webstation plus

(※『おまけのこ』表紙より)


 畠中恵さんの小説『おまけのこ』。

 しゃばけシリーズ第4弾の本作は、若だんなや幼馴染の栄吉、お雛ちゃんたちが自分の悩みにゆるく向き合う時代小説です。

 読めば彼らの優しさと哀しさに心動かされること間違いなし!?

 今回は『おまけのこ』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『おまけのこ』のあらすじ(『おまけのこ』)

 火事になると全財産が一瞬で消えてしまう…。

 子どもにそんな心配をさせたくない天城屋の主人は、長崎屋に珊瑚玉を注文しました。その大粒の玉を櫛につけて、火事になっても持って逃げられるようにしたかったのです。

 しかし、珊瑚玉を櫛職人の八介に渡したところ、八介は殴られ、珊瑚玉はどこかに消えてしまいました。

 容疑者は小間物屋の直次、髪結いのおてい、三沢屋の手代・磯吉の3人。

 珊瑚玉を欲しがっていた小鬼・鳴家が大活躍する!?

 『おまけのこ』のおすすめポイント

1. 優しさと哀しさに満ち溢れた短編集

 『おまけのこ』は全5章で構成された短編集です。これまでの作品に比べて、登場人物たちの優しさや哀しみが丁寧に描かれているので、心に響くんですよね。

 なかでもおすすめなのが、『こわい』『畳紙』『ありんすこく』。

 それぞれ簡単に紹介します。

『こわい』

 病弱な一太郎が幼馴染の栄吉と喧嘩!?

 栄吉の作った菓子があまりにも不味く、吐き出してしまったのが原因でした。

 若だんなは、栄吉と仲直りをしたいと思いますが、これまで喧嘩をしたことがないので、その方法がわかりません。

 そこに現れたのが、孤者異(こわい)と呼ばれる妖。彼は職人の腕が上がる薬を持っていると言います。

 若だんなはその薬を手に入れて栄吉と仲直りしようとしますが…。

 栄吉の決断と孤者異の哀しみに心揺さぶられる物語です。

『畳紙』

 前作『ねこのばば』に登場したお雛ちゃんが再登場。

 彼女は、心優しく賢い女性でしたが、誰もが驚くほどの厚化粧をしていました。早くに両親を亡くし、厳しい祖父母に育てられた彼女は、化粧を濃くすることで祖父母から自分を守っていたのです。

 しかし、婚約者もいるのに、このまま化粧をしていいのか気になるようになりました。そこで若だんなに相談しようとしたところ…。

 屏風のぞきが大活躍する物語です。

『ありんすこく』

 若だんなが吉原の禿を足抜けさせる!?

 父親の藤兵衛と吉原に行った若だんなは、そこで出会ったかえでという禿を足抜けさせると約束しました。彼女は心臓が弱く長く生きられなかったからです。

 しかし、足抜け当日。かえでは言い寄られていた三之助に連れさられてしまいます。三之助に足抜けをバラした犯人は…。

 最後の若だんなの言葉に共感できる物語です。

2. 悩みにどう立ち向かうか考えさせられる

 『おまけのこ』に登場する人たちの多くは悩みを抱えていました。

 孤者異は、誰も自分のことを大切にしてくれないと悩み、栄吉は菓子職人なのに美味しい菓子が作れないと悩んでいました。

 若だんなは、病弱で自由に外出できないことを、お雛ちゃんは厚化粧をやめられないことを、かえでは心臓が弱く育ててもらった恩が返せないことを悩んでいました。

 このように多くの登場人物が悩みを抱えていましたが、その対応はそれぞれ違っていました。

 孤者異は悩みを人のせいにしますが、若だんなや栄吉、お雛ちゃんは自分の悩みとゆるく向き合っていきます。

 その向き合い方ひとつで、物語の結末が大きく変わっていくんですよね。

 自分は悩みにどう向き合っているのか見直したくなる物語です。

3. 最後は温かい気持ちになれる

 『おまけのこ』は、哀しい終わり方をする物語ばかりですが、若だんなの優しさで温かい気持ちになれます。

 病弱でも心優しい若だんなに癒される物語です。

 最後に

 畠中恵さんの小説『おまけのこ』。読めば彼らの優しさと哀しさに心動かされること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

