webstation plus

 小説やドラマを観ていると、「本当に素敵な人だなぁ…」と心を持っていかれそうになる登場人物に出会うことがあります。

 たとえば、ドラマ『トリック』に出演されていた仲間由紀恵さん。本当にキレイな方なのにユーモアあふれるキャラクターを演じられていたので、そのギャップに一瞬で心を持っていかれました。

 もちろん、ドラマの設定上「ユーモアあふれる女性」を演じられていることはわかっているのですが…。それでも魅力的な女性をみると心奪われてしまうんですよね。

 銀行の不祥事を担当する女性が主人公

 この前のエントリで池井戸潤さんの小説『銀行総務特命』を紹介しましたが、今回の物語でも銀行を舞台に不祥事を一手に引き受ける人たちが描かれています。

 それもそのはずです。テレビドラマとしては、『花咲舞が黙ってない』というタイトルでひとまとめにして放送していたほど、物語に共通性があるからです。

 物語の主人公は花咲舞。彼女は少し頼りない上司・相馬と共に次々と起こる不祥事に立ち向かっていきます。

 たとえば、第一話『激戦区』では、ベテラン女子行員を「余計なコスト」だと考え、自主退職に追い込むために、執拗にいじめを繰り返す課長をぶった切ります。

 その切れ味があまりにも鋭くて読んでいて気分がスッキリするんですよね。

 ある意味では織田信長のような「強さ」を持っているのかもしれません。

 織田信長が「比叡山」を焼き討ちにしたのは、当時の僧侶たちが腐敗堕落しており、遊興に明け暮れたり、権力を笠に着て高利貸をしたり、一般市民に暴力を振るうなど、「既得権益」をむさぼる集団だったからだと言われています。

 花咲も権力を笠に着るような人物が大嫌いですからね。

 とはいえ、織田信長のように鋭い強さをもっているだけではありません。

 「強さ」だけでなく「謙虚さ」もあわせ持つ女性

 第二話『三番窓口』では、「いつまで待たせるんだよ!」と怒鳴る客に冷静に対応していきます。

 しかも、「窓口で怒鳴ったからといって悪気があるわけじゃない。ああいう人って、話してみると意外にいい人だったりするのよ。ちょっと気が短いだけよ」と言える心の広さがあります。

今ここでこんなこと言うと怒られるかもしれませんが、特になんの取り柄もなく特別な訳でもなく、ただ歌が好きだった自分をここまで連れて来てくれた松本さんに、とにかく感謝の言葉しかないです。

 とは、B’zの稲葉さんの言葉ですが、魅力ある人は他人に対して謙虚ですよね。

 そんな「強さ」と「謙虚さ」をあわせもつ花崎ですが、それだけでなく…。

 女性らしい気づかいに心を奪われる

 女性らしい優しさもあわせ持っていました。

 傲慢な金融庁の調査官を陥れるために、重要書類の代わりに下着を隠しておく場面があるのですが、そのときに隠したのは女性行員の下着ではなく、花咲自身のものでした。

 「他人に下着を見られるのは嫌だろう」という女性らしい配慮からです。

 これだけでも心奪われるのですが、さらに、「あれ、お前のなんだろ。いったいどこでそんなの使うんだ」と相馬にからかわれると、思いっきり相馬の脛を蹴り上げ去っていきます。

 そんな「強さ」と「優しさ」という相反するギャップを持ち合わせているところに心奪われてしまうんですよね。

 というわけで、池井戸潤さんの小説『不祥事』は、花咲舞のギャップに魅了される物語です。ミステリー好きの読者だけでなく、男性にモテたいと願う婚活中の女性にもオススメです。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

『みかづき』は塾教育の歴史が楽しみながら学べる小説

(※『みかづき』表紙より)  森絵都さんの小説『みかづき』。  小学校の用務員として働く大島吾郎が、新たに塾を立ち上げようと考える赤坂千秋と出会い、塾講師として、経営者として奮闘する物語です。読めば塾教育の歴史が楽しみな …

原田マハ『たゆたえども沈まず』はゴッホの悲しい生涯に胸が痛くなる物語

 美術に興味を持っていますか?  私はあまり興味がなく、ゴッホについてもほとんど知りませんでしたが、原田マハさんの小説『たゆたえども沈まず』を読んで、ゴッホの作品を見てみたくなりました。  ゴッホの生涯を知った今では、彼 …

東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』は読者の推理力が試される物語

 推理していますか?  私はミステリーが好きでよく読んでいますが、あまり推理をせずに物語を追いかけてきました。  しかし、東野圭吾さんの小説『どちらかが彼女を殺した』では推理せざるを得なくなったんですよね。容疑者である二 …

今村夏子『星の子』は新興宗教にハマった家族を描いた物語

 宗教は自分には関係のないものだと思っていませんか?  私はそう思っていましたが、今村夏子さんの小説『星の子』を読んで少し考えが変わりました。なぜなら、宗教は私たちの生活に密接に関わっていることに気づいたからです。  あ …

原田マハ『本日は、お日柄もよく』は言葉の力を信じたくなる物語

 言葉には世界を変える力があります。  たとえば、2008年のアメリカ合衆国大統領選挙で、バラク・オバマが民主党の候補者に選ばれたのは、言葉の力を使ったからでした。  当時、次の大統領候補として最も呼び声が高かったのは、 …

他人の考えに縛られる必要はない/伊坂幸太郎『重力ピエロ』感想

 強姦魔に犯されて生まれてきた子・春が、遺伝子のつながりと家族との絆の間で揺れ動く物語。それが伊坂幸太郎さんの小説『重力ピエロ』です。  とにかく暗い物語ですが、ラストですべてが救われたような気分になれるんですよね。その …

人の話を鵜呑みにするな/伊坂幸太郎『夜の国のクーパー』感想

 戦争に敗れたとある国の物語。それが伊坂幸太郎さんの小説『夜の国のクーパー』です。  相変わらず謎の生物や個性的なキャラクターが登場しますが、視野を広く持たないと簡単に人に騙されることがわかる物語なんですよね。何度も驚か …

柚木麻子『本屋さんのダイアナ』感想/「現実を愛せない人」に幸せは訪れない

 今の生活を楽しんでいますか?  実は、私たちが苦しんだり、悩んだりするのは、今、目の前にある現実を受け入れられないときですが、残念ながら現実を愛せない人に幸せは訪れません。  そんな思いにさせてくれた小説が柚木麻子さん …

伊坂幸太郎『ガソリン生活』/いじめをする人間にはアイデアがない

 最近、いじめの話題が多いですよね。もちろん、いじめをしている人間が100%悪いのですが、それだけでなく彼らには決定的に足りない能力があります。  それはアイデアを生み出す力。楽しい遊びを生み出す力がないので、いじめをし …

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』はパズルのピースをはめているかのような快感が味わえる小説

 パズルはお好きですか?  私は子どもの頃からパズルが大好きで、1000ピースとか2000ピースのパズルをよくしていました。しかし、最近は仕事が忙しくてなかなかできないんですよね。  ところが、まるでパズルのピースをはめ …