中村文則『掏摸』は圧倒的な理不尽と対峙する主人公に胸が締め付けられる物語

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圧倒的な理不尽と対峙したことはありますか?

私は数年前に理不尽な上司に振り回されたことがありますが、

中村文則さんの小説『掏摸(スリ)』を読んで、改めて理不尽に立ち向かう難しさがわかりました。

金や権力を振りかざす人たちと戦うにはどうすればいいのか考えさせられる物語なんですよね。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • 掏摸で生計を立てる主人公の物語に興味がある人
  • 常に緊張感が味わえる物語が好きな人
  • 圧倒的な理不尽に立ち向かえるのか?がテーマの物語を読んでみたい人
  • 中村文則さんの小説が好きな人
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あらすじ:ある男が掏摸で生計を立てる主人公に目をつける物語

物語の主人公は、掏摸で生計を立てる西村。

彼は、新幹線に乗ろうとしている裕福そうな初老の男性や、電車に乗っているホストたちの財布を盗んで日々を過ごしていました。

西村は服に興味はありませんでしたが、目立ってはいけないので、三越のブランドショップでマネキンが着ているコーディネートをしていました。

マネキンと違っていたのは靴だけでした。逃げることを考えて、スニーカーを履いていたのです。

疑われないように、ある程度裕福な身なりをして、嘘をまとい、嘘として周囲に溶け込んでいました。

そんな西村は、以前は石川という男と組んで掏摸をしていましたが、ある男に目をつけられて、東京から離れざるを得なくなっていました。

しかし、久しぶりに東京に戻ってきた西村に、またしてもその男が近寄ってきて…。

という物語が楽しめる小説です。

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感想①:掏摸が生きがいの主人公

主人公の西村は、お金のためではなく、生きがいとして掏摸をしていました。

盗んだ瞬間におこる指先から肩へ震えが伝い、暖かな温度が少しずつ身体に広がっていく感覚を味わいたいと思っていたからです。

盗んだ記憶がないのに、コートの内側の隠しポケットに財布が入っていることが何度も起こるほど、掏摸が人生のすべてになっていました。

とはいえ、盗んだお金には興味がありませんでした。

彼は1日に40万円近い金を盗むこともできましたが、

ボロアパートに住み、盗んだ金も無造作にアイロン台の上に置いていました。

そのため、お金の使い方も適当でした。

スーパーで万引きをして捕まりそうになった親子を助けた西村は、

親に虐待され、盗みを強要されているその子のために、22万円を渡します。

さらに、虐待をやめるならという条件付きで50万円以上の大金を母親に渡すんですよね。

川村元気さんの小説『億男』では、お金では幸せになれないことがわかる物語が描かれていましたが、

川村元気『億男』はお金を稼いで幸せになる方法を教えてくれる物語
お金があれば幸せになれると思っていませんか? 私はそう考えていた時期もありましたが、 川村元気さんの小説『億男』を読んで、改めてお金があっても幸せになれるとは限らないことがわかりました。 お金がないと幸せにはなれませんが、...

この物語でも、どれだけお金を手に入れても幸せを感じられない主人公の姿が描かれていました。

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感想②:常に緊張感が味わえる

ここまで紹介してきたように、西村は掏摸を生業にしているので、盗みのシーンが多く描かれています。

そのひとつひとつがリアルに描かれているので、読んでいて緊張感が味わえるんですよね。

それだけでなく、あらすじで西村はある男に目をつけられて東京を離れることになったと書きましたが、

その男・木崎の存在が物語により緊迫感を持たせています。

西村が木崎と出会ったのは、一緒に掏摸をしていた石川の事務所に行ったときでした。

石川が木崎から強盗をやれと脅され、西村も一緒にやることを強要されたのです。

西村は断ろうとしますが、以前所属していた空き巣グループの名を出され、さらに誰にも明かしていない本名で呼ばれます。

さらに、断れば死ぬことになると言われるんですよね。

伊坂幸太郎さんの小説『オーデュボンの祈り』でも他人をコントロールする極悪人が出てきましたが、

伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』感想/常識を疑って生きていますか?
常識を疑って生きていますか? 私は常識を疑って生きているつもりですが、 もしあまり物事を深く考えずに過ごしているようなら、新しいアイデアが浮かばなくなったり、考える力を失ってしまうかもしれません。 そんなときは、常識外れな...

この物語でも木崎という圧倒的な悪の存在のおかげで常に緊張感が味わえました。

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感想③:理不尽に立ち向かえるのか?がテーマの物語

この小説では、理不尽に立ち向かえるのか?をテーマに物語が描かれているように思います。

主人公の西村は、幼い頃からご飯を食べるために盗みを働いていました。

そのため、同い年くらいの子供たちが外でラジコンで遊んでいるのを見ると、

自分で手に入れたものではない、与えられたものを誇る彼らを醜い存在だと思っていました。

だからこそ、西村は他人のものを盗むとき少しだけ自由になれた気がしたんですよね。

理不尽に立ち向かえた気がしたからです。

とはいえ、理不尽な出来事は世の中に溢れかえっています。

木崎の存在もそうですが、お金や権力などの力を使って他人を支配しようとする人たちで溢れています。

行成薫さんの小説『名も無き世界のエンドロール』では、理不尽に立ち向かう主人公たちの物語に胸が締め付けられましたが、

行成薫『名も無き世界のエンドロール』は読了後に余韻に浸れる物語
物語が終わった後に余韻に浸っていますか? 私は、最近は小説を読み終えると、すぐに新しい小説に手を出していましたが、 行成薫さんの小説『名も無き世界のエンドロール』を読んで、しばらくその余韻に浸っていました。 言葉では表現し...

この小説でも、圧倒的な理不尽を目の当たりにした西村に胸が締め付けられる物語が描かれていました。

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まとめ

今回は、中村文則さんの小説『掏摸』のあらすじと感想を紹介してきました。

掏摸を生きがいにする主人公の緊張感あふれる物語が楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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