こだわりを持って生きている?小川洋子『人質の朗読会』は不思議なのに心に残る小説

(※『人質の朗読会』表紙より)  小川洋子さんの小説『人質の朗読会』。  地球の裏側にある村で反政府ゲリラの人質になった8名は、暇つぶしに朗読を始めますが、いつの間にか自分の過去と向き合い、真剣に朗読しあうようになりまし …

『子育てはもう卒業します』は自分らしく生きようと思える小説

(※『子育てはもう卒業します』表紙より)  垣谷美雨さんの小説『子育てはもう卒業します』。  3人の女性の青春時代から中年になるまでの人生を描いた小説です。読めば「子ども優先で生きるのはやめ、自分らしく生きよう」と思うこ …

男性の欲望が丸裸に!?東野圭吾『恋のゴンドラ』はミステリー要素が強い恋愛小説

(※『恋のゴンドラ』表紙より)  男性の欲望とは何でしょうか。  もちろん、複数の女性と関係を持つことです。江戸城に大奥があったのも、一夫多妻制を認めている国があるのも、星の数ほど風俗店があるのも、多くの男性が複数の女性 …

人と対等に付き合ってる?伊坂幸太郎『チルドレン』は口達者な家裁調査官が奇跡を起こす物語

(※『チルドレン』表紙より)  人と対等に付き合っていますか?  私は対等に付き合っていると思っていましたが、伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』を読んで反省しました。障害のある人たちを「可愛そう」という視点で見ていること …

誰もが宗教に関わっている!?今村夏子『星の子』は新興宗教にハマった家族を描いた小説

(※『星の子』表紙より)  宗教は自分には関係のないものだと思っていませんか。  私は思っていました。洗脳された人が、怪しいものを買ったり、変な行動を取ったりするものだと思っていました。  しかし、今村夏子さんの小説『星 …

愛情が足りない!?西加奈子『i(アイ)』は人の気持ちに寄り添いたくなる小説

(※『i(アイ)』表紙より)  人の気持ちに寄り添っていますか。  私は歳をとるにつれて、自分のことばかり考えるようになりました。東日本大震災の報道を見ても、どこか他人事です。  そんな私に人の気持ちに寄り添う大切さを思 …

好きなことを仕事にするのは本当に幸せなのか?東野圭吾『眠りの森』感想

(※『眠りの森』表紙より)  人生を捧げてもいいと思えるほどの「好きなこと」がありますか。  収入が減っても、プライベートな時間がなくなっても、結婚や恋愛が出来なくても、やりたいと思えること。  そんな何かを持っている人 …

心揺さぶられる物語!?浅田次郎『おもかげ』は定年退職を迎えたサラリーマンが人生を振り返る小説

(※『おもかげ』表紙より)  浅田次郎さんの小説『おもかげ』。  定年を迎えたサラリーマン・竹脇正一が、送別会の帰りに倒れ、病院内で不思議な体験を繰り返す物語です。  読めば、彼の生き様や家族の温かさに心揺さぶられること …

悩むことに価値がある!?東野圭吾『真夏の方程式』は感動間違いなしの小説

(※『真夏の方程式』表紙より)  東野圭吾さんの小説『真夏の方程式』。  仕事で玻璃ヶ浦(はりがうら)にやってきた湯川准教授が小学五年生の恭平と出会い、思わぬ事件に巻き込まれる物語です。読めば感動すること間違いなし!? …

仕事に人生をかけてる?塩田武士『騙し絵の牙』は大泉洋をあてがきした小説

(※『騙し絵の牙』表紙より)  仕事に人生をかけてますか?  私はかけていません。仕事の悩みは星の数ほどありますが、どれも「叱られたくない!」というネガティブな感情からスタートしています。  「成し遂げたいことがある」な …