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 ツイッターを見ていると、ある有名人の発言を徹底的に擁護している人たちがいます。明らかに差別的な発言をしているのに、誰かを傷つけているのに、擁護する人たちがいます。

 なぜなら、彼らはその有名人に騙されたいと願っているから。自分で考えることを放棄して、その有名人と同化しようとしているんですよね。

 まさに洗脳されていると言っても良いと思いますが、伊坂幸太郎さんの小説『SOSの猿』には、そんな洗脳を解くキッカケがいくつか紹介されています。たとえば…。

 真実を見極めるには片方から眺めているだけではダメ

 登場人物の眞人がまだひきこもる前。電車に乗っていると、あるおばあさんが「これで秋葉原に行けるのかしら?」とつぶやきました。

 その後、そのおばあさんは近くにいた中学生に訊ねますが「反対行きの電車じゃないと駄目ですよ」と嘘を教えられます。

 この言葉を信じたおばあさんは電車を降りましたが、嘘を教えた中学生たちは「おまえ、ひでえ奴だな」「暑い中、大変だよなぁ」と反省する様子はありませんでした。

 悪いのはこの中学生たち?

 しかし、物語が進むにつれてある事実が明かされます。

 実は、先ほどのおばあさん。以前、道ですれ違った車椅子の男性に舌打ちをしたことがあったのです。車椅子が邪魔だというそれだけの理由でです。

 それに怒った文殊菩薩が、中学生たちにおばあさんを懲らしめてこいと命令したというお話。

 本当に悪いのは誰?

 思い込みに惑わされては真実は見えてこない

 では、次は暴力について。暴力と聞くと悪いイメージがありますよね。しかし、どのような場合でも悪いことなのでしょうか。

 たとえば、女性と子どもが男性から虐待されている場合。誰が見ても男性がDVをしているのは明らかなのに、誰もが見て見ぬ振りをしています。

 そんなとき、女性と子どもを助けるために暴力を振るってはいけないのでしょうか。

 もちろん、大人になった私たちは、「警察に通報すればいい」なんていう教科書的な答えを持っています。しかし、実際に警察が動いてくれることなんてマレです。暴力を振るわずに女性と子どもを助ける方法なんてなさそうですよね。

 …と、このように書くと、暴力は必要だと極端な主張をする人がいますが、そうではなく、その先を考える力が必要です。暴力を振るわずに解決する方法を。

 このような未来につながる方法を考えようとせずに、暴力は必要だと叫ぶのは思考が停止している証拠です。

 簡単に人に騙されてしまいますよ。

 洪水のように溢れる情報に飲み込まれないように

 というわけで、誰かの発言に左右されるのではなく、ひとつひとつのことを時間をかけてじっくりと考えるようにしていきたいですね。

 SNSでは洪水のように情報が流れてきます。しかし、その波に飲み込まれてしまうと、どれだけ発言しても自分には何も残りません。

 むしろ人の意見に流されるだけです。有名人の意見と同化して、わかってもらえたと勘違いして喜んでいるだけです。そんな人生を送りたくはないですよね。

 伊坂幸太郎さんの小説『SOSの猿』を読んで、そんなことを考えました。

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