東野圭吾『祈りの幕が下りる時』感想/家族とは何か、母親とは何か?

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家族と上手くいっていますか?

私は過去にいろいろありましたが、今では楽しく過ごせています。

しかし、東野圭吾さんの小説『祈りの幕が下りる時』を読んで、

家族に他人の迷惑を顧みない自分勝手な人がいると、その人のせいで一生つらい思いをすることがわかり、衝撃を受けました。

今の家族と過ごせてきたことに、感謝したくなる物語なんですよね。

おすすめ度:5.0

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こんな人におすすめ

  • 加賀恭一郎シリーズが好きな人
  • 対照的な母をもつ登場人物の物語に興味がある人
  • タイトルに込められた意味を考えてみたい人
  • 東野圭吾さんの小説が好きな人
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あらすじ:関係なさそうな2つの事件が繋がっていくミステリー

加賀恭一郎の母・田島百合子は、彼が小さい頃に家を飛び出し、仙台で暮らしていました。

宮本康代という女性が経営していたスナックで働いていたのです。

ところが、百合子は誰にも心を開きませんでした。

世話になった宮本康代にも自分のことをほとんど話していません。

そんな百合子が唯一心を開いていたのが、客としてやってきた綿部俊一でした。

彼は50代で電力関係の仕事をしていると言っていましたが、遠方に行っているためか、時々姿を消しました。

そして、ある時からスナックに来なくなります。

ところが、田島百合子が亡くなったときに、宮本康代に加賀恭一郎の名前と連絡先を教えたのは綿部俊一でした。

百合子でさえ息子の連絡先を知らなかったのにです。

綿部は宮本康代に加賀の連絡先を調べたと言いましたが、刑事である加賀の連絡先は簡単には調べられません。

なぜ、綿貫は加賀の連絡先を知っていたのか!?

一方、加賀の従弟で、刑事でもある松宮脩平は、明治座で講演中の芝居『異聞・曽根崎心中』の演出家である浅居博美を調べていました。

彼女の同級生である押谷道子が、彼女と出会った直後に殺されていたからです。

しかも、押谷道子は越川睦夫という見ず知らずの男性のアパートで発見されました。

住人である越川も行方不明になっています。

それだけでなく、越川の部屋にかけられていたカレンダーに月ごとに書かれていた十二の橋の名前が、加賀の母の遺品にあったメモと一致したのです。

これがキッカケで加賀は、越川睦夫と綿部俊一が同一人物であると推測しますが、他にも次々と驚くような事実が浮かび上がってきました。

越川のアパートの近くで殺されていたホームレスの事件もそのひとつですが、演出家である浅居博美の過去にも驚くような事実が隠されていたんですよね。

その事実とは…。という物語が楽しめるミステリー小説です。

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感想①:原発が重要なキーワードになっている物語

あらすじでも紹介しましたが、加賀恭一郎の母・小百合が唯一心を開いていた綿貫は、

電力関係の仕事をしていると言っていましたが、それは原発作業員の仕事でした。

ところが、クリーンエネルギーという名で呼ばれていた原子力発電は、まったくクリーンではありませんでした。

「原発はねえ、燃料だけで動くんじゃないんだ。あいつは、ウランと人間を食って動くんだ。人身御供が必要なんだよ。わたしたち作業員は命を搾り取られてる。わたしの身体を見りゃあわかるだろう。これは命の搾り滓だよ」

給料に見合わない命懸けの仕事をする人たちがいて、はじめて原発を稼働することができるんですよね。

小説『みえない雲』では、チェルノブイルの原発事故がドイツで起こったら…という原発事故の恐ろしさが描かれている物語ですが、

この物語では、原発事故が起こらなくても、原発の犠牲になっている人たちがいる事実を突きつけています。

『麒麟の翼』でもそうでしたが、東野圭吾さんは時事問題を小説に取り入れて、

今後どうすべきかを一人でも多くの人が考えるように願われている気がします。

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感想②:家族とは何か?母親とは何か?と考えたくなる物語

加賀恭一郎の母が幼い息子を置いて家から出て行ったのは、

家事や育児、介護、親戚付き合いなど、すべてが上手くいかなくなった自分を責め、うつ状態になっていたからでした。

息子である恭一郎を、無意識のうちに出刃包丁で刺そうとするほど追い詰められていたのです。

一方、明治座で講演中の芝居『異聞・曽根崎心中』の演出家である浅居博美の母も家から出て行っていましたが、

彼女は浮気をするだけでなく、その男に貢ぐために父の全財産を使い切り、借金まで重ねていました。

そのせいで借金取りが来るようになり、博美は父と夜逃げをするまで追い詰められたのです。

このように二人の母親を比較してみると、家を出て行ったという事実は同じですが、その背景にあるものは正反対であることがわかります。

子供のことを思って家から出て行った加賀恭一郎の母と、自分のことしか考えなかった博美の母。

『赤い指』のときもそうでしたが、この対比が母親とは何か、家族とは何か、を強く考えるキッカケになるように描かれています。

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感想③:タイトルに込められた意味に感動する

さて、この物語のタイトル『祈りの幕が下りる時』には、どのような意味が込められているのでしょうか。

私の理解をネタバレにならない範囲で書くと、

ひとつは、母が幸せに暮らしていて欲しいという加賀恭一郎の「祈り」と、

その事実が明らかになる瞬間に、加賀にとって新たな人生が始まりそうな予感が描かれているので、「幕が下りる時」になっているのだと思います。

もうひとつは、ネタバレにならないように書くのが難しいのですが、

博美の父が安らかに眠って欲しいという「祈り」と、

すべてが明らかになった瞬間の加賀のセリフに込められた思いが、「幕が下りる時」になったのだと思います。

詳しくは実際に読んで考えてみて欲しいのですが、

山本謙一さんの小説『利休にたずねよ』と同じように、タイトルに込められた意味を考える楽しみが味わえる物語です。

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まとめ

今回は、東野圭吾さんの小説『祈りの幕が下りる時』のあらすじと感想を紹介してきました。

すでに映画化もされて多くの人たちに感動を与えている物語ですが、今読んでも心に響く小説です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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