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 大人になってから、あっという間に一日が過ぎていきませんか。朝起きて仕事をはじめたと思ったら、すぐにお昼ご飯。その後も、会議に出たり、電話をしたり、パソコンに向かっているだけで、気づいたときにはすでに夜。あとは、家に帰ってご飯を食べるくらいの時間しか残されていません。

 しかし、子どもの頃は違いました。学校の授業は、時計をチラチラ見ないとやり過ごせないくらい長かったですし、放課後もクタクタになるまで遊ぶ時間がありました。家に帰ってからも、勉強をしたり、テレビを観たり、ご飯を食べたり、お風呂に入ったり…と、十分な時間があったように思います。

 では、なぜ年をとるにつれて、時間が経つのが速くなるのでしょうか。もしかして、老化が原因なの?

 なぜ、年をとるにつれて一年が速くなるのか

 サイエンスライターである竹内薫さんは、著書『一年は、なぜ年々速くなるのか』のなかで、複数の仮説を立てて、その理由を考察されています。なかでも、面白いと思った仮説は次の三つ。

  1. スケーリング仮説
  2. ペッペル仮説
  3. ルーティン仮説

 それぞれ簡単に説明していきましょう。

仮説①:スケーリング仮説

 「スケーリング仮説」とは、時間の進む速さが身体の大きさに比例しているのではないか、子どもよりも大人のほうが身長が高いので、物理的に時間が経つのが速いのではないか、という仮説です。

 振り子時計を例に考えてみましょう。振り子時計は、「振り子の重さ」や「振れ幅」を変えても、チクタクの間隔は変わりませんが、「腕の長さ」を変えると変わります。腕の短い時計は、チッチッチと速く時を刻み、腕の長い時計はチークタークとゆっくり時を刻みます。

 これは、「時間」が「振り子時計の腕の長さ」の平方根に比例するという物理法則に従っているからですが、「振り子時計の腕の長さ」を「人間の身長」に置き換えれば、どうでしょうか。大人と子どもで時間の経つ速さが違う理由が説明できそうですよね。

 実際、子どもたちを見ていると、時の刻み方が速いように思います。レストランに連れて行っても、すぐに料理を食べてしまい、席を離れたがりますが、私たち大人は違います。ゆっくりと料理を楽しむことができます。

 この差が、感じている時間の差によるものだとしたら、大人が感じている二時間が子どもにとっての四時間だとしたら…。

 つまり、スケーリング仮説とは、身長の高い大人は、ゆっくりとしか動けないので、時間が経つのが速く、身長の低い子どもは、速く動けるので、時間が経つのが遅いと感じるというものです。

 しかし、この仮説だけでは、年々時間が速く経つ理由の説明にはなりません。なぜなら、身体の大きさだけで時間のカタチが決まるのであれば、大人になって成長が止まった時点で、時のカタチは一定となり、その後は変化しないはずだからです。

 そこで、「ペッペル仮説」の登場です。

仮説②:ペッペル仮説

 「ペッペル仮説」とは、人間が感知できるいちばん長い時間が「3秒」であることを明らかにしたドイツの生理学者エルンスト・ペッペル博士にちなんで名づけられた仮説です。

 ここで言う「人間が感知できる一番長い時間」とは、人間が「今」として「ひとまとまり」に意識を集中できる時間であり、映画でいうところの一コマに相当します。つまり、私たちは3秒刻みで「今」を理解しているのです。

 実際、外国に行って、喫茶店などで知らない言葉に耳を傾けると、ほぼ3秒ごとに発言が途切れていることがわかります。また、古今東西の有名な音楽のリズムも、ほぼ3秒という長さになっています。

 このように、私たちは3秒刻みで「今」を理解しているわけですが、この3秒が年をとるにつれて「5秒」「6秒」と遅くなっていくことが研究結果より明らかになりました。そのため、年をとるほど時間が一瞬で過ぎ去ってしまったかのように感じるわけです。つまり、老化が原因だということ。

 では、年をとったら時間が速く経つのは仕方がないことなのでしょうか。諦めるしかないことなのでしょうか。そんなことはありません。そこで「ルーティン仮説」の登場です。

仮説③:ルーティン仮説

 ルーティン仮説とは、年をとるにつれて、新しいことにチャレンジしなくなり、単調な毎日を繰り返した結果、年々時間が経つのが速いと感じてしまう、という仮説です。

 私たちは、何かをやっているときの時間の感じ方と、後になって思い返すときの時間の感じ方が逆になっていますよね。

 何かに夢中になっているときは、あっという間に時間が過ぎていきますが、後から思い返すと、充実した記憶が蘇ります。しかし、退屈であくびが出そうなときは、なかなか時間が過ぎていきませんが、後で思い出そうとしても、中身が空っぽなので、一瞬で過ぎ去ったかのように感じます。

 すなわち、今が充実していれば時間が経つのが速いと感じなくてすむということ。年をとるにつれて一年が年々速くなるように感じるのは、新しいことにチャレンジせず、ルーティンワークに陥っているからです。

 一年が年々速くなるのは、老化だけが原因ではない

 さて、ここまで3つの仮説を紹介してきましたが、まとめると次のようになります。

 「スケーリング仮説」や「ペッペル仮説」によって、物理学的、生理学的に、年をとるにつれて時間が速く経つように感じるのは仕方がないが、「ルーティン仮説」が示すように、記憶に残る充実した毎日を過ごせるように努力すれば、時間を延ばすことができる。

 というわけで、ほんの些細なことからでも変化を起こして記憶に残る毎日を積み重ねていきましょう。そうすれば、今よりも時間を長く感じることができ、一年を二年や三年にすることができるかもしれませんよ。

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