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 子どもの頃、夏休みになるとテレビでホラー特集を見ていました。そんな懐かしい記憶を思い出させてくれた小説が芦沢央さんの『火のないところに煙は』。

 ラストは呆気ない終わり方でしたが、短編ホラー小説としては楽しめました。

 『世にも奇妙な物語』を意識して作られた作品?

 物語は、作家である「私」が友人の友人である角田尚子さんの相談に乗るところから始まります。

 彼女には結婚を約束していた男性がいましたが、ある占い師のおばさんに占ってもらったところ「結婚なんてしない方がいい」と言われます。

 このことに腹を立てた彼氏は、お金も払わず出て行き、その後、その占い師の悪口ばかり言うようになったので、尚子さんはどんどん冷めていきました。

 そこで「別れようか」と切り出したところ、「別れるなら死んでやる」と脅されるようになるんですよね。

 そんな彼氏にますます嫌気がさした尚子さんでしたが、死なれたら困るので、仕方なく付き合っていました。

 しかし、ある日。我慢の限界が来たので携帯電話の電源を切って無視したところ、彼氏はクルマで電柱にぶつかって死にます。

 警察は彼の死を自殺と判断しますが、実は…。

 と言うように、『世にも奇妙な物語』を観ているかのように展開していくんですよね。あの番組が好きな人は楽しめる物語です。

 ミステリーのようなホラー小説

 先ほどの物語もそうですが、ホラーだけでなくミステリー要素も楽しめます。

 なぜ彼氏はクルマで自殺をしたように見えたのか。その謎が解き明かされたとき、ミステリー小説のような快感が味わえるんですよね。

 さらに、その後を追いかけるかのようにホラー要素がやって来るので、ミステリーとしてもホラーとしても楽しめます。

 しかも…。

 ラストは全ての短編が繋がるけれど

 ラストは5つの短編が全て繋がるのでスッキリできます。ただし、伊坂幸太郎さんの小説を読み過ぎたせいか、少し物足りない感じがしました。

 もう一捻り欲しいと言うか、驚きが欲しくなる終わり方です。

 とはいえ、一つひとつの短編は面白いので、『世にも奇妙な物語』が好きな方にはオススメの小説です。

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