webstation plus

(※『祈りのカルテ』表紙より)


 仕事で想像以上の成果を出していますか。

 私は残念ながら想像を下回る成果しか出せていません。なぜなら、計画通りの行動しかしていないからです。

 新しいことに挑戦するとき、リスクはつきものですよね。それにも関わらず、前のめりになって行動していないのでリスクに対応する時間がありません。これでは想像以上の成果なんて出せるはずないですよね…。

 では、どうすればいいのでしょうか。

 今回は、知念実希人さんの小説『祈りのカルテ』のあらすじとおすすめポイントを紹介しながら、どうすれば想像以上の成果が出せるのか考えてみたいと思います。

 『祈りのカルテ』のあらすじ(『彼女が瞳を閉じる理由』)

 純正医科大学附属病院の精神科で初期臨床研修を受けていた諏訪野良太。

 ある夜。彼のもとに睡眠薬を多量服用した女性患者が救急搬送されてきます。しかし、先輩医師や看護師たちは他の患者が搬送されてきたときとは違い、だらけているように見えました。

 なぜなら、彼女は毎月同じことを繰り返していたからです。

 彼女の腕には「アキラ」という別れた夫の名前が火傷で刻まれていました。先輩医師や看護師たちは、彼女が元夫に会うために入退院を繰り返していると考えていましたが、諏訪野はその説に違和感を覚えます。彼女の退院日が決まって5日だったからです。

 研修医の諏訪野が彼女の謎に迫る!?

 『祈りのカルテ』のおすすめポイント

1. 海堂尊さんに続く医療ミステリー小説

 著者の知念実希人さんは現役の医師。ドラマ化や映画化もされた『チーム・バチスタの栄光』の著者である海堂尊さんに続く医療ミステリー作家です。

 ただし、海堂尊さんと違うのは、物語のわかりやすさ。解決が困難な医療問題に真っ向から挑む海堂さんとは異なり、日常的な問題に光を当てて物語を構成されています。

 今回ご紹介する『祈りのカルテ』もその一つ。全5章の短編で構成されている小説ですが、それぞれのテーマは、DVや親子関係、結婚など身近なものばかり。

 誰にでも起こりそうな身近な問題を医学という切り口で解決していくプロセスは圧巻です。

 ミステリー小説としても十分面白いので、医療に興味がなくても楽しめる物語です。

2. 医者の仕事は病気を治療するだけじゃない

 そんな誰にでも起こりそうな問題に挑むのが研修医の諏訪野。彼は精神科から始まり、外科、皮膚科、小児科、内科と順に研修を受けながら、患者個人の問題を解決していきました。

 なぜなら、病気を根本的に治すには、患者個人の問題を解決する必要があるからです。

 たとえばDV。どれだけ怪我の治療をしても、暴力を振るう人がいなくならない限り怪我が絶えないですよね。あくまでも怪我はDVの結果です。

 だからこそ、諏訪野は患者個人の問題に踏み込むわけですが、他の医師たちは批判的でした。なぜなら、そんなことをしている時間がないから。

 それでも自分の時間を削ってまで挑戦する諏訪野の姿に、想像以上の成果を出す秘密が隠されているように思います。

 その秘密とは――。

3. 気になったことは納得するまで追求することが大切

 私たちは忙しさに流されて、こんなものかと中途半端に物事を捉えがちですが、納得するまでやりきることが大切なんですね。

 たとえば、家政婦のタサン志摩さんもその一人。プロフェッショナル仕事の流儀でも取り上げられましたが、彼女の仕事は徹底しています。

 志摩さんは、依頼者のお宅に訪問して、冷蔵庫にある食材で1週間分の料理を作り上げます。しかも、たったの3時間で。

 どんな食材があるかわからない状況で、慣れない調理場で美味しい料理を作るなんて、とても難易度の高い仕事ですよね。

 だからこそ、仕事を確実に成し遂げるために、納得がいかない料理があれば、家に帰って何度も作り直します。また、過去に訪問した家庭から再び依頼があれば、前日に家族の好みを調べて思い出したりされています。

