他人の評価を気にしていませんか?
私は気にしすぎて行動できないことがありますが、
今村夏子さんの小説『むらさきのスカートの女』を読んで、改めて気にする必要はないことがわかりました。
人によって評価は大きく変わることがわかる物語なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 環境によって大きく変わっていく登場人物の物語を読んでみたい人
- 人によって評価は大きく変わることがわかる物語に興味がある人
- 最後に驚ける物語が好きな人
- 今村夏子さんの小説が好きな人
あらすじ:むらさきのスカートの女を追いかける主人公の物語
物語の主人公は、むらさきのスカートの女を観察している「私」。
私は、いつも紫色のスカートを穿いている女性を、まるでストーカーのように追いかけ回していました。
むらさきのスカートの女は、週に一度はクリームパンを買いに商店街にやってきて、公園の決まったベンチに座ってパンを食べます。
むらさきのスカートの女は、歩くだけで人目をひきましたが、
彼女はまわりがどんな反応を示そうと、自分のペースを崩しませんでした。
ジャンケンをして負けた子供がむらさきのスカートの女の肩を触るという遊びをしても動じません。
私はそんなむらさきのスカートの女と友達になりたいと思い、自分が働く職場へ彼女を誘導することにしました。
求人誌に丸をつけてベンチに置いたり、面接に行く前にシャンプーの試供品を彼女の家のノブにかけたりします。
その結果、むらさきのスカートの女は面接に受かり、私と同じ職場で働くことになりましたが…。
という物語が楽しめる小説です。
感想①:人は環境によって大きく変わる
先ほどあらすじで、むらさきのスカートの女は少し変わった人物だと紹介しましたが、
私と同じ職場で働くようになってから、どんどん普通の女性になっていきました。
ホテルの清掃員として働き始めた彼女は、小さかった声も初日から大きく出せるようになります。
そのおかげで、個性的な他の従業員とも仲良くなれました。
彼女がお茶を飲んでいると、他の従業員からパンや飴をもらったり、所長からコーヒーをもらったりします。
たとえ誰からも何ももらえなくても、ホテルの余り物や備品を食べるようになったので、ふっくらしていきました。
すると、彼女は綺麗だと噂されるようになります。
さらに、妻子持ちの所長と浮気するようになるんですよね。
和田竜さんの小説『忍びの国』では、育った環境の影響力に衝撃を受ける物語が描かれていましたが、

この小説では、環境が変われば見た目だけでなく、行動も大きく変わることがわかりました。
感想②:人によって評価は大きく変わる
一方、むらさきのスカートの女を観察していた私は、彼女の行動を把握するために、ストーカーのように張り付いていました。
所長とデートをする彼女の後をつけたり、所長が彼女の家に泊まるかどうかをチェックしたり、
彼女たちが居酒屋に入ると、お金がないのにお店の中に入り、無銭飲食をするなど、執拗なまでに彼女に張り付きます。
このように、読み進めていくうちに、むらさきスカートの女が変わっているのではなく、実は「私」だけが変わっているのでは?と思えてくる物語なんですよね。
物語のはじめから「私」というフィルタを通して歪んだ事実を見せられていたように思えてきます。
たしかに、むらさきのスカートの女は、日雇い労働者で、痩せていて、毎日むらさきのスカートを穿くなど少し変わった特徴を持っていました。
しかし、人並みの生活を手にすると、普通の女性になります。
ところが、私はそんな彼女をいつまでも「むらさきのスカートの女」としてストーキングし続けるんですよね。
伊坂幸太郎さんの絵本『クリスマスを探偵と』では、視点を変えると物事がガラリと変わる物語が楽しめましたが、

この小説では、人によって評価は大きく変わることがわかりました。
感想③:ラストは驚かされる
さて、この物語では、ラストに驚きが用意されています。
私の正体が明かされるのですが、予想外の人物だったので、「え!?」と思わず口に出してしまうほどの驚きが味わえたんですよね。
さらに、むらさきのスカートの女の振る舞いに衝撃を受けます。
シェイクスピアの『リア王』では、信じる相手を間違えると恐ろしい結末を迎える物語が描かれていましたが、

この小説でも、信じる相手を間違えると悲しい結末を迎えることがわかりました。
まとめ
今回は、今村夏子さんの小説『むらさきのスカートの女』のあらすじと感想を紹介してきました。
人によって評価は大きく変わることがわかる物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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