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(※『あるキング』表紙より)


 人に嫌われることを恐れていませんか?

 私は恐れていますが、それを悪いことだと思っていました。もちろん、極端に恐れるのは良くありませんが、ある程度であれば人に嫌われない生き方を選んだ方が楽しく生きられるように思えるんですよね。

 そんな想いにさせてくれた小説が伊坂幸太郎さんの『あるキング』。

 今回は、『あるキング』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『あるキング』ってどんな小説?

 万年最下位の野球チーム・仙醍キングス。そんなチームにドラフト1位で入団したのが南雲慎平太でした。

 彼は少年野球の頃から注目を浴び、高校、大学野球でも見事な成績を残し、プロになってからも活躍できると誰もが思っていましたが、ドラフトの結果、仙醍キングスに入団することになりました。

 その結果、実力を発揮することなく引退。仙醍キングスの監督になります。そしてファールボールを避けたときに頭をベンチにぶつけて亡くなりました。

 このときに生まれたのが、王求(おうく)。彼は仙醍キングスを何よりも愛する両親のもとに生まれ、プロを目指しますが、圧倒的な才能があるにも関わらずプロへの道が閉ざされます。

 なぜなら多くの人に嫌われてしまったから。

 そんな王求の一生を描いた物語です。

 『あるキング』のおすすめポイント

1. 子どもに嫌われてまで手出し・口出しする必要がないことがわかる

 王求は3歳のときに両親からバットを与えられ、野球をするようになりました。そんな彼に両親は片時も離れずに指導をします。

 しかし、12歳を過ぎると王求の才能の前に両親は役立たずになりました。それでも口出ししてくる母のせいで、王求はプロに教えてもらえるチャンスを逃しそうになります。

 また、王求に暴力を振るった先輩を父が殺したせいで、プロへの道が閉ざされました。犯罪者の息子を雇ってくれるプロ野球球団なんてないからです。

 つまり、両親の行動が王求の才能を潰してしまったんですよね。

 もちろん、これは極端な例ですが、現実でも手出し・口出しをしすぎて、子どもの才能を潰す親がいます。しかし、子どもに嫌われてまで、才能を潰してまで、手出し・口出しする意味なんてないですよね。

 そんな親にならないように戒めてくれる物語です。

2. 圧倒的すぎると世間から嫌われる

 ZARDの坂井泉水さんは、圧倒的な歌唱力の持ち主でしたが、あえて下手に歌っていたそうです。そうしないと世間から受け入れてもらえないから。

 一方の王求はバッティングの才能を惜しげもなく発揮していました。毎打席ホームランを打ちます。

 その結果、敵だけでなく味方チームからも嫌われるようになりました。一緒に野球をしても面白くないからです。

 人は誰もが圧倒的な才能を目にすると、恐れて排除しようとします。アンフェアな人間にとってフェアな人間こそが感じが悪いのと同じように、才能がない人間にとって才能がある人間は嫌な奴でしかないからです。

 だからこそ、ZARDの坂井泉水さんのように、圧倒的な才能があっても隠すくらいがちょうどいいのかもしれませんね。

3. 他人から応援される人生を歩んだほうがいい

 多くの人に嫌われていた王求でしたが、一部の人たちからは応援されていました。

 倉敷巳緒もその一人。彼女は王求に、体外受精治療を受ける女性を対象にしたある実験の話をします。

「片方はね、他者からお祈りを受けるグループで、もう半分は、お祈りを受けないグループだったんだって」
(中略)
「でもね、その結果が凄いのよ。お祈りを受けたグループは受けなかったグループの倍以上も妊娠率が高かったんだって」

 つまり、人からの応援には絶大な効果があるということ。

 必要以上に人に嫌われることなく、むしろ人から応援されるように生きていけば、楽しく生きていけそうですね。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『あるキング』。人に嫌われない生き方も悪くないかもしれないと思える物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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