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 なぜか出会った瞬間にイヤな気持ちになる人っていますよね。何がイヤなのかはわからないけれど、とにかく気分がムカムカしてくる人がいます。

 そんな人がいる限り「対立」はなくなりませんが、ではどうすれば互いにとって良い関係が築けるのでしょうか。

 伊坂幸太郎さんの小説『シーソーモンスター』は、その方法を教えてくれる物語です。

 なぜ初対面からイヤな気持ちになるのか?

 それは遺伝子的に組み込まれているからです。たとえば、海側に住む人間と山側に住む人間が出会うと、どれだけ好意を持って近づいても感情に突き動かされて口からイヤミが出てくるそうです。

 物語の主人公・北山の母と妻もその関係でした。彼女たちは出会ったときから互いをよく思わず、感情的になっていました。それにも関わらず、同居することになった彼女たちは、些細なことで言い争いを続けます。

 義母の好きな童話の本が見つからないことで嫌味を言いあったり、子供が生まれないことで言い争いをしたりと穏やかではありません。

 もちろん、間に挟まれた北山はたまったものではありませんが、それ以上にショックを受けていたのは北山の妻・宮子でした。なぜなら彼女は、人とのコミュニケーションをかなり積んできた元情報員だったからです。

 だからこそ、義母とうまくいかない理由を遺伝子に求めるんですよね。これが『シーソーモンスター』で語られる物語ですが、その未来を描いた『スピンモンスター』でも同じことが起こりました。

 嫁姑だけでなくライバルでも同じことが起きる

 物語の主人公・水戸は小さい頃に車同士が衝突した事故のせいで両親と姉を亡くしましたが、事故の相手である檜山も同じく両親と姉を亡くしていました。

 そんな彼らは小学校で再会しますが、ともに互いのことを嫌っており、避けて暮らします。

 ところが、大人になってフリーの郵便局員として働くようになった水戸が新幹線に乗ったところ、となりの席に座ってきた男性から、この手紙をある人物に配達してほしいと依頼されたことがキッカケで状況が変わります。

 その人物を追いかけてやってきたのが警察官になった檜山だったからです。こうして彼らは再会し、再び対立していくわけですが、まるで運命に導かれているように思えるんですよね。

 なぜなら…。

 対立が起きることで人は進化していく

 彼らにとって再会し、対立することは必要なことだったからです。

 無風状態ではなにも起こりません。ぶつかり合ってはじめて変化が起きます。変化があってはじめて人は進化できるので、対立は人間にとって欠かせないピースなんですよね。

 では、その対処法はと言うと、実際に『シーソーモンスター』と『スピンモンスター』を読んで考えてみてください。

 二つの異なる物語の結末に、自分はどうすべきかと考えたくなります。ちなみに、私は『シーソーモンスター』の解決法が気に入りました。

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