webstation plus

 沈黙を続ける殺人犯を証拠不十分で無罪にした草薙たち警察が、その犯人を殺した関係者を追い詰める物語。それが東野圭吾さんの小説『沈黙のパレード』です。

 久しぶりのガリレオシリーズとあって期待を裏切らない面白さでしたが、それ以上に警察や法律って何のために存在するんだろう…と考えさせられる物語でした。

 役立たずの警察と法律

 現実でも証拠不十分で無罪になる事件がありますよね。特にレイプ犯など証拠を立証するのが難しい事件に多いように思います。

 『沈黙のパレード』に登場する殺人犯もそのひとり。彼は12歳の少女を殺しますが、証拠不十分で無罪になりました。

 しかも、それから19年後。またしても彼はある女性を殺しますが、自供をしなかったので起訴されませんでした。

 これでは警察がいる意味なんてありませんよね。沈黙を続ければ、法律は極悪人を守るためにあるようにさえ思えてきます。

 これだけでもムカつく物語ですが、それだけでは終わりませんでした。

 復讐した人たちを追い詰める草薙たち警察

 無罪になった殺人犯。しかし、どう考えても納得できない被害者家族とその関係者たちは復讐することを決意します。

 ところが、草薙たち警察はこの犯罪に関わった人たちを徹底的に追い詰めていくんですよね。

 もちろん、復讐は褒められたものではありません。しかし、本当に解決すべき事件はこの事件じゃないだろうって思えてきます。

 日本は法治国家だから、当然だろうと言われればそれまでですが、それなら上手く犯罪を犯したもの勝ちですよね。どれだけ悪いことをしても、証拠不十分なら無罪になるのですから。

 そんな法治国家の弱点を見事に描いた小説が『沈黙のパレード』。とてもムカつく物語ですが、ガリレオの復活にふさわしいテーマだと思います。

 最後はいろんな意味で衝撃が待ち受けている

 東野圭吾さんと言えばどんでん返し。今回の物語もラストで衝撃を受けるのは間違いありませんが、それだけではありませんでした。

 これまで天使のように描かれてきた被害者がラストで嫌な奴だとわかるんですよね。とても身勝手で、ある意味では殺されても仕方がないというか…。

 そんな被害者のために人生をかけて復讐した人たちは一体何だったの?この物語はガリレオさえカッコよく見えれば良かったの?…なんて穿った考えが次々と浮かんできます。

 とはいえ、これまでの東野圭吾さんの作品を思い返してみると、登場人物のほとんどが憎たらしい部分を持っています。性悪説というか、登場人物のほとんどが嫌な奴なんですよね。

 このように考えると、今回の物語もとても東野圭吾さんらしい小説だと思います。読んでいて嫌になるところも多いですが、色々考えさせられるのでおすすめです。

 関連記事

『みかづき』は塾教育の歴史が楽しみながら学べる小説

(※『みかづき』表紙より)  森絵都さんの小説『みかづき』。  小学校の用務員として働く大島吾郎が、新たに塾を立ち上げようと考える赤坂千秋と出会い、塾講師として、経営者として奮闘する物語です。読めば塾教育の歴史が楽しみな …

適量を知ることが自分らしく生きる秘訣/柚木麻子『BUTTER』感想

 首都圏連続不審死事件をご存知ですか。多くの男性を虜にして多額の経済的援助を引き出すことに成功した女性・木嶋早苗さんが犯した殺人事件です。  しかし、彼女は若くもなく、美しくもなく、スリムな体型でもありませんでした。そん …

自分の弱さに嫌気がさしたときに読んで欲しい小説/西加奈子『おまじない』

(※『おまじない』表紙より)  自分の弱さが嫌になることありませんか?  私はよくあります。上司に「休ませてください」と直接言いづらくて、メールで連絡したり、プレゼンの前日に緊張して眠れなかったり、スマホのゲームに夢中に …

毎日が勝負!?池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』は会社と野球部の逆転劇を描いた小説

(※『ルーズヴェルト・ゲーム』表紙より)  毎日、闘っていますか。  私は闘っていません。会社に行って「今」という時間をやり過ごしているように思います。目の前の仕事に追われて、流されている感じ。  しかし、池井戸潤さんの …

畠中恵『ぬしさまへ』は若だんなの大人になりたい想いに感動する小説

(※『ぬしさまへ』表紙より)  畠中恵さんの小説『ぬしさまへ』。  『しゃばけ』シリーズ第2弾の本作は、病弱で両親や妖怪たちから甘やかされて育った若だんなが大人になりたいと強く願う物語です。読めば自分も頑張ろうと思えるこ …

出会いも別れもすべてが愛おしく思える物語/伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』感想

 人とのつながりを大切にしていますか。  私は仲のいい人たちとの関係をおざなりにしているように思います。いつでも会えると思っているからでしょうが、いつかは別れがやって来るんですよね。  別れは突然訪れる  伊坂 …

読書が好きじゃなくても本が読みたくなる小説ーpart5

(※『ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時』表紙より)  読書していますか?  『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズも今回で5冊目。栞子さんと大輔の関係にも進展があり、ますます目が離せなくなっています …

厳しい現実に立ち向かうには人とのつながりを大切に/垣谷美雨『農ガール、農ライフ』感想

 「今の仕事がキツイから農業でも始めようかなぁ」「退職後に農業でも始められたらいいなぁ」…なんて考えていませんか。  もし、そんな甘い考えをしているようなら、垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』を読むことをおすすめし …

ミステリーのようなホラー小説はお好きですか?/芦沢央『火のないところに煙は』感想

 子どもの頃、夏休みになるとテレビでホラー特集を見ていました。そんな懐かしい記憶を思い出させてくれた小説が芦沢央さんの『火のないところに煙は』。  ラストは呆気ない終わり方でしたが、短編ホラー小説としては楽しめました。 …

ちょっと切ない物語!?米澤穂信『氷菓』は高校が舞台の青春ミステリー小説

(※『氷菓』表紙より)  米澤穂信さんの小説『氷菓』。  高校に入学したばかりの4人が古典部に入部し、日常のちょっとした謎を解いていく青春ミステリー小説です。読めば、少し切ない気持ちになること間違いなし!?  今回は『氷 …