webstation plus

(※『SOSの猿』表紙より)


 伊坂幸太郎さんの小説『SOSの猿』。

 三百億円の損害を出した株の誤発注事件の原因を突き止めようとする五十嵐と、悪魔払いでひきこもりを治そうとする二郎、この二つの事件を描いた物語です。

 読めば「本当に悪いのは誰?」「暴力はいけないことなの?」など、いろいろ考えさせられること間違いなし!?

 今回は『SOSの猿』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『SOSの猿』のあらすじ

 子供の頃に憧れの存在だった辺見のお姉さんは今では40代後半。彼女は息子・眞人のひきこもりを悩んでいました。

 そんな辺見のお姉さんからSOS信号を受け取った二郎は、眞人がひきこもりになった原因を突き止めようとします。

 しかし、何度目かの家庭訪問で、眞人は自分が孫悟空の分身であると言い出しました。もしかして悪魔が取り付いているの!?

 一方、品質管理の仕事をしている五十嵐は、自社のシステムを使った株の誤発注事件の原因調査に乗り出します。

 1株50万円で売るべきところを、50万株1円で売りに出してしまい、300億円近い損害が出てしまったのです。

 しかし、調査を進めていくと意外な事実が明らかに。

 この二つの事件がつながっていく不思議な物語です。

 『SOSの猿』のおすすめポイント

1. 「誰が悪いのか?」考えさせられる物語

 眞人がまだひきこもる前。電車に乗っていると、あるおばあさんが「これで秋葉原に行けるのかしら?」とつぶやきました。

 そして、近くにいた中学生に訊ねたところ、「反対行きの電車じゃないと駄目ですよ」と嘘を教えられます。

 この言葉を信じたおばあさんは電車を降りますが、中学生たちは「おまえ、ひでえ奴だな」「暑い中、大変だよなぁ」と冗談を言い合い、反省する様子はありませんでした。

 悪いのはこの中学生たち?

 しかし、物語が進むにつれてある事実が明かされます。

 実は、先ほどのおばあさん。以前、道ですれ違った車椅子の男性に舌打ちをしたことがあったのです。車椅子が邪魔だというそれだけの理由でです。

 それに怒った文殊菩薩が、中学生たちにおばあさんを懲らしめてこいと命令したという物語。

 本当に悪いのは誰?

 本作品にはこのような物語が盛りだくさん。一体誰が悪いのか、あれこれ考えさせられる小説です。

2. 暴力はいけないことなのか?

 暴力というと悪いイメージがありますよね。しかし、どのような場合でも暴力は悪いことなのでしょうか。

 たとえば、女性と子どもが男性から虐待されている場合。誰が見ても男性がDVをしているのは明らかなのに、誰もが見て見ぬ振りをしています。

 そんなとき、女性と子どもを助けるために暴力を振るってはいけないのでしょうか。

 もちろん、大人になった私たちは、「警察に通報すればいい」なんていう教科書的な答えを持っています。しかし、もし警察が動いてくれないとしたら、どうでしょうか。

 このように「いかなる場合でも、暴力はいけないことなのか?」と考えさせられる物語です。

3. 不思議な物語なのに最後はスッキリ!?

 ここまで本筋から外れた物語を紹介してきましたが、実はこれらの物語が本筋へと繋がっていきます。

 あらすじでも紹介したように、悪魔払いでひきこもりを解決しようとする二郎と、株の誤発注事件を解決しようとする五十嵐の物語。

 なぜか孫悟空が登場したりと不思議な物語なのですが、最後はすべてが繋がってスッキリするという摩訶不思議な小説です。

 さすがは伊坂幸太郎さん!?

 実際に読んで、不思議な物語を体験してみてください。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『SOSの猿』。読めば「本当に悪いのは誰?」「暴力はいけないことなの?」など、いろいろ考えさせられること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

どんなことでも逆転できる!?阿部和重&伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』は一発逆転の物語

(※『キャプテンサンダーボルト 上』表紙より)  一発逆転したいと思ったことありませんか。  私は、仕事が予定通りに進まなかったときに思っています。特に最近は一発逆転したいことばかり…。  阿部和重さんと伊坂幸太郎さんの …

盗人にもモラルがあった!?『鬼平犯科帳(1)』は正義と悪がごちゃ混ぜになった小説

(※『決定版 鬼平犯科帳(1)』表紙より)  池波正太郎さんの小説『鬼平犯科帳(1)』。  大きくみると鬼平が悪者を退治するという構成の物語ですが、盗人にもモラルがある者やそうでない者がおり、盗人同士でも闘いを繰り広げる …

人と対等に付き合ってる?伊坂幸太郎『チルドレン』は口達者な家裁調査官が奇跡を起こす物語

(※『チルドレン』表紙より)  人と対等に付き合っていますか?  私は対等に付き合っていると思っていましたが、伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』を読んで反省しました。障害のある人たちを「可愛そう」という視点で見ていること …

悩むことに価値がある!?東野圭吾『真夏の方程式』は感動間違いなしの小説

(※『真夏の方程式』表紙より)  東野圭吾さんの小説『真夏の方程式』。  仕事で玻璃ヶ浦(はりがうら)にやってきた湯川准教授が小学五年生の恭平と出会い、思わぬ事件に巻き込まれる物語です。読めば感動すること間違いなし!? …

『ふくわらい』は幼い頃に感情を失った女性を描いた小説

(※『ふくわらい』表紙より)  西加奈子さんの小説『ふくわらい』。  この前のエントリで紹介した『コンビニ人間』の主人公とよく似た女性――他人の感情や言動が理解できない女性が、他人との関わりを通じて感情を取り戻していく過 …

『かがみの孤城』は人とのつながりを大切にしたくなる小説

(※『かがみの孤城』表紙より)  辻村深月さんの小説『かがみの孤城』。  見ず知らずの中学生7人が鏡の世界に入り込み、一年間ともに過ごす物語です。読めば、「人とのつながりを大切にしよう」と思うこと間違いなし!?  今回は …

犯人を追いつめるだけじゃない!?東野圭吾『虚像の道化師』は心に残る短編小説

(※『虚像の道化師』表紙より)  東野圭吾さんの小説『虚像の道化師』。  ガリレオシリーズ第7弾の本作は、犯人を追い詰めるだけじゃない短編ミステリー小説です。読めば、きっと心に残る短編に出会えるはず!?  今回は『虚像の …

『まく子』は思春期のモヤモヤした記憶を思い出せる小説

(※『まく子』表紙より)  西加奈子さんの小説『まく子』。  少し不思議なお話ですが、思春期の頃に感じていた「大人になりたくない!」という気持ちや、変化を受け入れる勇気がなくてモヤモヤしていた記憶が思い出せる小説です。最 …

犯人は誰!?米澤穂信『愚者のエンドロール』は探偵がいないミステリー小説

(※『愚者のエンドロール』表紙より)  米澤穂信さんの小説『愚者のエンドロール』。  前作『氷菓』に続く古典部シリーズ第2弾の本作は、2年F組の先輩たちが自主制作したミステリー映画の謎に迫る物語です。読めば驚きの結末が! …

嫉妬と愛憎が渦巻く世界!?秋吉理香子『ジゼル』はバレエダンサーの生き様を描いたミステリー小説

(※『ジゼル』表紙より)  秋吉理香子さんの小説『ジゼル』。  創立15周年を記念して、これまで封印してきた「ジゼル」を公演することにした東京グランド・バレエ団で次々と悲劇が起こる物語です。  読めば、嫉妬と愛憎が渦巻く …