webstation plus

(※『かがみの孤城』表紙より)


 辻村深月さんの小説『かがみの孤城』。

 見ず知らずの中学生7人が鏡の世界に入り込み、一年間ともに過ごす物語です。読めば、「人とのつながりを大切にしよう」と思うこと間違いなし!?

 今回は『かがみの孤城』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『かがみの孤城』のあらすじ

 中学一年生のこころは、意地悪な同級生から悪口を言われ、無視され、脅されるようになり、家から一歩も出られなくなりました。

 信頼していた友人からも無視され、担任の先生からも悪く言われ、両親からも責められる…。一体どうすればいいの!?

 そんな彼女に不思議な出来事が起こります。彼女の部屋にある鏡が突然光り出したのです。気になって手を伸ばしてみると――。

 たどり着いたのは「かがみの孤城」と呼ばれる異世界でした。こころの他に6人の中学生もいます。なかでも一際目立つ格好をしていたのが、狼の面をつけた少女、オオカミさまでした。

 オオカミさまは、こころたちに向かって

「平凡なお前の願いをなんでも一つ叶えてやる」

 と言います。ただし、願いが叶うのは、「願いの部屋」の鍵を見つけた一人だけ。

 こうして、こころは集められた6人とともに鍵探しを始めます。一体、誰が鍵を見つけ出すのか!?

 不登校になる子に問題があるわけではない!?

 こころの両親や担任の先生たちは、不登校を続ける彼女に問題があるかのように振舞っていました。

 たとえば、こころのお母さん。彼女は学校に通えなくなったこころを「心の教室」というスクールに通わせようとしますが、当日になるとお腹が痛くなり、通うことがでない娘を責めます。怠慢だと決めつけていたんですね。

 学校の担任の先生も、こころの主張をまったく聞こうとはせず、問題児を庇うような発言ばかり。

 これでは外出できるようになれませんよね。むしろ、両親や学校の先生が追い打ちをかけています。

 本当に解決すべき問題は、こころを不登校に追い込んだ意地悪な同級生で、彼女からこころを守る方法を考えるのが最優先のはず。

 引きこもりや不登校と聞くと、どうしても本人が悪いと思ってしまいがちですが、そうではなく、そうなった原因に目を向けることが大切なんですね。

 不登校になったからこそ学べることも

 そんな悩みを抱えるこころでしたが、かがみの世界に通うことで、少しずつ変わっていきます。それは似たような境遇の6人の中学生に出会えたからでした。

 しかし、出会った頃は、誰もが自分の境遇を隠して牽制し合います。相手をバカにしたり、見下したりして優位に立とうする子も現れました。

 ところが、ある日。みんなから見下されていたウレシノが自分の思いを爆発させます。

「僕なら何をしてもいいと思ってるんだ」

 彼の言葉を聞いて、こころたちはショックを受けました。自分も悩んでいるはずなのに、他人を平気でバカにしていることに気づいたからです。

 これがきっかけで彼らの距離は縮まりました。痛い思いをしていたので、ウレシノの気持ちがわかり、すぐに考えを改めることができたからです。

 誰もが痛い思いをしたいとは思っていません。辛いことや悲しいことは避けたいものです。

 しかし、そうした経験があるからこそ、人の気持ちがわかるようになれるのかもしれませんね。

 味方になってくれる人ともつながっている

 こうして、こころはかがみの世界が拠り所になりましたが、現実世界でも助けてくれる人が現れました。それが「心の教室」の喜多嶋先生。

 彼女は誰に何を言われても、こころの味方でいてくれます。そんな喜多嶋先生に少しずつ心を開いていくこころでしたが、そこにはある秘密が隠されていました。

 最後まで読んで、この秘密を知ったとき、私は泣くのを我慢するのに必死でした。感動すること間違いなし!?

 最後に

 辻村深月さんの小説『かがみの孤城』。読めば、「人とのつながりを大切にしよう」と思える物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでください。

 関連記事

『のぼうの城』はリーダーシップとは何かを教えてくれる小説

(※『のぼうの城 上』表紙より)  和田竜さんの小説『のぼうの城』。  約二万の大軍を率いる石田三成と五百の軍勢を率いる成田長親(なりた ながちか)の戦を描いた物語です。読めば「リーダーシップとはこういうことだったのか! …

東野圭吾『予知夢』は科学談義が面白いミステリー小説

(※『予知夢』表紙より)  東野圭吾さんの小説『予知夢』。  警視庁捜査一課の草薙俊平が、帝都大学理工学部の准教授・湯川学とともに科学的な視点で事件を解決していくミステリー小説です。前回紹介した『探偵ガリレオ』の続編。今 …

加賀恭一郎が恋!?東野圭吾『眠りの森』はバレエに人生を捧げた人たちの物語

(※『眠りの森』表紙より)  人生を捧げてもいいと思えるほどの「好きなこと」がありますか。  収入が減っても、プライベートな時間がなくなっても、結婚や恋愛が出来なくても、やりたいと思えること。  そんな何かを持っている人 …

『ふくわらい』は幼い頃に感情を失った女性を描いた小説

(※『ふくわらい』表紙より)  西加奈子さんの小説『ふくわらい』。  この前のエントリで紹介した『コンビニ人間』の主人公とよく似た女性――他人の感情や言動が理解できない女性が、他人との関わりを通じて感情を取り戻していく過 …

犯人を追いつめるだけじゃない!?東野圭吾『虚像の道化師』は心に残る小説

(※『虚像の道化師』表紙より)  東野圭吾さんの小説『虚像の道化師』。  ガリレオシリーズ第7弾の本作は、犯人を追い詰めるだけじゃない短編ミステリーが多数用意されています。きっと心に残る短編に出会えるはず!?  今回は『 …

離婚はイヤ!?滝口悠生『茄子の輝き』は妻を大切にしようと思える小説

(※『茄子の輝き』表紙より)  滝口悠生さんの小説『茄子の輝き』。  数年前に妻と離婚した男性があれこれ過去を振り返る物語です。読めば「妻を大切にしよう!」と思うこと間違いなし!?  今回は『茄子の輝き』のあらすじとおす …

加賀恭一郎が初登場!?東野圭吾『卒業』はモラトリアムから抜け出したくなる小説

(※『卒業』表紙より)  モラトリアムから抜け出せていますか。  もし、「友人と過ごす時間がいちばん楽しい」と感じているようなら、子どもから大人に移行する橋渡し期間(=モラトリアム)から抜け出せていない証拠。今すぐ考え方 …

出会いがあれば別れもある!?『バイバイ、ブラックバード』は浮気性の男性を描いた小説

(※『バイバイ、ブラックバード』表紙より)  人との関係を大切にしていますか。  私は仲のいい人との関係をおざなりにしているように思います。いつでも会えると考えているからなんでしょうが、いつかは別れがやって来るんですよね …

犯人は誰!?米澤穂信『愚者のエンドロール』は探偵がいないミステリー小説

(※『愚者のエンドロール』表紙より)  米澤穂信さんの小説『愚者のエンドロール』。  前作『氷菓』に続く古典部シリーズ第2弾の本作は、2年F組の先輩たちが自主制作したミステリー映画の謎に迫る物語です。読めば驚きの結末が! …

伊坂幸太郎『ジャイロスコープ』はこれまでの伊坂作品とはひと味違う短編小説

(※『ジャイロスコープ』表紙より)  伊坂作品の特徴といえば、至るところに散りばめられた伏線がすべて回収されていくところですよね。  これは短編でも長編でも同じです。読了後には必ずスッキリ感が味わえます。  しかし、『ジ …