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(※『PK』表紙より)


 伊坂幸太郎さんの小説『PK』。三編の中編から構成されており、「勇気は未来に伝染する」がテーマのSF小説です。読み進めていくうちに勇気が湧いてくること間違いなし!?

 今回は『PK』のあらすじと感想を紹介します。

 『PK』のあらすじと感想

1.『PK』

 ワールドカップ出場を目指して挑んだアジア予選リーグ最終戦。日本は小津選手の不調により苦戦を強いられますが、後半のロスタイムに神がかったドリブルを披露し、PKのチャンスを得ます。そこで小津選手が見せた笑顔が話題に。

 一方、小説家は得体の知れない組織から、大臣は幹事長から圧力を受けていました。彼らは圧力に屈するのか!?

 大きな力の前で人間はいったい何ができるのか!?がテーマの物語。どの道を選らんでも未来に大した影響がないのであれば、「子どもたちに自慢できるほうを選べばいいんだから」というセリフが心に残りました。

2.『超人』

 セキュリティ会社で営業をしている本田毬夫は、将来、人殺しをする人物の住所と名前がわかる能力を手にします。彼はその能力を使って、殺人を事前に防ごうと暗殺を繰り返していました。

 しかし、次に殺すべき相手は、子どもの頃に助けられた命の恩人。彼は命の恩人を殺害するのか!?

 未来予測を信じて行動すべきなのか?がテーマの物語。映画『マイノリティリポート』の伊坂さんバージョンという印象を受けました。未来予測を信じるのが怖くなります。

3.『密使』

 自分の上司から「青木さんの研究施設を見学してきなさい」と命じられた”私”は、その指示に従い、研究施設を訪れます。そこで明かされたのは、未来を危機から救うために”私”に死んで欲しいということでした。

 一方、大学生の三上は、握手をするとその人の時間を夜中の12時から6秒だけ奪える能力があることに気づきます。彼はこの時間を確実に手に入れたいと考え、ヒーローショーに出演する仕事につきました。そして、子どもたちから6秒ずつ奪うことに。しかし、この事実に気づいた人物がある仕事を依頼してきます。一体どうなる!?

 私たちの想像よりも未来は良くなる可能性を秘めていることがわかる物語。あの忌まわしい虫の謎も明かされます。

 最後に

 私たち人間は時々、勇気を試されることがあります。しかし、その時、勇気を振り絞って行動しても、未来には何も影響がないのかもしれません。それなら、子どもたちに自慢できるほうを選べばいい――。

 小説『PK』は、このような勇気が湧いてくるセリフが満載です。気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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