webstation plus

 いじめの話題が多いですよね。

 この前のエントリにも、中川翔子さんの本『死ぬんじゃねーぞ!!』を参考に、「いじめはいじめる側が100%悪い」という内容を書きましたが、いじめを苦にして自殺する必要は絶対にありません。

 それだけでなく、不登校になることもそれほど悪いことじゃないように思うんですよね。

 とはいえ、学校に行けなくなった人たちを弱者のように扱う人もいます。そんな人にこそ読んでほしい小説が辻村深月さんの『かがみの孤城』。心が弱いと他人を傷つけずにはいられないことに気づける物語です。

 悪質ないじめを受けた女子中学生が主人公の物語

 物語の主人公は中学一年生のこころ。彼女は意地悪な同級生から悪口を言われ、無視され、脅されるようになりました。

 それだけでなく、信頼していた友人からも無視されるようになり、担任の先生からも悪く言われ、両親からも責められるようになります。

 その結果、こころは自分の部屋から一歩も出られなくなりました。

 ところが、そんな彼女に不思議な出来事が起こります。彼女の部屋にある鏡が突然光り出したのです。気になった彼女は鏡に手を伸ばしたところ…。

 「かがみの孤城」と呼ばれる異世界に入り込みました。

 かがみの孤城には、こころの他に6人の中学生がいました。さらに、オオカミの仮面をつけた少女・オオカミさまと名乗る少女もいます。

 オオカミさまは、こころたちに「平凡なお前の願いをなんでも一つ叶えてやる」と言いました。

 ただし、願いが叶うのは「願いの部屋」の鍵を見つけた一人だけです。こうして、こころたち7人は鍵探しを始めるわけですが…。

 心が弱いと気づかないうちに他人を傷つけてしまう

 実は彼女たちは誰もが似たような境遇にいました。しかし、相手をバカにしたり、見下したりして、少しでも優位に立とうと牽制しあいます。

 ところが、ある日。他の6人から見下されていたウレシノという男の子が、「僕なら何をしてもいいと思ってるんだ」と叫びます。

 彼の叫びを聞いたこころたちは衝撃を受けました。自分たちも他人からバカにされて悩み苦しんでいるのに、ウレシノを平気でバカにしていることに気づいたからです。

 つまり、心が強くなければ、気づかないうちに他人を傷つけてしまうんですよね。

 こころのお母さんもそうです。学校に通えなくなったこころを「心の教室」というスクールに通わせようとしますが、当日になるとお腹が痛くなり、通うことができなくなるこころを責めます。

 こころが嘘をついていると思い込んでいたからです。

 学校の担任の先生もそうです。こころの主張をまったく聞こうとせず、いじめている側を庇うような発言ばかりしていました。

 もちろん、自分の立場を守るためです。こころのことなど何一つ考えていません。

 このように、思い込みで判断したり、自分の立場を守るために行動したりすれば、いじめは絶対になくなりません。そればかりか追い打ちをかけてしまいます。

 だからこそ…。

 傷ついている人に寄り添える強い人になろう

 傷ついてツライ思いをしている人を、弱者だと切り捨てるのではなく、寄り添って手を差し伸べられる強い人間になることが大切なんですよね。

 この物語では「心の教室」の喜多嶋先生がこころに寄り添ってくれました。

 喜多嶋先生は、誰に何を言われても、こころの味方でいてくれます。そんな喜多嶋先生にこころは少しずつ心を開いていきますが、そこにはある秘密が隠されていました。その秘密とは…。

 実際に本書を読んでもらうとして、辻村深月さんの小説『かがみの孤城』は、心が弱いと他人を傷つけずにはいられないことがわかる物語です。

 それだけでなく、喜多嶋先生のようにツライ人に手を差し伸べられる人間になろうと思える物語でした。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

他人に勝つことよりも自分に負けないことが大切な理由

(※『道誉なり』表紙より)  私たちが住む世界には、権力やお金、名誉などをかけた闘いが星の数ほどあります。  身近なところで言えば、会社での出世争いや住んでいる場所での格付け争い、あるいはSNS上での知名度争いなどがそう …

伊坂幸太郎『クリスマスを探偵と』感想/視点を変えれば世界が変わる!?

 サンタクロースを信じていますか?  私は小さい頃から信じていませんでした。家が貧乏だったので、プレゼントをもらえなかったからです。  しかし、伊坂幸太郎さんの絵本『クリスマスを探偵と』を読んでサンタクロースを信じてみた …

伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』はジェットコースターに乗っているかのような爽快感が味わえる物語

 サスペンスはお好きですか?  私はドキドキ感が味わえるサスペンスが大好きで、小説だけでなく映画もよく観ていますが、伊坂幸太郎さんの小説『陽気なギャングが地球を回す』は一味違いました。  ハラハラドキドキ感が味わえるだけ …

有川浩『図書館戦争』/好きな本が好きなタイミングで読めるのは幸せなこと

 読書していますか?  私は学生の頃は読書にまったく興味がなく、専門書ばかり読んでいましたが、今では読書が楽しくて仕方ありません。自由に読書ができるのってありがたいことなんですよね。  そんな当たり前のことに気づかせてく …

『みかづき』は塾教育の歴史が楽しみながら学べる小説

(※『みかづき』表紙より)  森絵都さんの小説『みかづき』。  小学校の用務員として働く大島吾郎が、新たに塾を立ち上げようと考える赤坂千秋と出会い、塾講師として、経営者として奮闘する物語です。読めば塾教育の歴史が楽しみな …

東野圭吾『ガリレオの苦悩』は他人頼みではなく自分から動き出そうと思える物語

 仕事でもプライベートでも趣味でも、何かアクションを起こすのは他人に促されてからになっていませんか?  もちろん、誰にでもそういうところはありますが、東野圭吾さんの小説『ガリレオの苦悩』を読んで、できるだけ自分から動き出 …

秋吉理香子『ジゼル』感想/バレエの世界は嫉妬と愛憎が渦巻いている

 仕事で、嫉妬したり、愛情を注いだり、憎しんだりしていますか?  私はどちらかと言えば感情を大きく動かしながら仕事と向き合っていますが、秋吉理香子さんの小説『ジゼル』を読んでバレエダンサーたちの情熱に衝撃を受けました。 …

『まく子』は思春期のモヤモヤした記憶を思い出せる小説

(※『まく子』表紙より)  西加奈子さんの小説『まく子』。  少し不思議なお話ですが、思春期の頃に感じていた「大人になりたくない!」という気持ちや、変化を受け入れる勇気がなくてモヤモヤしていた記憶が思い出せる小説です。最 …

小川糸『ツバキ文具店』は手紙のあたたかさに気づかせてくれる物語

 手紙を書いてますか?  私は手紙を書いた記憶が思い出せないくらい手紙を書いていません。字が下手なのも要因のひとつですが、それ以上に多くのことがメールで済ませられるので必要性を感じられないんですよね。  しかし、小川糸さ …

垣谷美雨『姑の遺品整理は、迷惑です』感想/距離感よりも大切なもの

 人との距離感を大切にしていますか?  私はどちらかというと、お節介焼きなので、どうしても人との距離感が近くなりすぎることがあります。それで嫌な思いもしてきたので…。  そんな性格を嫌っていたのですが、垣谷美雨さんの小説 …