですが、最後はすべてが繋がってスッキリするという摩訶不思議な小説です。

 さすがは伊坂幸太郎さん!?

 実際に読んで、不思議な物語を体験してみてください。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『SOSの猿』。読めば「本当に悪いのは誰?」「暴力はいけないことなの?」など、いろいろ考えさせられること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

自分らしさなんて追い求めるものじゃない

(※『地球星人』表紙より)  自分らしく生きていますか?  私は自分らしく生きていると思っていましたが、村田沙耶香さんの小説『地球星人』を読んで「自分らしさとは何なんだろう」と考えるようになりました。  というよりも、む …

お金を稼いで幸せになる方法

(※『億男』表紙より)  お金があれば幸せになれると思っていませんか。  しかし、どれだけお金があっても幸せになれるとは限りません。家庭が崩壊してしまった億万長者や牢屋に入ることになった成金たちのニュースを見ていると、ま …

本当の恋をしていますか?知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』は心揺さぶられる恋愛ミステリー小説

(※『崩れる脳を抱きしめて』表紙より)  知念実希人さんの小説『崩れる脳を抱きしめて』。  研修医の碓氷蒼馬(うすい そうま)が、脳に爆弾を抱える弓狩環(ゆがり たまき)と出会い、恋に落ち、そして彼女の死の謎に迫る恋愛ミ …

本気で家族のことを想ってる?/伊坂幸太郎『AX アックス』感想

(※『AX アックス』表紙より)  家族のことを本気で想っていますか。  私は家族のことを本気で想っていると自負していたのですが、伊坂幸太郎さんの小説『AX アックス』を読んで少し考えが変わりました。家族思いの殺し屋に衝 …

どんなことでも逆転できる!?阿部和重&伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』は一発逆転の物語

(※『キャプテンサンダーボルト 上』表紙より)  一発逆転したいと思ったことありませんか。  私は、仕事が予定通りに進まなかったときに思っています。特に最近は一発逆転したいことばかり…。  阿部和重さんと伊坂幸太郎さんの …

忍者は残酷!?『忍びの国』は家庭環境の影響力に驚かされる小説

(※『忍びの国』表紙より)  和田竜さんの小説『忍びの国』。  織田信長の次男・信雄(のぶかつ)が伊賀忍者たちに煽られ、信長の忠告を無視して伊賀に攻め込む物語です。読めば家庭環境や育った環境の影響力に驚くこと間違いなし! …

性格の悪さを隠すとさらに性格が悪くなる理由

(※『ジーキル博士とハイド氏』表紙より)  性格の悪さを隠していませんか?  誰もが他人に良く見られたいという思いから、性格の悪さを隠し、自分の良さをアピールして生きていますが、悪い性格を隠せば隠すほど、さらに性格が悪く …

盗人にもモラルがあった!?池波正太郎『鬼平犯科帳(1)』は正義と悪がごちゃ混ぜになった小説

(※『決定版 鬼平犯科帳(1)』表紙より)  池波正太郎さんの小説『鬼平犯科帳(1)』。  大きくみると鬼平が悪者を退治するという構成の物語ですが、盗人にもモラルがある者やそうでない者がおり、盗人同士でも闘いを繰り広げる …

男性の欲望が丸裸に!?東野圭吾『恋のゴンドラ』はミステリー要素が強い恋愛小説

(※『恋のゴンドラ』表紙より)  男性の欲望とは何でしょうか。  もちろん、複数の女性と関係を持つことです。江戸城に大奥があったのも、一夫多妻制を認めている国があるのも、星の数ほど風俗店があるのも、多くの男性が複数の女性 …

『ふくわらい』は幼い頃に感情を失った女性を描いた小説

(※『ふくわらい』表紙より)  西加奈子さんの小説『ふくわらい』。  この前のエントリで紹介した『コンビニ人間』の主人公とよく似た女性――他人の感情や言動が理解できない女性が、他人との関わりを通じて感情を取り戻していく過 …