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 落語にこんな話がある。酒屋の番頭からお酒を借りて商売をしようとした二人の幼馴染がいた。花見シーズンだったので、花見の場所に行きさえすれば必ずお酒が売れると二人は考えていたのである。酒飲みは、酒がなくなるとすぐに飲みたくなるからだ。しかし――。二人の幼馴染も酒飲みだった。だから、兄貴分は、弟分に向かってこんなことを言い出した。

 「売り物の酒だが、手持ちの金で買う分には問題ないだろう」と。

 そこで、兄貴分は弟分にお金を払い、金額相当のお酒を飲んだ。しかし、それをみていた弟分もお酒が飲みたくなったので、兄貴分に向かってこんなことを言った。

 「兄さんからもらったこのお金で、俺にも酒を飲ませてくれ」と。

 こうして彼らは交互にお金を渡しあい、売り物のお酒をすべて飲み干してしまった。彼らの手元に残ったのは、はじめに兄貴分が持っていたお金だけ。あら不思議。お酒の売り上げはいったいどこに消えてしまったのやら…。

 これは、古典落語にある「花見酒」を要約して書いたものであるが、この物語が示すように、ある視点からみると、「お金」というものがとても脆いものであることがわかる。お金のやり取りだけでは「何も生み出さないから」だ。しかし、花見酒は落語の話にとどまるものではない。現実でも、こうしたやりとりが行われている。それが、株やFXだ。

 ご存知のように、株やFXそのものは何かを生み出しているわけではない。お金のやりとりだけで、お金を増やそうとする仕組みである。しかも、そのように増やしたお金で、誰かが生み出したモノを消費している。まさに「花見酒」そのもの。

 しかし、多くの人たちは「花見酒」に憧れを抱いている。「不労所得」という名の「花見酒」を飲みたいと願っている。では、実際に「不労所得」の人たちで世の中が溢れたら、どうなってしまうのだろうか。

 答えは明確。多くの人たちが何も生み出さない世界――すなわち、どれだけお金をもっていても消費するものがない世界、お金の価値がない世界になってしまう。

 私たちは「お金には価値がある」と信じているが、実は「多くの人がそう信じているから、お金には価値がある」のだ。そして、「誰かが何かを生み出し続けているから、お金が価値あるものとして使える」のである。

 とはいえ――、「できれば楽して生きていきたい」と願うのが人間というもの。だから、今後も不労所得を夢見る人が減ることはないだろう。しかし、ギリシャが財政破綻したように、日本のお金も価値がなくなる日がやってくるかもしれない。そのときに頼りになるのは、どれだけお金をもっているかではなく、どれだけの価値が生み出せる自分であるかだ。

 というわけで、花見酒を夢見ることは決して悪いことではないが、それに酔いつぶれると夢から醒めたときに自分には何もないことに気づく羽目になるだろう。だから、お金を稼ぐために仕事をするのではなく、だれかに喜んでもらえるために働こう。どれだけの価値が生み出せているのかを意識しながら働いていこう。そうすれば、多くの人たちが酔いから冷めたときに、あなたには「お金では買えない価値」がついているはずだ。

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