いじめについて、どのように考えていますか?
私は幼い頃にいじめられたことがあるので、今でもいじめは絶対に許せませんが、
辻村深月さんの小説『かがみの孤城』を読んで、大人の対応が悪いと、追い討ちをかけることになると改めて気づかされました。
心が弱いと簡単に他人を傷つけてしまうことがわかる物語なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- いじめをテーマにした物語に興味がある人
- 心に響くミステリーを読んでみたい人
- 泣ける物語が好きな人
- 辻村深月さんの小説が好きな人
あらすじ:悪質ないじめを受けた女子中学生の物語
物語の主人公は中学1年生の安西こころ。
彼女は意地悪な同級生から悪口を言われ、無視され、脅されるようになりました。
それだけでなく、信頼していた友人からも無視されるようになり、担任の先生からも悪く言われ、両親からも責められるようになります。
その結果、こころは自分の部屋から一歩も出られなくなりました。
ところが、そんな彼女に不思議な出来事が起こります。彼女の部屋にあった鏡が突然光り出したのです。
気になったこころは、鏡に手を伸ばしてみたところ、「かがみの孤城」と呼ばれる異世界に入り込みます。
かがみの孤城には、こころの他に6人の中学生と、オオカミの仮面をつけたオオカミさまと名乗る少女がいました。
オオカミさまは、こころたちに「平凡なお前の願いをなんでも一つ叶えてやる」と言います。
ただし、願いが叶うのは「願いの部屋」の鍵を見つけた一人だけです。
こうして、こころたち7人は鍵探しを始めることになりましたが…。
という物語が楽しめるミステリー小説です。
感想①:集められた7人が距離を縮めていく姿が楽しめる
漫画『名探偵コナン』の「集められた名探偵! 工藤新一vs.怪盗キッド」では、
大富豪・烏丸蓮耶が建てた「黄昏の館」にコナンたち名探偵7人が集められて、隠された財宝を命懸けで探し出す姿が楽しめましたが、

『かがみの孤城』では、集められた7人の中学生たちが「願いの部屋」の鍵をのんびりと探す姿が楽しめます。
そもそも、彼らは、お互いに面識がなく、なぜ自分が選ばれたのかもわかっていませんでした。
しかし、コミュニケーションを重ねていくうちに、口には出しませんでしたが、誰もが学校に通っていないことがわかってきます。
そんな彼らは、鍵探しをする人もいましたが、与えられた空間を共有する楽しみを味わいはじめました。
まるでフリースクールに通って、新たな居場所を見つけていくかのような物語が描かれているので、読んでいて温かい気持ちになれるんですよね。
それだけでなく、「かがみの孤城とは?」「願いの部屋とは?」「オオカミさまとは?」といった謎も気になるので、ページをめくる手が止まらなくなりました。
感想②:心が弱いと他人を傷つけずにはいられない!?
とはいえ、はじめから上手くいっていたわけではありません。
出会った当初は、相手をバカにしたり、見下したりして、少しでも優位に立とうと牽制しあっていました。
ところが、ある日。他の6人から見下されていたウレシノという男の子が、「僕なら何をしてもいいと思ってるんだ」と叫びます。
彼の叫びを聞いたこころたちは衝撃を受けました。
自分も他人からバカにされて悩み苦しんでいるのに、ウレシノを平気でバカにしていたことに気づいたからです。
つまり、心が強くなければ、簡単に他人を傷つけてしまうんですよね。
もちろん、自分の立場を守るために行動する大人たちも同じです。
こころのお母さんは、学校に通えなくなった娘を「心の教室」というフリースクールに通わせようとしますが、
当日になるとお腹が痛くなり、通うことができないこころを責めました。
母親として、子どもが学校に通わなくなることを受け入れられなかったからです。
学校の担任の先生もそうです。
こころの主張をまったく聞こうとせず、いじめている側を庇うような発言を繰り返しました。
もちろん、自分の立場を守るためで、こころのことなど何ひとつ考えていません。
中川翔子さんの著書『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』にも、
いじめは、いじめによって傷つくだけでなく、周りにいる人たちがいじめを放置したり、隠蔽したり、正当化することで二度傷つけられる
と書かれていましたが、このような大人がいる限り、いじめは絶対になくなりません。

いじめを目の当たりにしたとき、強い大人でありたいと思える物語です。
感想③:涙が溢れ出そうになる物語
さて、この物語のラストは、感動で涙が溢れ出そうになります。
かがみの孤城で自分の居場所を見つけたこころたちが、現実のいじめにも立ち向かおうとする姿が描かれているからです。
同じ学校に通っていることがわかった彼らは、待ち合わせをして現実で会おうとしたり、
また、こころはフリースクールの喜多嶋先生に会うなど、大きな一歩を踏み出しました。
特に、喜多嶋先生は、こころに寄り添い、誰に何を言われても、こころの味方でいてくれます。
そんな喜多嶋先生にこころは少しずつ心を開いていきますが、喜多嶋先生がこころの味方でいてくれたのには、ある秘密がありました。
その秘密とは…。
この事実が明らかになったとき、感動すること間違いなしの物語です。
ちなみに、伊坂幸太郎さんの小説『AX アックス』でも涙がこぼれ落ちそうになるほど感動しましたが、
本屋大賞2018にノミネートされた小説には、心にグッと突き刺さる物語が多いように思います。

まとめ
今回は、辻村深月さんの小説『かがみの弧城』のあらすじと感想を紹介してきました。
本屋大賞2018で1位になった物語だけあって、心に響くミステリー小説です。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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