 そこまで徹底して仕事に向き合うからこそ、依頼者も喜ばれるんですよね。

 もちろん、諏訪野もその一人。想像以上の成果を出すには、納得するまでやり切ることが大切だと教えてくれる物語です。

 最後に

 知念実希人さんの小説『祈りのカルテ』。読めば今よりも仕事と向き合おうと思える物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

適量を知ることが自分らしく生きる秘訣/柚木麻子『BUTTER』感想

 首都圏連続不審死事件をご存知ですか。多くの男性を虜にして多額の経済的援助を引き出すことに成功した女性・木嶋早苗さんが犯した殺人事件です。  しかし、彼女は若くもなく、美しくもなく、スリムな体型でもありませんでした。そん …

『かがみの孤城』は人とのつながりを大切にしたくなる小説

(※『かがみの孤城』表紙より)  辻村深月さんの小説『かがみの孤城』。  見ず知らずの中学生7人が鏡の世界に入り込み、一年間ともに過ごす物語です。読めば、「人とのつながりを大切にしよう」と思うこと間違いなし!?  今回は …

読書が好きじゃなくても本が読みたくなる小説―part2

(※『ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常』表紙より)  読書していますか?  この前のエントリで『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』を紹介しましたが、今回はその続き『ビブリア古書堂の事件 …

常識を疑って生きている?/伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』感想

 未来が予測できて人の言葉を話すカカシが登場する小説。それが伊坂幸太郎さんのデビュー作『オーデュボンの祈り』です。  現実にはあり得ない設定なのに、いつの間にか夢中になって、しかも喋るカカシは実在するのかも…なんて思えて …

普通って何?村田沙耶香『コンビニ人間』は自分らしく生きる女性を描いた小説

(※『コンビニ人間』表紙より)  2016年に芥川賞を受賞した小説『コンビニ人間』。  普通とは何か?自分らしく生きるとはどういうことか?など、いろいろ考えさせられる物語です。あまりの面白さに一気読みしてしまうこと間違い …

男性の欲望が丸裸に!?東野圭吾『恋のゴンドラ』はミステリー要素が強い恋愛小説

(※『恋のゴンドラ』表紙より)  男性の欲望とは何でしょうか。  もちろん、複数の女性と関係を持つことです。江戸城に大奥があったのも、一夫多妻制を認めている国があるのも、星の数ほど風俗店があるのも、多くの男性が複数の女性 …

人に嫌われない生き方も悪くないかもしれない/伊坂幸太郎『あるキング』感想

 天才野球少年に次々と無理難題が押し寄せてくる物語。それが伊坂幸太郎さんの小説『あるキング』です。  最後まで何を伝えたいのかよくわからない物語でしたが、なんとなく感じ取れたのは、人に嫌われない生き方も悪くないかもしれな …

無駄なことでも誰かの役に立つかもしれない/伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』感想

 無駄なことはやめようと思っていませんか。  もちろん、本当に無駄なことはやめた方がいいですが、無駄に思えても一生懸命にやったことは、めぐりめぐって誰かの役に立つかもしれません。  そんな想いにさせてくれた小説が伊坂幸太 …

人の心も科学!?東野圭吾『ガリレオの苦悩』は心に響く言葉が満載の小説

(※『ガリレオの苦悩』表紙より)  東野圭吾さんの小説『ガリレオの苦悩』。  今作から新たに加わった女性刑事・内海薫の登場により物語の幅が広がったミステリー小説です。読めば湯川准教授の言葉が心に響くこと間違いなし!?   …

厳しい現実に立ち向かうには哲学とユーモアが必要/伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』感想

 アパートに引っ越してきた大学生が隣の住人から「一緒に本屋を襲わないか?」と誘われて始まる物語。そんな意味不明な幕開けをする小説が伊坂幸太郎さんの『アヒルと鴨のコインロッカー』です。  物語全体もかなり現実離れしています …