webstation plus

cherry-blossom_01

 落語にこんな話がある。酒屋の番頭からお酒を借りて商売をしようとした二人の幼馴染がいた。花見シーズンだったので、花見の場所に行きさえすれば必ずお酒が売れると二人は考えていたのである。酒飲みは、酒がなくなるとすぐに飲みたくなるからだ。しかし――。二人の幼馴染も酒飲みだった。だから、兄貴分は、弟分に向かってこんなことを言い出した。

 「売り物の酒だが、手持ちの金で買う分には問題ないだろう」と。

 そこで、兄貴分は弟分にお金を払い、金額相当のお酒を飲んだ。しかし、それをみていた弟分もお酒が飲みたくなったので、兄貴分に向かってこんなことを言った。

 「兄さんからもらったこのお金で、俺にも酒を飲ませてくれ」と。

 こうして彼らは交互にお金を渡しあい、売り物のお酒をすべて飲み干してしまった。彼らの手元に残ったのは、はじめに兄貴分が持っていたお金だけ。あら不思議。お酒の売り上げはいったいどこに消えてしまったのやら…。

 これは、古典落語にある「花見酒」を要約して書いたものであるが、この物語が示すように、ある視点からみると、「お金」というものがとても脆いものであることがわかる。お金のやり取りだけでは「何も生み出さないから」だ。しかし、花見酒は落語の話にとどまるものではない。現実でも、こうしたやりとりが行われている。それが、株やFXだ。

 ご存知のように、株やFXそのものは何かを生み出しているわけではない。お金のやりとりだけで、お金を増やそうとする仕組みである。しかも、そのように増やしたお金で、誰かが生み出したモノを消費している。まさに「花見酒」そのもの。

 しかし、多くの人たちは「花見酒」に憧れを抱いている。「不労所得」という名の「花見酒」を飲みたいと願っている。では、実際に「不労所得」の人たちで世の中が溢れたら、どうなってしまうのだろうか。

 答えは明確。多くの人たちが何も生み出さない世界――すなわち、どれだけお金をもっていても消費するものがない世界、お金の価値がない世界になってしまう。

 私たちは「お金には価値がある」と信じているが、実は「多くの人がそう信じているから、お金には価値がある」のだ。そして、「誰かが何かを生み出し続けているから、お金が価値あるものとして使える」のである。

 とはいえ――、「できれば楽して生きていきたい」と願うのが人間というもの。だから、今後も不労所得を夢見る人が減ることはないだろう。しかし、ギリシャが財政破綻したように、日本のお金も価値がなくなる日がやってくるかもしれない。そのときに頼りになるのは、どれだけお金をもっているかではなく、どれだけの価値が生み出せる自分であるかだ。

 というわけで、花見酒を夢見ることは決して悪いことではないが、それに酔いつぶれると夢から醒めたときに自分には何もないことに気づく羽目になるだろう。だから、お金を稼ぐために仕事をするのではなく、だれかに喜んでもらえるために働こう。どれだけの価値が生み出せているのかを意識しながら働いていこう。そうすれば、多くの人たちが酔いから冷めたときに、あなたには「お金では買えない価値」がついているはずだ。

 関連記事

お金よりも「つながり」を大切に/『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』

 「努力すれば幸せになれるのか」――これが本書のテーマである。そして、その答えは「No!」。なぜか。  結論からいえば、私たちの能力の大半は遺伝によって決まっているからだ。走るのが得意じゃない人が、どれだけ走る練習をした …

「やりがいのある仕事」を選んで痛い目をみないように

 「やりがいのある仕事がしたい」と考えている人は多いのではないでしょうか。私もそのひとりでした。しかし、やりがいのある仕事に就けたからといって、幸せを感じられるとは限りません。なぜなら、やりがいのある仕事に就くと、常に厳 …

つまらない人は職を失い、面白い人に仕事とお金が集まる時代に

 子どもの頃、「バカだなぁ」と笑っていた出川哲朗さんが、大人になるにつれて実はスゴイ人だということがわかり、反対に憧れを抱いていた大企業のサラリーマンが、実はいくらでも代わりが利く仕事をしているという事実を、大人になった …

これからの日本で生き残る方法/『吉本芸人に学ぶ生き残る力』

 経営再建を進めるシャープは、台湾メーカーの鴻海精密工業(ホンハイ)に買収される方向で検討を進めている。この買収が成立すれば、シャープも立ち直れるかもしれない。しかし、今回の件でホンハイの会長は、私たち日本人に怖ろしい事 …

「仕事がつまらない」ときの対処法は3つしかない

 仕事がつまらない。そんな状況に陥ったとき、私たちが取れる対処法は3つしかありません。 転職する 仕事以外の何かにのめりこむ 目の前にある仕事で実績をつくる  まず、一つ目の「転職する」という選択ですが、「仕事がつまらな …

コモディティから抜け出し、社会に認められる力をつけよう/『断る力』

 企業の人員整理がとまらない。今でも多くの企業が社員を「リストラ部屋」に追い込んでいる。「リストラ部屋」とは、リストラ対象者を集め、社内失業状態にし、退職に追い込むことを目的とした部署だ。あのソニーですら「リストラ部屋」 …

「何のために働くの?」――会社のためではない、自分のためだ

 仕事に夢中になっているときには考えませんが、仕事がひと段落したときなどの「ふとした瞬間」に、「何のために働いているんだろう」と考えることがあります。  そんなとき、「家族のため」や「会社のため」、「社会を良くするため」 …

生き残るために必要なのは「変化」/『これからの世界で働く君たちへ』

 日本の大企業が苦しんでいる。たとえば、東芝。昨年の9月に不正会計問題が表面化し、2248億円の水増しをしていたと発表した東芝だったが、つい先日、他にも7件の水増しをしていたことが判明した。その額なんと58億円。少しでも …

ビジネス書を100冊読んでも99%の人が成功者になれない

 私たちは、なぜ読書をするのでしょうか。  「自己投資になるから」「想像力がつくから」「センスが磨かれるから」「本質を見抜く力が養えるから」「日本語力が上がるから」「教養が身につくから」「面白いから」「現実逃避になるから …

好きなことしかやるな/『38歳までに決めておきたいこと』

 40歳になる前に決めておきたいことがある。それは、残りわずか半分しかない人生。「好きなこと以外はやらないようにしよう」ということだ。  では、「好きなことしかやらない生き方」とは、具体的にどんな生き方なのだろう。単なる …